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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
妖都征圧阻止編
25/265

24話 想いと共に

テンポ早いですかね?

予定よりも描き込みすぎて、17万字超えそうで怖いですね。

今日はすいません。体力的に限界なので、投稿はまた明日します。

明日は特別5話まで一気に投稿します!

二部の制作とpixivの進行を両方しないといけないですし、就職活動もそろそろ間近なので、かなり焦っています。

 俺は今起きた出来事を把握出来なかった。

 何が起きた?確かに仕留めたはずだ。

 なのに…なのにだ!

 雪姫が悟美にやられた。意識がない。

「アッハッハッハ‼︎残念だわ〜!楽しくなっちゃったからつい本気でやっちゃった!シシシッ!ねえ?もっと遊んでよ!意識飛んでも最後まで遊んであげるから!」

 壊れたように笑ったかと思えば、今度は四獣の構えを始めた。

 俺は今までの妖怪と人間とは比べ物にならないぐらいの気持ちが全身から伝わる。

 ヤバい……こいつには勝てねえ。

 悟美が何やら禍々しい妖気を放出し始めて、不気味な笑いが異質さを増す。

「シシシシッ!私の異能は《狂乱》だわ。私自身の理性を失う代わりに更に強くなるの。ねえ、確か幸助って名前だったんでしょ?意識が飛ぶ前に異能教えて」

 意外だった。てっきり、俺の能力なんかバレてんのかと思ってたから少し拍子抜けした。

「俺の能力は《名》だ!妖怪に名を与え、妖怪の力を増幅?ってものが出来る能力だ」

「あは!面白い異能だわ。つまり、今までは何も力なしで戦っていたのかしら?だとしたらごめんね、貴方…死んじゃうわ!」

 そう言いきった悟美の意識は狂気の中へと消えた。

 狂戦士と化した。挑むのは理性の吹き飛んだ猛獣だ。

「アッハハハハハハハ‼︎」

 最悪だ。狂喜の笑いを見るのは初めてだ。笑ってやがるのにこっちを見やがる…。

「おいおいマジかよ⁉︎なんで遊びが本気に変わるんだよ‼︎」

 俺は文句しか言えない。そうじゃないと、目の前のこいつに殺される感じだからな。虚勢でも張ってねえとやってられない。

 俺は刀剣に力を込める。

 それが合図だったみたいだ。俺はまばたきした途端、肋骨が砕けた。

「ゴフッ⁉︎」

 俺は吹き飛ばされ、背骨も折れた。前3本と後ろ2本ってところか…。

 痛過ぎる……。呼吸が出来てるので生きていると実感した。

「クソォ…こんな美人がなんで狂ってんだよ⁉︎意味が分からねえ……」

 一瞬で瀕死に追い込まれた俺は罵声を吐いた。

 悟美は俺を見るなり笑い出した。

 先程まで楽しげだった悟美の笑みは存在しない。

 「アハハハハ‼︎」と延々と笑い続け、四獣の構えで三節棍を担ぐその姿の前に平然としていられるわけがねえ。

 雪姫がやられるなんて思わなかった。

 來嘛羅がなんか居ないのは理由があるんだろうか。

 助けないと死ぬ。動いたら死ぬ。どちらも俺に最悪な状況しか生まない……。

 ありえない痛みを噛み殺し、俺は立ち上がる。

「クソ痛えぜ悟美の野郎がっ‼︎俺を殺したいんだろ?だったら来いよ!」

 好きな妖怪に俺の勇姿を見せたかったな。

 あまりの無謀さに内心、空笑いしていた。

 こんな無様じゃなくて……。

「惚れいさましい姿を見してやる‼︎」

 覚悟を決めた瞬間だった。

 強い衝撃が全身を支配する。俺が俺の体を使い熟す以上に使い熟せる。

 今までが俺の体じゃなかったぐらい、その湧き出る支配力で体を動かせた。

 刀剣に俺の力を込める。

「吹き飛べ!『狐笠きつねかさ』‼︎」

 んんっ⁉︎なんだこの威力……。

 化け物かよ。

 風が巻き起こったかと思えば、悟美が彼方上空まで巻き上げられた。

 俺はそれを見るなり上空へと足を動かす。

 俺、飛べたんだな。と、暢気なことを考えつつも、上空で今だに笑い続けている悟美に狙いを定める。

 急所技じゃなかった攻撃じゃあ傷すら付かねえか。ヤバい奴だな。

 悟美は空中で体勢を戻し、反撃と言わんばかりの勢いで空中を蹴る。

「きやがれ!」

 俺はそれに合わせて攻撃を放てばいい…。

 鎮静化させる術をこの刀剣に伝われ!

 俺が殺すのは妖怪を侮辱する奴らだけだ‼︎

「『白炎雪狐びゃくえんゆっこ』‼︎」

 突っ込んできた悟美に対し、俺は妖術を放った。

 白炎を纏う白い狐の顔が刀剣より現れ、悟美の三節棍に触れた瞬間、悟美自身を丸飲みするかのように食らった。

 力を込めようとした途端、肋に激痛が走る。

「ぐっ…チクショォ……」

断念するように、俺は気を失った。



 両者は強い衝突の後、真っ逆さまに落下。

 幸助はあまりの激痛で既に意識はなく、無防備に高速落下をしている。

 だが、地面直前の幸助は空中で抱きしめられた。

「幸助……ごめんね」

 先程まで意識がなかった雪姫が涙を浮かべ、幸助の無事に想いが込み上げる。

 悟美は地面衝突の直前で意識を取り戻し、体を柔軟に使って衝撃を抑えた。

「あ〜またやっちゃったのかしら〜?烏天狗に澄神水を掛けられてまた正気に戻っちゃった。もう少しで異能使い熟せたのに」

 冷静さを取り戻した悟美は不満げに言う。

 そこへ、來嘛羅と烏天狗達が現れる。

 悟美の様子を見た烏天狗と女天狗は、驚愕と嬉しさに満ちた表情を露わにする。

「まさか…悟美が趙神水ちょうしんすいなしで克服出来ようとは…‼︎」

「嘘‼︎悟美ちゃんが遂に理性を自力で抑え込めるだなんて!ワタクシ達の苦労が、報われました!」

 澄神水ちょうしんすい。感情を一時的に鎮静化させ正常に戻す水で、異能の力で取り込まれた悟美ですら鎮静化させられる超薬でもある。

 しかし、烏天狗達は勘違いし、悟美を評価していた。

「烏天狗と女天狗よ、勘違いするでない。悟美とやらはまだ制御しきれておらぬ。抑え込んだのは幸助殿じゃ」

 來嘛羅は豊艶な笑みでそう断定する。

 実は幸助が放った技が、偶然にも澄神水ちょうしんすいと全く同じ効果を付与した攻撃だったのだ。

 悟美はその事実に一番早く気付いた。

「この男の子が私を……」

 悟美から漂う感情は穏やかだ。

 雪姫に近付き頭を下げる。

「雪女とそこの幸助君に礼が言いたいの。私の暴走止めてくれてありがとう」

 快楽任せの狂戦士と化した悟美からの意外な言葉に、雪姫は逆に警戒してしまう。

「それはどうも。で?私達を散々傷付けて楽しい?」

「楽しいって言われちゃうと楽しいかな〜?別に殺すなって言われてないし、シシシッ!」

 雪姫は烏天狗達にギロッと冷たい眼差しを向ける。

「なんだ?俺は不審者を排除してとしか言ってないが?」

 他人事のように悟美に擦りつける。

 そんな身勝手な言いように、雪姫は怒りを静かに声にする。

「そっか……。私よりも生きているのに擦りつけするのね?人間を騙すのは、天邪鬼だけでいいのに…」

「っ‼︎何故切れる⁉︎」

 雪姫の周りがパキパキと地面が凍り、圧せられた烏天狗達は驚く。

「これ雪姫」

 來嘛羅が雪姫の肩を触る。

「なに?私の邪魔をするの?」

「そうでない。人間を侮辱されると腹立つ其方じゃ、烏天狗の口文句に簡単に持ってかれるでない」

 そう宥めると雪姫の様子は落ち着く。

 同時に、烏天狗は來嘛羅の言葉に耳を疑う。

「九尾狐様、今、雪女の名前を言い間違えているが?」

「うむ、此奴は幸助殿から名を貰ったのじゃよ。ちなみに妾も來嘛羅という名を頂戴したんじゃがな!」

 烏天狗達はまた顔を見合わせる。紗夜はキョトンとして意味を理解していない。

 悟美もいまいち理解していない様子。

「それは……事実なのか?九尾狐様…否、來嘛羅様」

「うむ、言ってることは事実じゃ」

 來嘛羅はこれまでの経緯を話した。

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