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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
妖都征圧阻止編
17/265

16話 巧みな話術と本性

3話目です‼︎

本格的な戦闘ですが、幸助がなかなかな戦術です。1番ヤバいタイプかもしれません。

これ、やられた彼は堪ったものじゃないですね。


明日も数話投稿します!かなりの量なので投稿数は多いです。最後の一部の〆は納得してくれるといいのですが。今日は書き込み過ぎて疲れました。

この作品を文学賞に投稿するつもりなので、3月から5月まで投稿できるかは分かりません。一応、二部と三部を制作していきたいと考えていますが、かなりの量と妖怪の数々なので、普通に2年で終わる気がしません。投稿許可又は、落選した時点で投稿します。

 片手剣が凍結して後が無くなった九華は、遂に異能を披露した。

 指を使って印を結び、唇に手を近付ける。

(何かくる…)

 雪姫は警戒心を最大まで上げる。

「風遁:空気鉄砲くうきてっぽう!」

「っ…風?」

 小さく空気を圧縮した風が、雪姫の肩と脇腹を掠める。

 更に九華の追撃が続く。印を結び、口を膨らませる。

「火遁:熱砂胞風ねっしゃほうふう!」

 火の纏ったような砂状の広範囲攻撃が繰り出される。

 雪姫は吹雪を吹かせ対抗する。

(吹雪が溶かされている。不味い…)

 吹雪が熱で水に変わる。雪姫は危険と判断し、距離を置く。

 しかし、九華の手は止まらない。印を結んだ瞬間、自身が発光し始めた。

「雷遁:雷光点火でんこうてんか‼︎」

 眩い光は広範囲に渡り、目を潰しかねない程の輝きを放つ。





 思わず雪姫、戦っている俺は目を瞑ってしまう。

「うっ!目眩しか⁉︎」

 俺は急に来た攻撃に対応出来ずに視覚が一時的に封じられた。

「がはっ!」

 その隙を突かれ、俺は分華の蹴りで背中を強打し地面にめり込んだ。

 マジで痛え…。

「おい、さっきまでの勢いはどこいった?」

 分華は俺の背中に足を乗せたまま、見下すように言う。

 だが、意外にも俺は冷静だった。

 雪姫に習った技を使って乗り切ろうと行動に移した。

 俺自身を瞬間凍結フリーズさせ、分華の足を固定させる。

「は?…何してやがる!」

 分華はくっついた足を引っ張って取ろうとするが、あまりの凍結度に足が抜け出せない。

「ほう?幸助殿は器用じゃな」

 と、來嘛羅は独り言のように呟いたのを聞いた。

 背中に固定しちまえば、俺のものだな!

 俺は刀剣を頭スレスレで、自分の背中と並行に振り斬る。

「ギャアアアアアッーーー‼︎」

 振り斬った瞬間、俺の背中から途轍もない激痛の叫びが聞こえた。

 背中に生温かい感触がした。こいつの血だな。

 分華は斬られた片足を抑え、地面に転がり込んでいた。見るに堪えないほど、分華はもがき苦しんだ。

 痛そうだな。俺だったら泣き喚くかもな。

 分華の無様な姿を見た九華は苛立ち始める。

「ふざけんなっ‼︎何足持ってかれてんだよ糞男!早く分身を出しやがれ!」

 この九華はかなり口が悪いみたいだ。それに分華の能力まで直ぐに分かってしまった。

 俺はその能力の使用を阻止する為に容赦なく手を下す。

 まず、分華の手と足の関節ごと凍結させる。これで動く事も出来なくなる。

 痛みが無くなる為、分華は泣きじゃくりながらも俺に叫ぶ。

「クソが!クソッタレが‼︎テメェみたいなガキに自由を奪われるとはな‼︎解放しやがれクソがっー‼︎」

「あんたが俺を見下したから、だろ?俺の能力が名付けだけだと勘違いしたあんたが馬鹿だけだろ?」

 俺は煽られた返しをしてやった。

「ふざけやがって‼︎お前如きガキにやられちゃ、俺の立場がなくなっちまう。妖怪と連むお前なんか殺さねえと気が済まねえ!とっとと俺を解放しやがれ‼︎クソが‼︎」

「何言ってんだよあんた。残念だが、もうあんたの出る幕は終わりだぜ?」

 俺の言葉で、分華は恐怖の顔をし始めた。

「俺は寛大じゃねえよ。その気になれば、俺はあんたを殺してやる」

 顔しかまともに動かせない分華は、縋り付くように俺に命乞いをする。

「嫌だ…。巫山戯るな…巫山戯るなよクソが‼︎俺はこんなところで死にたくない!散々アイツに馬鹿にされた俺がこんなガキにやられるなんて……死にたくない。頼む!俺はまだ生きたいんだよ‼︎なぁ⁉︎お前も人間なら分かるだろ…?人間が人間を殺しちまったらヤバいぜ?人として終わってる」

 迫真の演技では無さそうだ。

 それに、こんな情けなく縋り付く大人に俺は嫌悪感を感じていた。

 だからだろうな。

 俺は無意識に、こいつに冷淡に言っていた。

「何寝ぼけてるんだ?人間だから知らないといけねえのか?妖怪と隔てなく愛せないあんたらの命乞いなんか聞きたくない」

 そう告げた。分華は絶望したような顔をして何も言えなくなった。

 俺はその顔を見て、清々した。

 俺と分華の勝負は呆気なく終わり、結界が仕上がったのか來嘛羅が近寄ってくる。

「お主、随分戦い慣れておるみたいじゃな?雪姫に稽古をつけて貰った実力、誠に素晴らしいの。その男は妾に任せるとよい。幸助殿は雪姫の助けに向かうがよい」

 笑顔で俺を褒めてくれた。その笑顔に釣られ、俺も思わず貰い笑みをしてしまった。

「うむ?何故なにゆえそんな笑みを浮かべるのじゃ?そんなに嬉しいものなのか?」

「あっ…すいません。好きな人に褒められるのは初めてで…。こんなにニヤけてしまうんだなって。あれ來嘛羅?なんでクスクス笑うんだよ?」

「いや何、お主の幸ある笑顔が純粋なものでな。妾も思わず見惚れてしまったのじゃよ?」

 そう言う來嘛羅の表情に赤みがあるが、何処か奥ゆかしさを感じる。

 俺は思わず言葉を失った。

 それを悟られたくないが為に、俺は雪姫の手助けに行った。





 來嘛羅は表情を変え、冷酷な表情を分華に見せつける。

 金瞳は離さんばかりの威圧を光らせ、分華の精神を萎縮させる。

「だ、誰だよテメェ‼︎」

 震えながらも分華は口答えする。

 來嘛羅は分華の顎を持ち、目を細める。

黒山分華くろやまぶか、あそこにいるのは黒山九華くろやまきゅうかで合っておるな?其方は妾の同胞達を蔑ろにしたのじゃ。私利私欲で妖怪という存在を貶し、暴力という支配を施した。人間という種族に生まれ、迷い込んだ其方に下す罰は死じゃ。後悔して閻魔に下されるとよい」

 來嘛羅は尻尾を九本生やし、身動き取れない分華を尻尾で掴む。

 美女の顔から狐の鼻と口が生える。目は狐目になり、より一層妖怪らしさが強調される。

 その姿を見て分華は、その妖怪が誰なのかを理解した。

「嘘だろ……や、やめてくれぇ…」

 惨めに同情したくなる表情を浮かべる分華。來嘛羅はそんな分華に容赦はしない。

 來嘛羅は不敵な笑みを浮かべ、分華に罰を与えた。

 尻尾に触れている箇所から生気を吸い上げる。

「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だっー!殺さないでくれっ‼︎なんでもするから‼︎なあって‼︎」

「なんでもするじゃと?」

「そうだ!俺に出来る事を全てやる!秋水や他の奴等の情報も能力も教える!あーそうだ!俺がスパイになって情報を渡す‼︎お前らに協力してやるって言ってんだ!だから…」

 來嘛羅は心の中でほくそ笑む。

「では『契り』じゃ。妾に全てを開示する条件として、其方の魂を数千年保護しよう」

 分華は恐怖に駆られ、それを受け入れてしまった。

 來嘛羅に絆されるがままに口が勝手に動き出す。分華自身は來嘛羅に操作されているとは思っていない。

「俺と九華の他に、秋水や名妓、貞信、異世界人40人いるんだ。妖怪は200とアイツが支配していてな、一年以内に行動を起こすとのことだ」

「では、その者達の場所は?」

「此処妖都の地下に妖怪がほぼ全員いて、この妖都から離れた宵河よいがっていう場所に異世界人がいる。俺は捕まえたあのガキを宵河に連れて行く予定だったんだ」

 数分に渡り、分華は全てを語り切る。

 敵の情報や拠点に張り巡らしている結界や呪術、妖怪の詳細を聞き出した。

 來嘛羅の持つ能力で全てを無意識に吐かされているとは理解出来ずに、分華は包み隠せずに話した。

「もうこれで全部だ!俺を離してくれよ‼︎」

 分華は全て語った。なのに、來嘛羅は離す素振りを見せない。

 聞き終わった來嘛羅は分華に下す。

「良かろう。其方のい情報のお陰で救える。其方に感謝の意を述べて、肉体の死をくれてやろう」

「はあ……?」

「うむ、聞き取れなかったかの?其方の人生は此処で終わりじゃと申したのじゃが?」

 分華はその意味を受け入れられなかった。

「巫山戯んなよ……約束がちげーだろ‼︎」

「違うとはなんじゃ?妾は魂を保護するとだけは申したのじゃが?死を与えないとは言っておらぬし、其方との契りは破っておらぬ」

 分華は死の恐怖が避けられないと分かり、歯をガチガチと震わせて涙を浮かべる。

「話しとは、最後まで聞くものじゃよ。親にも警告ぐらいは受けたのでは?他の者と契りをするなら、その意味を理解せよと。其方は恐怖のあまり、妾との『契り』を結んだのじゃ。後悔して妾に取り込まれるがよい」

 艶然に微笑む來嘛羅は悪魔だった。

 分華は最後の抵抗を試みる。

「俺は妖怪の加護を受けてんだ!殺すのは出来ねえはずだ!」

 それは、來嘛羅にとっては関係なかった。

「殺生をするとも言っておらぬ。肉体全ての生気を奪い、其方の魂だけを数千年糧として生かし、時期が来れば養分となって消える。妾が下した契りはそう意味するのじゃよ。加護じゃが、魂が死ななければ殺したにはならぬ。よって、其方の加護には反しておらぬから安心するがよい」

 來嘛羅は急速に吸い上げる力を上げ、分華の肉体は、形が徐々に尻尾に吸い込まれるように消えていく。

 最後の断末魔すらも吸い尽くし、残った魂を手に取り口に頬張る。

「うむ。やはり人間の欲は面白いものじゃ。(あい)()(らく)(さち)(せい)()(しつ)(にく)(あい)(しょく)と様々な欲が満たされた生気は、人間しか生み出せぬ。久方ぶりに食べたが、もっと欲しいの」

 來嘛羅は幸助を見て、舌なめずりをする。

「妾の期待に応えてくれる限り、お主は食べはせぬ」

 不穏な一言を残し、食らった分華を解析に入る。

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