1話 少女の秘密
第1話投稿です。
コメントやメッセージは受け付けていますので、何か疑問や質問があるようでしたら気軽にお願いします!
小説書き始めて1年経過しましたが、やはり難しいですね。今後も続けていきますが、かなり大変な作業になりそうです。
なになに?なんだよこいつ!俺の生きている時間まで言い当てるのかよ⁉︎秒まで答えるとは、かなりヤバい観察力だ。
いや、この場合はストーカーと言った方がいいのか?
「お前何俺の生存時間調べてんだよ⁉︎ストーカーかよ‼︎」
俺の質問に少女は淡々と答える。それは機械のように同じ答えしか答えてこない。
「いいえ、違います」
「じゃあ、天使か?」
「いいえ、違います」
「悪魔か⁉︎」
「いいえ、違います」
「精霊…か?」
「いいえ、違います」
「神様ですか?」
「いいえ、違います」
「………」
こういう時ってお決まりの天使や悪魔、精霊の案内人とかじゃないのか。
神様っていう線はあるが、見た目からして絶対に違う。何しろ、この場所に神が案内人として待機する筈がないだろうし。
俺はこの少女の正体を真剣に答えたつもりだったが、全てが的外れ。
なので、俺はこう訊いた。
「妖怪……なのか?」
別に答えに期待するつもりはなかった。これも的外れなのだと勝手に思い込んだ。
少女は、僅かに笑みを見せて頷く。
「はい。私は、この空間に棲まう妖怪で御座います。幸助さんが現世で御誕生した瞬間から、私は守護霊のように取り憑いておりまして、このように死後になってお会い出来るようになったのです」
まさか妖怪とは。だが、この会話を聞いて断言出来る。
何かに巻き込まれる気がする。
「死んだ俺に何か用か?守護霊だった妖怪が何故俺に姿を晒す?」
「用なら…そうですね。貴方は若くして亡くなられた。だから、貴方には選択肢を御与え致します」
選択肢?妖怪がそんな事を決められるのか?
「私がそんな事を決めていいのか?っていう顔をしています。なので、私が貴方に教えてあげましょう。私は守護霊としては自我の持つ妖怪で、幸助さんの今後の決定権も握れるんです。簡単に言いますと、今の私は神様と天使と同等の決定権を有する守護霊の力を持つ妖怪です。天国へ導く事も地獄へ導く事も、そして妖界へ導く事も可能なのですよ?」
初めて疑問系で問われた気がする。しかも、何故か後半あたり口調が生き生きしていて、俺に選択肢をサラッと言いやがった。
「俺的には人生再スタートしたいんだが」
天国や地獄に行く選択肢は正直選びたくない。妖界って多分異世界だよな?だったら、人生再スタートする方が良いに決まってる。
少女は更に表情が明るくなる。僅かな笑みが更に感情豊かさを持った気がする。
「分かりました。では、私達の世界に来訪者として手続きします。接続して通れる空間が完成するまで、数十分待って頂きますのでご了承下さい」
「そんな簡単に承諾して良いのか?」
俺の疑問に少女は首を傾げる。
「別に?望んだ選択肢に導くのが私の役目なんですから、当然だとは思いますよ」
なんか…俺が思っている異世界転移?っていうヤツはかなり適当な案内人に導かれるイメージが強かったんだが…。
例えば、疑問や文句を公言すれば望まれない形で転生させられるものかと思っていた。そんで、異形種や性転換、武器などの形で転生させられる。しかし、この少女今、『私達の世界』って言ったな。妖怪の世界があるというのか⁉︎
手続きをする少女に対して、疑問を問い投げた。
「なんで、貴女は俺に取り憑いていたんだ?20年、こんな俺に取り憑くメリットでもあったのか?」
自分の世界から離れても尚、俺に取り憑いているんだったらこいつの望んでいるものはなんだろう。そんな疑問が俺にはあった。自分の世界で過ごす方が断然良いに決まってるのに。
少女は一瞬言うのを躊躇ったが、その口は動いた。
何故か、少女が悲しげに表情を浮かべて、俺を見ようとしなかった。
「本当に気を遣って下さるんですね。今まで、私は多くの若くして亡くなった方々を案内しましたが、幸助さんは、そんな中でも御優しいのですね。だからでしょう。私は貴方の守護霊として見守るのが心地良かったんです。いつしか、貴方を本当の意味で死んでは欲しくなかったのですが、あんな不幸が貴方を死に至らしめてしまったのは、見るに堪えません。自然死ならば良かったのですが、運命というのは突然、悲惨な決定を下す。変える事は可能ですが、確定された運命を変えるのは無理な話です。生ある者は必ず死に導かれる。この運命だけは誰も変えられないのです。幸助さんはその中でも一番可哀想です。人を助ける、これに罪も何もないのです。なのに、助けた貴方が居眠り運転のトラックに轢かれるのは損でしかありません。あの場で一番行動力の取れた貴方こそ、本当の意味で心優しい……」
長々と話した後、少女の目からは涙が伝っていた。
なんで、こんな俺の為に気を遣ってくれるんだろう?凄く嬉しい。
この少女の静かに語る表情が暗くなるにつれ、俺の胸を締め付けてくる。
俺、この少女にそこまで泣かせる事をしたのか。なんか、罪悪感が込み上げてくるな。
でも、達成感というか誰かに評価して貰えたというのも嬉しいと受け入れられた。
「長々と語った後に気を悪くする事を訊くみたいですが、宜しいですか?」
俺は少女に、敬意を払う。
「なんでしょうか?」
「俺に肩入れする理由、お訊きしても良いですか?」
少女は涙を手で拭い、ニコリと笑顔で答えた。
「貴方が好きですから」
「えっ?……今、なんて?」
いきなり率直にきた回答に、俺の思考は止まりかけた。そんな俺を気にせずに少女は、笑顔で語る。
頬に僅かな赤みが見え、語る少女の仕草は恋する乙女のようにも見えてしまった。
「貴方の純粋さに惹かれてしまいました。幸助さんが生まれたそのときには気付けませんでしたが、妖怪や幽霊などをこよなく愛したいという願いを、私が叶えてあげたいと思ってしまいました。恋…心、そんな近しい感情を貴方に対して、いつしか、向けていたのです」
この人の話、なんとなく理解できた気がする。なんで俺に取り憑いてまで見ていてくれていたのかを。
だけど、俺は……。
「こんな俺にですか?ですが…俺を知っているなら分かるかもしれません。俺、好きな妖怪がいるんです。それが貴女ではないんです…」
妖怪に好かれるのは嬉しい。だけど、俺には譲れない恋がある。
「そうですよね。幸助さんは好きになった人を変えない。それは重々御存知です。純粋だからこそ、その恋い焦がれる気持ちも知っています。今更、そんな想う人の気持ちを変えさせる事を無理強いする事は出来ません」
なんだか、更に申し訳ない罪悪感が襲ってくるんだが…。
初めて妖怪からの告白を断るのもかなりしんどいんだが。
妖怪や幽霊は好きだ。だから、余計に断るという行為に荷を感じてしまう。
「なんか、すいません。貴女を一方的に振る感じで」
「いいえ、こちらこそ振って下さり感謝します。これで、私は躊躇いなく幸助さんを導けますので」
妖怪、恋をするんだな。もしかして、俺が一番好きな妖怪も恋するのかな。
そんな思い耽っていると少女は準備が完了した。
「幸助さん、妖界への空間に接続、完了しました」
そう言われ、黒い渦を見た。僅かであるが、渦の中から光が漏れ出している。
「では、幸助さん。貴方にはお話しなければならない事項があります。二度目の人生において過ごす妖界、妖怪達が集う世界についてお話しいたします。心して聞いて下さい」
真剣な眼差しで俺をしっかりと見てくる。
「この妖界には定められた掟や秩序は機能はしているものの、政治や経済が成り立っているような世界ではありません。また、誰も咎めないし、誰も味方しない。見た目以上にルールにはかなり煩いので気を付けてください。妖界に生きる者達は独自の私観を持ち、違う価値観同士でぶつかり合う事も当たり前です。最悪、戦闘に発展する危険に巻き込まれます。基本的に、『妖力』というものが全ての種族に宿り、妖怪と人間を識別するものとしても分かりやすいです。妖力を多く有する者ほど強力な存在で、純妖は怪奇や神話、都市伝説から生まれた者が妖怪となり、古き妖怪であれば、その妖力は神にも匹敵します。自然発生した妖力で独自の進化を遂げた者を純妖と称され、八岐大蛇や九尾狐、天逆毎、大嶽丸、閻魔大王がこの妖界で最も最強で凶悪な妖怪で恐れられ崇められます。混妖は人間と交わる、又は人間が妖怪となった者を指し、都市伝説と人間が混じった種族とも捉えられます。人間よりは厄介な存在であり、突出した力を放てるのが特徴的です。この混妖はかなり特殊な種族であり、唯一、純妖にも人間にも転換する事が可能である種族でもある。蛇女や猫娘、両面宿儺、二口女がそれらに当たりますが、人間になりたい混妖は滅多にいません。人間はそのままです。妖界では最も弱者と認定され、搾取される存在として見られ襲われます。殆どは神隠しや死んだ者で迷い込んだ者達が大半を占めており、妖怪とは違い、生気に満ち溢れた種族である為、純妖の血肉として重宝される。その為、妖界という地という事で数は少なく、妖怪達が蔓延るこの地においては希少的な存在とされてまして、簡単に殺されることはありませんが飼い殺しされる可能性はあります」
俺は長々と語る少女に質問する。
「純妖っていうのは仲良くは出来るのか?」
俺の質問に対し、少女は若干呆れたように溜息を吐く。
「幸助さん……それを本気で仰っているようですが、私はおすすめ致しません」
「なんでだよ?別に気紛れで好かれるとか友達になったり出来るんだろ?だったら仲良くは出来るじゃねえのか?」
少女は再度溜息する。
「私の想像以上でした…。本当に妖怪が好きなのですね」
少女は悟った……。
「…最後に、貴方にはして頂かなくてはならない儀式があります。今から向かう場所は妖怪達がありのままに生きる世界。そんな世界に人間である方が入り込めば、その身を喰らわれるでしょう。妖怪は気紛れに人を救いはしますが、誑かして糧として取り込まれる事も珍しくありません。人間という事で貴方の命は天秤にかけられてしまうのです」
「はぁっ⁉︎」
俺は思わず声を上げてしまった。
「ちょっと待てよ!それ、今から食べられに行きますって事になってねえか⁉︎」
少女は悪びれなく考えて言う。
「はい。そのまま行きましたら間違いなく。それともう既に話しましたよ?」
「しれっと怖い事言わないで貰います?俺、妖怪は好きですが、流石に食べられるのは嫌ですよ!」
異世界に行って襲われるなんて、不運にもほどがあるじゃないか⁉︎
俺の心配を汲みしたのか、少女は口を挟む。
「そこのところは私が貴方に授けるので問題はありません。私ほどの妖怪でしたら、かなりの力を与える事が可能です。ただ…」
「ただ?」
「私が授けられる力は、その人の願望を忠実に具現化させるという物でして。幸助さんが望むような特典は授けられないのです」
「つまり、俺自身に基づいた力を獲得、又は引き出すっていう感じか?」
俺はその内容から答えを導く。簡単でシンプルな物だな。
俺が欲しい力を望んでもその能力が獲得できるわけではなく、異世界転移の特典とは己自身の内に秘めた欲求が力として具現させるというものだという。
難なく獲得出来るが、その力は未知数という感じだ。
厄介なのが、それを授かる本人ですら、どんな力を与えるのかが分からないのだ。
「理屈としては当てはまっています。幸助さんの深層心理に潜むその大欲を具現化させ、それを理想な形で扱えれば、妖界の地に住む妖怪達にも匹敵し得る事でしょう。しかし、その力を使い熟せなければ……」
「命はないんだな」
「はい。仰る通りです」
妖界の世界は未知数の上、今から獲得する力も不明。授かる力もどんな力になるのかも分からない。
つまり、殆ど何も分からない状態で挑む事になる。
人生リセットボタンで戻るよりも難易度は漠然なものだ。
「この妖界では常に争いが起きるわけではありませんが、かなり好戦的な妖怪はいますし、幸助さんは人間。襲われて糧にされるのは十分あり得ます。妖界に到着して襲われないように、私の方からこれらの物を差し上げます」
渦から何かが出てきたと思ったら、様々な武器や札、この世界の通貨と思しき物、ある程度の食糧までが俺の目の前に置かれていく。
「この剣とか刀、拳銃ってマジもんなのか?」
「はい。刀剣、拳銃、ライフル銃全てが本物で御座います」
俺は拳銃を手に取ってみた。かなり重く、それに剛鉄のような硬さだ。これで人を殴ったりしたら死ぬな。俺は試してみたいと思った。
「試し射ち…してみていいか?」
「構いませんが、的はこれにしてみますか?」
少女が両手で同時にパンっと叩くと、鉄塊が出てきた。
俺はその鉄の塊に狙いを定める。
パーンという乾いた音がして、俺は拳銃の反動で倒れ込んでしまった。初めて射った感覚としてはかなり恥ずかしい。
それを見て、少女はクスッと笑った。
「腕はないようですね。射った弾が何処に行ったのかが分かりませんですし」
「マジかよ……」
泣きたくなる。小さい子に銃は向かないと言われる気持ち、分かるか?目の前の少女に悪びれる様子もなく、気持ちを察しられ、『止めた方がいい』って純粋無垢な表情で言われたら悲しくなるよ。
俺は諦めて、一番使えそうな武器を握る。
西洋剣に近く、刀身が青く照り輝く刀剣を俺は選んだ。
「よし、これなら俺でも扱えるだろうな!」
俺は両手で振り回す。素振りのように無駄な体の動作を一緒に行い、刀剣を振り回す。思っていたよりも刀剣は軽く、俺の思うように振るえた事に、俺は驚いてしまった。
「おおっ‼︎これ使い易いな!軽いし、何か振り回す度に力が増すっていうか、力が馴染むんだよなー⁉︎」
俺の疑問に少女はすかさず答えた。
「はい。その刀剣は使い手の精神と連動する珍しい武器です。妖力とは違い、己の意思に呼応するそれは、妖力に長ける存在にも有効な致命傷を可能とする一振りです」
「妖力?妖怪が使うような魔法みたいなものか?」
「魔法とは殆ど似たような仕組みだと思います。妖力とは、異妖が持つ魔力と同義で、妖怪は持つ妖力を放出して妖術の発動が可能です。妖力で生み出されたものは、魔法同様に自由自在に形を変え、己の力として相手に知らしめる事が可能です」
「なんだ。魔法と似たものなら良かった。そう思うと、妖怪がいる異世界はかなりヤバいんだな?」
「それはそれは、大変というもので片付ける幸助さんの方が恐ろしいですよ?それに、勘違いしているかもしれませんが、この妖界は貴方が生きていた日本とは少なからず連結しているのです。本来、人間界に短時間顕現出来る存在を、皆は妖怪と呼び畏れる。そんな妖怪達が集う場所が妖界なのです」
それは驚きの事実だな。妖界が俺の世界と繋がっていたのなら……⁉︎
俺はその事実を確認する。これは、俺にしか分からない事実になる。
「顕現するという事は、俺の世界に来てたんだな?妖怪が⁉︎」
俺はその事実が本当なら、気持ちを抑えられない。
少女は俺の望んだ回答を答えてくれた。
「はい。かなり頻繁に姿を現していますよ。私は守護霊として見守っていましたし、つい先日なんか、大妖怪の方まで様子が見たいという事で幸助さんの世界に来訪しておりましたので。妖怪の方々は自由気ままの価値観を持っているんです」
本当にいただなんて嘘みたいで嬉しい。グッとくるこの喜びを思いっきり拳で突き出した。
「しゃあああっっーーー‼︎オカルトなんかじゃなかったんだ‼︎よっしゃあっー‼︎」
俺は渡された武器などを身に付け、力も解放して貰う。
その際の詠唱はかなり神秘的に感じた。俺は膝をつき、少女は両手で何かを込めるように眩い光を発光させる。
「思う念力岩をも通す力を授け、我が加護の元に幸運あれ。歳行かぬ者に永劫の加護を御与えせよ。我が願い、聞き届け給え。名を持つ者には惜しみない愛と加護を。名を持たぬ者に恥じぬ生命の息吹を。成熟するべく第二の人生を妖界で過ごす熱情を。何者にも恐れない心胆を持ち、勇敢なる男を正なる運命に導くがいい」
俺はこの詠唱を心に刻む。刻んだ事で、俺は力に芽生えたのを感じた。
「成功、しましたか?」
「成功……はしたみたいだな。けど、何を獲得したのかが分からないな」
体や服を見たが特に変わったところはない。俺の心に変化でも起きたのでも思っていればいいか。
「すいません…。私のこの力は、この空間ではまともに発揮出来ず、どんな力に目醒めたのかが判明出来ず申し訳ございません」
俺は別に大丈夫とニッと笑って言ってあげた。少女を泣かすのは男の恥だからな。
「では、全ての準備は整いました。空間で妖界の方に向かって下さい。私は、此処でお別れです」
「えっ⁉︎」
俺は突然言われた事に強く反応してしまった。
俺の守護霊じゃないのか⁉︎なんで別れるんだよ。
「なんで付いて来てくれないんだ⁉︎俺の守護者なんだろ?」
少女は悲しそうな表情で答えた。
「貴方が…事故死してしまったせいで、私は守護霊としての役割は全うしました。いいえ、私は守護霊としては失格なのです。貴方を護りきれなかった私は、守護霊としての権限を、今の儀式を持って失いました」
それは当然なのだ。護りきれなければ、その役割は失う。
つまり、彼女はこの儀式を持って、彼とは離れなければならない。そう定められていたのだ。
「……どうして言わなかったんだ?貴女は……」
少女の名前を訊いていない。それと同時に、俺はそこでその話に入る事をやめてしまった。
少女の顔を見て、俺が口を挟むのは更に傷付けるのだと感じた。
悲しそうなんだ。そして、本当に俺を好意的に思ってくれていた妖怪なんだ。
そんな彼女に、俺が突っ込む事はしてはならない。そう思い、 気持ちを落ち着かせる。これ以上、悲痛な表情で答えて欲しくないんだ。
その代わり、最後に俺は訊く。
「名前……教えて下さいませんか?俺、貴女の名前を一方的に知らないのは正直嫌なので。これなら、答えてくれますか?」
少女は悲痛な表情をしていない。それを超える隠し立てのない笑顔を見せてくれた。
「はい。私の名前は、無名。貴方を好きな無名です!ずっと、幸助さんの幸せを願っております‼︎」
最後の最後で、無名が感情を曝け出してくれたのだと思い、 俺は込み上げる涙を目と目の間を摘んだ。
「ありがとう無名。俺も貴女に守護して貰えて良かった。また、いつか会おうな!」
俺はそう台詞を言い、無名に用意して貰った空間の中へ足を踏み込む。
俺は挨拶を交わした。後ろにいる無名に改めて別れを言う必要はない。
俺は彼女の加護を信じて、僅かに見える光を頼りに渦の中へと消えた。