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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
放浪前記
49/265

48話 意気投合

少し良い雰囲気。

そして、異能と加護も少し分かり辛いと思ったので補足です。基本的に、災禍様と呼ばれる妖怪から加護を受けたら、同等の妖怪以下の妖術を無効化又は耐性があります。

異能は願望を具現化していますが、願望の中には、見た事ない組み合わせなどあります。検索しても出てこない組み合わせ、《嵐核》や《爆帖》などと言った組み合わせを多数出したりします。

ちなみに、《王》・《幽霊》と文字数が違うのはありますが、基本的に1文字か2文字です。しかし、これを超えた者が今後現れたりするので、6章以降で明かします。

数日は同じくだりのように過ごした。

正直、なんか味気ない感じがして退屈してきた。

悟美と九華が意外と仲良くなる展開なんか信じられるかって話だぜ。


お陰で、俺と分華が意気投合しちまった。

「おい幸助、アイツら凄え買い物してるよな」

「そんな事言うなよな。あんたの方が凄かったぜ?菓子買うし飯買ってくるし、妖都を支配しようとした時に楽しまなかったのか?」

「いや…てかアイツ、凄えクズだった。俺をこき使ってくるわ、命令を聞かなかったら魂を握り潰されるわ、術を真似するわ。俺があんなヤツを仲間とは一度たりとも思わなかった」

交流とは素晴らしい企画だな。俺が分華とこんな簡単に親密になっちまうほどに。

來嘛羅が言ってくれなきゃ、俺はこんな事しようとは思わなかっただろうし。來嘛羅の配慮に感謝するしかねえ。

「秋水の野郎はあんたらに何をご褒美にしようとしてたんだ?」

「くだらねえよそんなもん。アイツは俺達に土地をくれるって言ってたが、俺はそんなデケエもん貰っても欲しくねえんだわ」

「土地って……妖界舐めてるだろ絶対」

「だろ?俺が秋水の立場だったら町の食いもんをタダにして貰った方が嬉しいな」

やっぱこいつ馬鹿だ。でも嫌いじゃないな。

「あはは!それはそれで怖えよ。俺が妖都に来た時にその話聞いていれば斬りつけることもなかったかもな?」

「そりゃあどうかな?テメェは俺の分身を斬りやがって!意外とトラウマもんだったぞ⁉︎」

「あー悪い。あの時はあーすればどいてくれるかと思ったからな。つい、な」

「巫山戯んな!足斬られた経験なんか初めてだったんだよ!秋水のクズでもあんな外道はかまさなかった!」

それは心外だな。俺にとってはそんな言われる筋合いはない。

「外道じゃねえよ。そもそも、妖怪を支配しようとする組織の人間に言われたくもないぜ」

「っ!この野郎!」

「俺に怒っても仕方がねえだろ。恨むなら、秋水の野郎を恨みやがれよな?」

俺は正論を言ってやった。

普通そうだろ?俺はぶっ飛ばそうとした正統派で、分華は俺を拉致しようとした悪党派。別に終わったことだけど、俺が間違ってるわけがない。


「二人とも、そんな過去話で盛り上がらなくて良いから!」

九華は焦りながら話を止めようとする。

「なんだよ九華⁉︎ちょっとぐらい喧嘩売っても文句ないだろ!」

「それを馬鹿って言うの!いい加減、嫌な話題を堂々と話さないでよ!周りの人に聞こえてるのよ⁉︎」

分華は周りを気にしていなかったみたいだが、妖都の支配の話をした辺りから、周りの妖怪の空気に重圧を感じていた。


俺は知っていたが、間違ってはない気がして、わざと話を逸さなかった。


まあ、俺も同罪な気がするから言い逃れはできねえけどな。


妖怪の視線がキツい。でも、一向に襲ってくる気配はないし、俺が見渡すと誰もが俺から目を逸らす。

「そっか…こいつら、俺の加護を見てビビってるんだな」

「えっ?加護ってそう言うものなの⁉︎」

九華が拍子抜けた声で俺を見る。

「あんたが驚いてどうするんだ。多分だが、俺は雪姫と來嘛羅からの加護があるから恐れてるんだよ」

妖怪から授かる秘術の加護は、加護を与える妖怪と与えられた人間に深い念がないと成立しない。太古の妖怪となると話は別だが、基本的に普通の妖怪が成せる秘術ではない。

その代わり、人間と妖怪の間で一度成立すれば確固たるものになる。


善なる心で加護を与えれば人間を保護し、妖怪の庇護を受けた人間は妖術に耐性が付き、肉体及び精神面の潜在能力を開花させる。稀にだが、加護がもたらす恩恵は他にもあるだとか。


悪なる心で加護を与える。これは殺意や敵意、恨みなどの負の感情による加護の事をいう。とてもではないが、強制しない限り自ずと加護を与える妖怪はいない。

ただ、この加護がかなり厄介なもので、異能自体に脅威的な力を与えてしまう効力がある。俺が秋水に勝ったのは実は奇跡だったらしく、《王》という異能を秋水が使い熟せていなかったことが原因だと來嘛羅が俺に言った。


異能を使い熟すのなら100年は普通に要するみたいで、秋水の野郎の異能はかなり特殊で複雑だったらしい。人を支配するにも条件があって、触れれば勝ちというわけではなかったという。

加護を受けた人間には効かない異能で、俺が秋水に支配されなかったのも來嘛羅と雪姫の加護のお陰みたい。

まあ、人間界あっちでは『雪女ユキオンナ』と『九尾狐キュウビキツネ』は現代でも日本じゃ有名過ぎるからな。伝承があまりにも強過ぎたからなんだろう。

俺は運で救われたっていう事だ。釈然としないが、妖怪との恋仲を実現できるのなら俺は受け入れられる。

それでも、閻魔大王の加護や他の妖怪の加護を受けた秋水は化け物だったらしく、俺が一人で挑んだ事は自殺行為だと指摘された。


俺の異能、というか能力は《名》って……あんまりピンとこねえ能力名なまえだな。

呼び方を変えたい。ま、今じゃなくても問題ねえよな。




話題も盛り上がり、全員が何かと自分を曝け出すようになった。

特に、悟美は自分を誇示したいのか、妙なテンションだった。

「あー早く遊びたいな〜!」

「テメェはもう遊んでるだろーが!」

「だって〜この都市まちに強い人がいないもん!この前襲ってくれる人が居たのに、誰かさんが始末しちゃったせいで飽きてきたわ!」

「たくよー。テメェーだよ幸助!軍服女とテメェーの妖怪の仕業で、敵が来ねえじゃねえかよ‼︎」

退屈な悟美と苛々する分華。

この二人は退屈を嫌う点では似てるな。性格は折り合わないが。

「文句言わないでくれよな?雪姫は何も関わってねえし、誰も襲って来ねえじゃねえかよ。別に襲われるのが好きならあんただけ襲われれば良いだろ?」

「あぁ⁉︎テメェーふざけてんのか⁉︎俺だけじゃ死ぬだろうが!」

勝手だろそんなもん。と俺は言える立場だが、取り敢えず分華に聞いてみる。

「妖怪に勝てないのかよ?てか、秋水の時は強かったのに、今は弱えよな?」

『サーラメーヤ』の加護を受けていた双子の縛りは來嘛羅によって破棄され、新たに來嘛羅の庇護下へ入った。

だが、俺と双子での加護には大きな違いがあった。

俺に対しては紛れもない寵愛によってその身は加護され、太古の妖怪と呼ばれる妖怪を除いた者からの妖術を跳ね除ける。そして、俺の身体能力と知覚は大幅に向上している。


しかし、双子は妖怪からの妖術は跳ね除けるものの、肉体能力は大幅に下がったそうだ。

加護は自由自在に、來嘛羅なら容易く弄れると言う。

その為、今のこいつらは俺よりも圧倒的に弱くなってるわけだ。




だから、物理的に殺されることなどなれば……。

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