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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
碧落奔走編
149/285

148話 雪姫の隠し事

雪姫の癖、これは誰かに似せています。既に作中に出てきてますので、見てみてください。というか、彼女を真似したような癖を持つ妖怪がいます。匂いフェチみたいなものをお持ちで、以前から雪姫の癖で匂わせています。


暫くはまたpixivの方で投稿をします。また新規で投稿する日時は、pixivの方で伝えます。

俺は疲れた……。

そろそろ、この二人から解放されたいと本気で思い始めてきたんだ。目障り…ちょっと近いか。

過剰に接触する妲己と過保護な雪姫に挟まれ、理由もなく歩かされている。

なんでこんな事しなくちゃならねえんだよ。俺は理由もない散歩なんかしたくねえんだよ!

「ほう?貴様、ワレとの逢瀬に不満の情を抱いているな?」

「っ…なんでそれを⁉︎」

「顔に出ているぞ?言ったであろう、ワレは貴様の表情で感情が読めるとな」

怒っているのではないが、妲己が俺を面白そうに見ている。

何をされるか分かったもんじゃない。企みある笑みで身体を弄ってくる。

「そうだったな…」

「しかし貴様の不満もよく分かるぞ?無意味に徒歩するだけでは飽きるであろう?ワレがとっておきの場所に連れて行くとしよう!」

「あんのかよ⁉︎」

早くしてほしかったぜ。てか、何の為に歩いていたんだろうな。

「ククク、そう躍起に聞くでない。雪女…いや、今後は雪姫と呼ばせて貰おうか?」

「構わない。淫乱狐にだけはどっちで呼ばれようと変わらないから」

雪姫は冷めた態度で返す。

「そうか。ではあそこへ入るぞ」

妲己が指差す方を見て、俺は更に嫌な顔をしてしまった。一種のトラウマが呼び起こされ、後退りしてしまう。

「ゲェ…!あそこって…」

「ワレがひいきにしている店だ。貴様の濃ゆい臭いが気になってな。あまり好かないからな、替えが必要だろ?」

腕を掴まれ、強引に店に入ろうとする。

「は、離してくれ!」

必死に俺は抵抗した。あの時のトラウマが蘇りかねない。

來嘛羅が着せ替え人形のように服を着させ、数時間も拘束された挙句、俺の大事な裸体までも直視されてしまった。

あの時の來嘛羅の表情が、まさに妖狐だったのを覚えている。妲己も妖狐だ。俺が逃げたくなるのも無理もない。

「こら!ワレの誘いを断るな!貴様の服は全て決めてやるから来い!だから逃げるでない‼︎」

必死の抵抗も妲己には無駄だと理解するまで、俺は連れてかれそうな身体を店の中に入らないように抗った。

しかし、妲己の腕力は俺よりもある。虚しくも、俺は店に引き摺られるように連れてかれた。

雪姫が俺に手を貸さなかった事を、俺は勝手に恨んだ。


店に入ると直ぐに、店員と思わしき妖怪が丁寧に出迎えてくれた。俺は半ば逃げられないように逆さまに片足を握られて宙ぶらりになっていた。

「足を運んで頂き誠にありがとうございます」

「今日は婿と雪姫コイツの服を頂戴する。良き品質の服を用意せよ」

これは意外だった。雪姫の服も用意すると今言ったのだ。

俺はちょっと見てみたかった。

「なあ妲己。そろそろ下ろしてくれねえか?もう逃げねえし」

「どうだか。ワレの愛を拒もうとした先程の態度は解せぬがな?次逃げてみろ、貴様の服は裸しかなくなるぞ?」

「……変態か?」

「クククッ!貴様の裸はさぞ色気あるだろう。剥ぎ取り、肉や体液を貪ってみたいものだ。服を着るのは勿体無いが、人様の前で晒されるのは恥であろう?流石にワレも常識があるから安心しろ」

「どうだが…酒池肉林を作ったのはあんただろうが…」

「何か言ったか?」

俺が妲己の悪口を言ってしまい、妲己が少し怒気の含んだ声で睨んできた。

「悪い…あんたがやった事をつい言っちまった」

「謝罪なら受けてやろう。ワレの機嫌を潤わせることで、今回の罪の釈放としてやる。一度でもワレが召す物を拒めばその純物は無くなると思うのだな!」

「純物って……おいまさか?俺の貞操とかじゃねえだろ⁉︎」

妲己は何が当たり前だという顔で言う。

「貴様の初物はつものはワレが貰う予定。たかが数年の猶予があるに過ぎない。罰を犯した者はその罪を必ずしも償わなければならないが定め。ワレの婿になる以上、貴様はその罪を捧げるしかあるまい」

いつの間にか許婚のような関係に持ち込まれていた。

この世界での婚姻とは重いと言われた。一人しか結ばれず、妖怪からせがまれれば人間は応じるしかない。

俺はそれを知らなかった。妲己も言わなかったから尚更気付ける筈もなかった。

だから、妲己のこの態度や俺へのアプローチはそう意味なのだ。

「分かったって。逃げねえから何でもしてこい!」

ヤケ糞に覚悟して言った。

「そうか。では貴様の服はワレに任せよ!」

俺は再び、妖怪に裸を見られる事となった。




幸助の悲鳴らしき声が聞こえる中、雪姫は怒りを堪え、服を見ていた。

「静かに出来ないの幸助は?でも、私には幸助の裸体は見られない」

以前、体に刃を入れようとした時の嫌な記憶がフラッシュバックする。

二度とあってはならないと、雪姫は幸助の裸体を見る事を拒んだ。

それを紛らわせる為、自身が保管している幸助の服を取り出す。

それは幸助が妖界に転生した際に着ていた服である。時計やズボン、シャツも全て、雪姫が隠していた。

何故隠したのか?雪姫は幸助に嘘を吐いていた。

理由は分からないが、この服は誰にも知られていない物。少なくとも、疾しい気持ちで嘘を吐いた事だけは理解している。

「こんな事、どうして隠したのだろう…。幸助が大事にしている服なのに。だけど、幸助はもう忘れているようだったし、私が持っていても意味は……」

手放そうと何度も考えた。

だが、雪姫は捨てる事が出来なかった。

大事な物だから。そう言い聞かせて捨てれずに保管していた。

「うん…凍ってるけど、この匂い……落ち着く」

手に持って鼻に触れそうな距離感で嗅ぐ。

椅子に腰掛け、服を大事そうに嗅ぐその様子は一種の変質者を思わせる。

雪姫がこの行動をし始めたのは、幸助と共に妖都に来てから見られるようになった。幸助が見ていない隙を見ては匂いを嗅ぐ奇行をしている。

後ろめたさがある一方、この背徳感が何とも言えない刺激となる。

(どうして…?こんな事、いけない事なのは分かってる。でも、幸助があんな仲良く淫乱狐や化け狐と話してるのを見ると常に怒ってる。ううん…近付いて欲しくないからあんな態度を……あの二人だけでは危険過ぎる)

雪姫は知らず内に彼女達を嫉妬という敵意を向けていた。

あの二人が幸助を誘ったり、彼を呼んでいるだけで腹の底から込み上げてくる怒りがあった。

しかし、雪姫はそれを呪った女と重ねているからの勝手な怒りだと思い込んでいる。自分の本当の感情を知らない今、強い嫉妬に駆られている事すら理解していない。

雪姫は馬鹿ではない。

幸助達の様子をしっかり監視しており、如何わしい事態となれば手荒な対処も考えている。服を嗅いでいるが、誰にも気付かれないように服は裾に隠している。

「もうやめた方がいい。これ以上は理性が抑えられそうにないから…」

済ました顔をして服を仕舞う。気持ち的に怒りはなくなったが、その安心感は早くも怒りへ変わる。微かに聞こえる叫びを、雪姫は聞き逃さなかった。

「もうやめてくれよ‼︎何十着着させる予定なんだよ⁉︎」

「駄目だ。貴様は大人しくしておれ。ワレの目に止まる物が現れるまで何度も着せ替えが必要だからな!」

幸助の叫びを聞いて、迷いなく刀を握る。

服屋であるのを忘れ、雪姫は冷静さを欠く。

「淫乱狐…‼︎幸助に如何わしい馴れ合いをするな!」

怒りのままに行動し、幸助がいるであろう個室に入り込む。

しかし、雪姫はあまりの衝動的行動により、ある事を想定していなかった。

雪姫はその場で立ち尽くし、シリウスの目は驚きを隠せない程に大きく開く。

その光景を見てしまい、見た雪姫すら頬を赤面してしまう。

まさか、幸助があられも無い姿なのだとは気付けなかった。

「っ‼︎なんであんたがくんだよ⁉︎」

「……ち、違う!私はそんなつもりじゃ…」

「帰ってくれよ‼︎これじゃあ俺が惨めだ!」

幸助自体も雪姫の登場は想定外だった。思わぬ言葉を発してしまう。

雪姫は一瞬混乱する。

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