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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
碧落奔走編
147/285

146話 見えぬもの

大変……申し訳ございません。

昨日、投稿準備していたのですが、失踪事故がありまして、それどころではありませんでした。あまり詳しくは言えないのでここまでにします。

お詫びに、本来は今日で昨日でこのストーリーを休止する予定でしたが、勝手なお詫びをさせてください。今日は新規ストーリーを後2話投稿いたします。


加護を授け、その潜在能力が如何なるものかを測った。

加護は成功した。しかも、今まで類を見ない才華を咲かして見せたのだ。陰陽師に引き継がれる能力が開花し、その力を子供でありながら容易に操ってみせた。


これまで幾度なく挑んだ『メデューサ』や『キマイラ』、逸れた中国妖怪などを単独で撃破し、鬼童丸や四天王が苦戦していた相手をその力量と才能で滅したのだ。


天性の天才が現れ、殺意を一切抱く事は無くなった。それどころか、自らの立場を腹を割って話したことで強い共感を得た。信用に足ると判断したのか、陽輝を一番の寵愛者と勝手に決めたのだ。

それからの好待遇ぶりが親のようだった。

まず、好きな時に自分を呼び出して良いと云う。これは他の四人や鬼童丸ですら許していない。

常に数十人の選抜した強者ツワモノで護衛し、その容姿見せぬように顔を隠していた。顔を見た者を斬り捨てると脅し、盗られるようならば死刑を言い渡しているほど。

一人では出歩かせない。但し、陽輝が行きたい場所にはいつでも行かせるという理不尽。

これだけでも自由過ぎる。まるで、何処かの王女のような待遇が約束されている。

それ程までに、酒呑童子は陽輝という人間に強い情を抱いている。

時には、陽輝の話を自分の意見にすることも最近はよく見られる。

「魔女は言った通りに古都へ向かわせたぞ。しかし、奴等を野放しにしてもいいものか?」

「それなら心配要らないと思うよ?朱音さんから聞いたけど、松下幸助が途中で拾う予定だって。でも、結局は百人の魔女が向かっても僅かしか生き残れない現状、こっちが動かなくても意味はほぼないみたい」

それに子供といっても頭が回る。

自分達が妨害しなくとも、古都まで2年掛かる道を無事に渡れないのは計算済み。余計な手を出すより、協力を要請する幸助達を招くきっかけ作りをした方が戦力増強になると提案したのは、紛れもなく陽輝である。

「そうだったのか…。この場所の詳細を聞かれまいと撃ち落としたのが無意味だったな。それで、陽輝は玉藻前と大嶽丸を倒す手筈は整えられるか?」

「お札は多めにだっけ?霊力をありったけ込めた札はまだ二十枚しか。雑魚妖怪なら一瞬で浄化出来るレベル」

ここで言う雑魚妖怪とは“厄災”である。ここの領域にいる妖怪ならば、陽輝の相手にならないのである。

「まだ1週間でそんなにか⁉︎いや素晴らしいな!お前みたいな陰陽師の血を引く者でも1年で一枚が限界だったというのに。大した奴だ!」

酒呑童子は子を褒めるように頭を撫でる。

まるで親バカである。

「陽輝の霊力だけならこれまで。あとは…」

「っ!そうか分かったぞ!余の妖力を注いでやろう!」

「そうそう。加護を通じて、この体にある霊力に変換し、更なる膨大な『呪符ジュフ』として発動出来るように施す。それなら、『メデューサ』と『キマイラ』の時みたいに倒せる。血や毛があるともっと有効だけど…」

陽輝の異能ではなく、陰陽師に引き継がれる力で“災禍様”を滅ぼした。異能があれば更に容易に討伐したのであろう。

陽輝は僅か2ヶ月で己の異能の名を解明し、その力をふんだんに使えるようにまで仕上げている。

陰陽師の術は、妖怪には有効な殺傷能力を持つが人間には大した影響を与えられない。元々、陰陽術という物自体、人間に害する妖から護り祓う為に作られた術なのである。

それをまかなう役割として異能を使う。未だ人間相手には使った事はないが、酒呑童子がかなり褒めた能力を持っているのは明白。

しかも、まだ奥の手も持っているものだから、恐ろしい子供である。

恐ろしい人間の側に置いていても、酒呑童子は気分が良かった。

「いいぞ‼︎余の加護を存分に使って良いぞ‼︎陽輝の為ならば今からでも掻っ攫ってこよう!」

「それは不味いと思うけど?今、怪都の方で多くの妖怪が包囲してる。そこへ酒呑童子が向かえばタダでは済まない。最悪、“八部覇尾はちぶはび”の出現を招いてしまう恐れがある。用心してもアレは来る」

冷静な判断を伝え、酒呑童子の意欲を削ぐ。

事実、今の怪都への侵入はほぼ不可能に等しく、酒呑童子ですら突破が命の危険に晒される。

「1000年前に一度、余はその内の筆頭を殺した。だが魂まで奪えず、先に玉藻前が取り込まれてしまった。唯一、この失態を話したのが陽輝で良かったと、心の底で思う」

「有難い言葉として受け取りましょう。だけど、最近こんな噂も聞いたのですよね。聞きます?」

「それは面白いことか?」

「いいえ。むしろ、妖界の危機に関係することです」

陽輝は、誰よりも噂を真実と鵜呑みにしていた。

「それは、実に面白そうだな⁉︎」

「やっぱり。この硬直した均衡が崩れても?」

「聞かせろ。余が聞いてやる」

陽輝は改めて正座をし、頭を軽く下げる。

それは、酒呑童子に敬意を示し、これから失礼な発言をすることの許しを得る為の所法である。

「朱音さん以上に未来が視えるとは言わない。だけど、この世界は誰かの手で大きな分断が起きると思うの。とても分からないけど、7年後にソレは起きる。最悪、“三妖魔”全員が消え、違う世界が創られる。ううん、“三妖魔”だけじゃない。妖怪、人間という種族そのものがいなくなるかもしれない」

陽輝に未来予知といった能力はない。しかし、自らが持つ勘を信じ、臆する事なく変を伝える。

何か引っ掛かったのか、酒呑童子の表情に険しさが浮かぶ。

酒呑童子は座り込み、深く頷きながら考え込む。自分の身に危険が及ぶと聞いて、激昂する様子のない彼の様子は気味が悪い。

「一概に馬鹿にできんな。それで陽輝、7年後に事変が起きると言うが、如何なる原因かは分からんのだな?」

「うん、何があっても7年後に起きる。もう事変は始まってるのは間違いないと思う。何処の人間か妖怪が謀反を起こすかも」

「謀反はないだろ。朱音がいる限りはな」

「いいえ。朱音さんの《予兆》も万能じゃない。今日、未来が変わって焦っていたし」

「ムッ…やはり盗み聞きをしていたか」

苦笑いしつつも、本気で嫌悪しているわけではない。陽輝の話に相槌を打ち、特に否定的な考えを口にしない。

「聞くも何も、ワザとこっちに聞こえるように盗聴器をくれたでしょ?」

「はっははは!そうであったなー⁉︎オレが渡してたな⁉︎」

妖界には、電子器具といった現代の品物が取引されることもある。盗聴器もその一つであるが、妖界に広く広まっているわけではない。

なんせ、その生産地は誰も知らず、盗聴器も怪都で強奪した物を使用しているに過ぎない。妖都や古都には流通しておらず、怪都のみでその鱗片を見せる。

そんな品物を、陽輝が懐から取り出す。

「これ、かなり質が良いのか声質がはっきり聞こえる。使い方は教えた通りで合ってて良かったね」

「こんな機械仕掛けの箱で人の声が分かるとはな。やはり、今の人間の文明は発展しているようだ」

「そうかもね。こんな物があるから、7年後に災厄が訪れるのかも知れない」

「こんな物が……分からんな」

不思議そうに盗聴器を凝視するが、これ程の機械で大事が起こせるのかという疑心暗鬼になる。

「きっかけが何であれ、妖界全土へ広まれば玉藻前も動き易くなるのでは?ですが、それ以上に個人の噂が広まり易くなるのが恐ろしいところです。携帯、そんな物があったらもっと怖いです」

そう言い、懐から四角い形をした金属の塊を取り出す。

「それがケイタイというものか⁉︎」

興味津々にする酒呑童子。そんな彼に、陽輝は金属の塊を差し出す。

待ったがないのか、力強く握った金属の塊は圧縮され、円状の塊へと変わる。

そんな様子を見て、陽輝は声を抑えて微笑する。

「全然違う。それはただの箱型のケース。この世界に来る前にちょっと見たぐらいだから、こんなガラクタが凶器になるだなんて考えてもなかった」

「ん?武器より強いものなのか⁉︎」

現代に疎い妖怪、特に、江戸以前の妖怪は情報を得る手段が妖界のみとなり、人間から共有する他、手段がない。酒呑童子もその一人で、分からないのも陽輝は納得する。

「マ……母様が仰っていました。“身近な魔物”だと、何度も言われていましたので。携帯とは、一種の妖怪の類いだと思うの」

現代の人間として見る目を持つ陽輝からすれば、機械の普及が進むことを危惧する。

「……陽輝、お前はオレの娘なんだ。オレがそう思うだけで、お前が父親と思えとは言わんが、せめて言葉は選んでおくれ。そんな他人事のように口を開き、大事を客観に言うではない」

「と、言いますと?」

「気兼ねなく話せ。ちっとはおませをやめ、オレに弱味でも見せてくれ。童にしては、あまりに不気味だからな」

加護を与える妖怪には、庇護者の意識を汲み取ることが出来る。最も、“災禍様”の領域に存在する妖怪でなければ、彼らを理解する事は出来ない。

故に、陽輝が自分に対して何処か、他人のように振る舞っていると感じ取る。不快と吐き、殺すならば多少の将来を潰してでも可能だ。それをしないのは、酒呑童子が陽輝に親心を向けていたからである。不利益を被り忘れるより、一人の人間への気遣いが得だと判断した。

しかし、人間の本質を理解するには至らない。

「いいえ。私はこんな人間なんですよ。陰陽師の血筋に生まれた人間に、必要のないものは考えないようにしているだけなので。7年後が大事だから、それに向けて“三妖魔”への対抗策を考えるのが最優先」

接した時間が、あまりにも微々たるものである。

幼子である藤原陽輝の本音を理解してあげる事は出来ず、ただ寵愛者として接する以外を考えることをやめてしまう。

「そうか。なら、西園寺と金箱かねばこを呼び出そう。鬼童丸、二人を呼べ」

今は、玉藻前に向けての備えをする。酒呑童子が身内の問題から目を背け、事変への興味が行ってしまう。

陽輝の人柄は、何処か歪であった。

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