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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
放浪前記
46/265

45話 言うこと聞かない子には痛みがいい

遂に復活しました‼︎

pixivの投稿も一度完了し、こちらの方で毎日投稿していきます‼︎

暫くは平和な展開ですのでご安心を。とは言いましても、久しぶりに投稿している内容がぶっ飛んでいるかと思います。

一応、三章まで続けて投稿しようかと考えております。

4日間は雪姫と來嘛羅に特訓を受けさせて貰った。

特に進展があるわけではないが、俺にとっては充実したものだった。

あと2ヶ月もないんだ。出来るだけ、來嘛羅とのいれる時間を確保したい。




次の日、來嘛羅は俺にある話を持ち込んできた。

「幸助殿。お主に良い交流話がある。決して悪いものじゃないから安心せよ」

上機嫌な様子だな。何か面白そうな話だな。

しかし、來嘛羅の信じられない言葉を耳にする。

明日あすより20日程、お主には今回の放浪旅に参加する新城悟美と十六夜紗夜と親交を深める機会を与える」

「……はい?」

突然の呼び出しで期待したのが地に堕ちた気分になった。

「共に戦った者との親睦は必要じゃ。お主とあの者との仲が険悪では旅も務まらぬ。それでは心が気休めぬ。特訓だけでは体が悲鳴を上げるぞ?暫しは妖都を探索し、娯楽に打ち込むのもどうじゃ?妾が既に手配をしたから心ゆくまであの者と戯れるがよい」

「いやいやいや!なんであいつらと親睦深めんだ⁉︎ってか、俺は一刻も早く強くなりてえんだよ!別に交流なら戦闘訓練とかでも出来るだろ」

俺は別に大丈夫な気がする。

來嘛羅と出会った時だって1日で打ち解けたし、雪姫の時だってすんなりといけた。

それに俺には休めない理由がある。

來嘛羅との時間を大事にしたい。妖都を離れるまではなるべく時間を過ごしたい。

下心はないし、來嘛羅との特訓で力を付けたい。“三妖魔”の恐ろしさを知ったからこそ、俺は命を張れるようにメンタルや妖術の精度を鍛えときたい。

だが、來嘛羅は俺の気持ちとは違う言い分だった。

「お主は人との交流があまりに避け過ぎておる。妾や雪姫だけでは知見もなくなってしまっておる。秋水や名妓の醜さがお主の嫌な感情として根付いておるじゃろ?」

「アレはちょっと…な。凶悪な奴らだったな」

俺は妖都を征服しようとした奴らを心の底から許せる気がしない。妖怪を蔑ろにした奴らに怒りを感じたしな。

「彼奴らは無事に地獄へ堕ちたのじゃ。それに妖都も既に再建し終わっておる」

この世界の都市や町の再建速度は異常な程の速さで行われる。來嘛羅が手を加えれば1日もかからない。

俺がその現場を見た時は神の所業を見ている錯覚(感じ)だった。

「でもな、分華と九華が烏天狗の元で修行してるんだろ?俺もそれで良かったんだけど…」

「駄目じゃ。お主のことじゃ、妾と共に時間を過ごしたいと申すのじゃろ?」

はっきり言われた。かと思えば、俺の両手を來嘛羅に掴まれ、慈愛のように微笑んだ。

「放浪の旅が終われば全ては終わる。お主が人間との交流をしてくれると妾も安心するのじゃ。お主が旅の前に消耗しておる姿を妾は見とうない。妾の願いとして聞き入れてくれぬか?」

やっぱ來嘛羅は俺を見てくれているんだ。

俺の肩の荷が下りたのを感じる。

「分かったぜ。來嘛羅がそれで安心するんだったら悟美達と付き合ってくる。その後は特訓に付き合ってくれよな?」

「フッフッフ、それを聞けて妾も安心じゃ。交流は明朝からじゃ。今日は休息し、明日に備えておくのじゃな」

來嘛羅はそう言い残し、いつの間にか俺は結界の外に飛ばされていた。




「今日はあれで終わりか……もうちょい居たかったな〜」

名残惜しい気持ちを残したまま、俺は仕方がなく雪姫がいる宿屋へ戻った。







一方、悟美と紗夜も烏天狗達から交流について告げられる。

「ええっ⁉︎嘘…!なんであんな男の人とですか⁉︎」

紗夜は猛反発していた。

「すまんが、二人はあの小僧と20日間は一緒に過ごしてというめいを來嘛羅様から託されたんだ。嫌だとは思うが辛抱してくれ」

太古の妖怪の命令といっても渋ってしまう。

愛情を込めて育てた二人を男に差し出す真似など出来ないのだ。

そう、悟美と紗夜は異性の人間との接点があまりにもなかったのだ。

戦闘時や探索以外は結界の外に出ることがなく、結界内で100年以上も過ごしている。世間知らずではなくとも、他人慣れをしていない。

悟美は時偶に脱走し、服屋や気分転換に村落まで一人走りで向かうことがある。

その都度、紗夜によって無理やり戻される羽目になっている。

紗夜は外を嫌い、心許した者以外を嫌う。悟美より年下であり、何かと悟美にだけは心許している。

それを危惧した來嘛羅と女天狗は、交流を深めるという理由で、20日間という時間を設け、今回の発案に至る。

「む、無理です!わ、わわ私、あの人嫌いです‼︎」

「うっ、確かに」

両者の食い違いがあっても幸助をよく思わない二人。

紗夜は幸助を嫌と首を振る。

悟美は違う。

「ねえ紗夜?私は大丈夫だと思うわ」

「悟美ちゃん…?」

「あの人は紗夜には怖い人なのかも知れない。けどね、悪い人じゃないわ。不束者の私でも邪悪な存在じゃないって言える。勘かしらね?」

悟美は余裕ある態度で紗夜の疑心を解く。

二人は本物の姉妹ではないが、人間界ではまずあり得ない時間を妖界で共にしている。

信頼力は本物の姉妹には劣らない。悟美は紗夜の不安に気付き、それを取り除いてあげる。

「でも…幸助っていう人は私…」

悟美も紗夜が嫌がる理由を知っている。

「苦手でしょ?でも大丈夫だわ。貴女は“アレ”がない人が最も天敵なんでしょ?幸助君はそれに該当する人で、紗夜とは相反する人。怖がるは怖がるわね」

「あんな人見たことないです。わ…私は嫌、とにかく嫌です!あの人見た瞬間分かっちゃったの……。なんで持ってないのですか⁉︎」

震える声に似合わず声が大きく、近くで寄り添う悟美もニヤつきながら耳を押さえている。

「も〜大き過ぎるわ紗夜。そんな大きい声だと楽しくなっちゃう。シシシッ、良いわ。20日間は私の影に隠れちゃえば?そうすれば、貴女は怖がらずに済むでしょ?」

「悟美ちゃん‼︎ありがとう!」

目を輝かして喜ぶ紗夜。しかし、そこに女天狗がつっこむ。

「紗夜ちゃん、それは流石に駄目よ。ワタクシが來嘛羅様に懇願してお願いした行事なんだから。文句言わずに親睦深めて頂戴!」

紗夜の内心は奈落へ落とされる。

「うわあああーん‼︎女天狗がイタズラしてくるよ〜‼︎」

「あーあ〜また不安定だわ。しょうがないかしら〜?よしよし…」

泣きつく紗夜を悟美が頭を撫でてあやす。

「悟美ちゃんがまたあやしちゃって…。あまり甘やかすと紗夜ちゃんが離れなくなっちゃうから気を付けなさい」

「またこの下りを見せられるか。紗夜は成長しないものなのか…」

女天狗が甘い注意をする横で烏天狗は溜息を吐く。

「悟美ちゃんがやっぱり落ち着きます!もっと撫でて下さい‼︎」

紗夜は一度甘え出すと止まらなくなる。

情緒不安定で臆病な性格であるが、悟美はそんな彼女を心地良く受け入れている。

悟美の為ならば、如何なる危険地にも共に向かうほど、その行動力は大胆となる。




悟美は紗夜と違って積極性があり、残虐性や狂気を好む。それ故、人間や妖怪の討伐を言い渡されても素直に応じ、全てを遊びと認識している。

とても二人の相性が良いとは言えない。

しかし、それは長年過ごした月日以外にもある関係があった。




10分撫で続け、悟美は飽きてきた。

「ねえ女天狗?今回の親睦だけど、私だけで良いかしら?」

「それは駄目よ悟美ちゃん。來嘛羅様が最終的に取り決めた事なの。簡単に断れるものじゃありません」

「分かったわ。私が紗夜を納得させてみるわ」

尚、悟美は優先順位という概念は持ち合わせていない。

來嘛羅との『契り』を結んだ身として果たすのではなく、自己快楽の為に紗夜を説得させる。

「ねえ紗夜?私の我儘良いかしら〜?」

「ん…なに?」

「幸助君と交流しましょ?」

「……嫌です」

やはり同じ反応をする紗夜。悟美は少し悪戯をしようと思った。

「どうしても駄目?」

「無理です……」

「そう……」

何を思ったのか、悟美は笑顔で紗夜を強く抱きしめる。それに反応して、紗夜は嬉しそうに顔を緩める。

悟美が不敵に笑う。

「シシシッ!痛いわよ」

「ふえっ?」

柔軟に体を捻りながら抱きついたまま飛び蹴り、背後に反り投げる。それも、自分の体ごと。

一切の警戒をしていなかった紗夜からすれば、これほど怖い事はないだろう。

机に向かって二人とも頭を思いっきり強打し、机が大破する。

「悟美ちゃん⁉︎」

声を掛けたのが遅かった。痛みで紗夜は動けず、悟美はそんな紗夜を面白がりながら満面な笑みで笑う。

「シシシシッ‼︎やっぱりこれじゃないと言うこと聞かないわよね〜?えへへ、私だって鬱憤溜まるのよ?折角結界から20日間も出れるんだし、楽しまなきゃ。紗夜には悪いけど、今回は付いて来て。来なかったら、どうしちゃおうかしら〜?」

「う…痛いよ」

「痛いでしょ〜?分華っていう人があまりにも弱かったから退屈してたのよ。だから少し晴らせたわ」

紗夜からすれば良い傍迷惑。痛みで今だに動けず、涙を浮かべる。

「私だって紗夜にだけは手荒な真似はしないわ。だけど、言うこと聞かない人はこうしちゃうわよ〜?」

大破した机の脚を持ち、簡単にへし折る。

それを見た紗夜はビクッと体を震わす。

「あは!紗夜が怯えるの可愛いわ〜!さあ言うこと聞きなさい。さもないと、こうやって骨へし折っちゃうかも!シシシッ、は〜や〜くぅ〜!返事しないとやっちゃうわよ?」

悟美に“手加減”という言葉は存在せず、気ままに思ったことを行動に移す。

この性格に至った経緯、烏天狗達の気性の粗さが原因にあり、元々あった狂気じみた性格に上乗せされた結果である。

烏天狗と女天狗が気性の粗さを見せないのは、悟美が拾われた頃から自分達の感情のままを見せてしまったのが成長に大きく影響を与え、悟美もそれに伴い我儘になっていった。

少年期に見られる反抗期というのとは異なり、従順であるが、自分の気に入らないものや気に入ったものにその性格は大きく表す。

感情が常に興奮状態となり、気が済むまで狂気に笑う。加減などなく、自由気ままに快楽の為に殺戮をするのを厭わない。

《狂乱》も伴い感情は限界を超え、制御不能の狂戦士と化す。

一度狂い出すと歯止めが効かない。烏天狗達はそれを知り、今の温和な性格を取り持っている。刺激をしないように、悟美の前では均衡を保つ。




だからこそ、今楽しげにする悟美を迂闊に刺激することができない。止めようにも止められないでいる。

「紗夜はまだ一度も折ったことないよね〜。そしたら最初に指折ってみる?意外と癖になったりして。それとも、肩からいってみる?分華も凄い叫んでたから楽しいかも!シシシッ、紗夜が行くっていったらやらないわ」

紗夜の答えは当然……。

「い、行きます…うぅ」

泣きながら答えた。

紗夜も痛みには勝てない。

「シシシッ、これで説得できたわ!明日、幸助君と遊べるんだよね?そしたら三節棍が必要かしら〜」

何故武器を?と全員が疑問に思う。

「おい悟美、武器は必要ないと思うが?」

「だって必要でしょ?分華と九華っていう双子も連れて行くんだし」

「なぁっ⁉︎」

悟美の我儘に振り回される烏天狗達は哀れだった。

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