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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
碧落奔走編
144/285

143話 酒呑童子

お待たせしました!

遂に“三妖魔”の1人酒呑童子の登場です‼︎

彼の妖術はある程度決めてますが、今のところ異能を行使することはありませんので、まだ完全には決まっていません。しかし、“三妖魔”も2人も出てきて、残りは大嶽丸のみ。彼も暴れていると言うふうに作中でも表記してます。寵愛者達も化け物揃い。中でも、ある人物だけは段違いの強さを持つので、今後も彼らの活躍を増やしていきます!

怪都の周辺の山脈地帯に属する死の山脈と呼ばれるデスバレーに隠れ棲む妖怪に、幸助達の噂が耳に入る。

雪国のような場所で、如何なる生物も生存環境に適さず、極寒の剣山のように延々と連なる山が聳える。

そんな劣悪な環境下を住処とする集団が町を築いていた。

集団を束ね、集団の頭領でもある者の大半が鬼であり、人間とある程度共生が行われている。


その妖怪の名は、幸助達がまさしく追っている“三妖魔”の一人である『酒呑童子シュテンドウシ』。


“三妖魔”の中でもずば抜けた剣術と幻芸を極め、武芸多彩、戦闘狂、容姿からは想像も付かない凶暴性と残忍性を持つ。

数多の鬼を従え、美女や特異体質の者を多く捕えては配下に加えるか、鬼達の餌にしている。

捕えた者の中には優遇される者もおり、酒呑童子が気に入っては高待遇のもてなしを振る舞う。

気前が良く、彼に認められた者には加護が受けられる。

愛よりかは気に入った基準で見ており、気紛れでその態度は行動に出る。

だがその反面、酒呑童子は非常に冷淡な性格を持っている。

気に入らなければ食らうし、敵であれば慈悲など関係なく滅ぼす。豪傑というかより暴君に近しい。


幸助達の噂を聞き付けたのは、古都に潜む諜報人からの漏洩である。

死の山脈と謳われ、極寒の地であるデスバレーを拠点にする鬼達の住処は、厳しい環境とは裏腹に快適そのものだった。

神隠しや死んだ者が主人である酒呑童子の機嫌を取り繕う為に丹精込めた建物が築かれており、一つの町が出来ていた。初めて来た者は、此処を妖都と勘違いするのも無理はない程の完成度である。

階級制度が厳しく取り締まれており、多くの鬼や人間の中には一度も酒呑童子を拝んだ事がない者もいる。容易な交渉や接触を固く禁じ、酒呑童子や鬼童丸、他の鬼をまとめる四天王に近寄る事すら出来ない。話し掛けるには、それ相当の地位や加護を持つ者でなければならない。安易に触れようならば、打首も厭わない。

酒呑童子に安易に接触が許された者は十名。鬼童丸と四天王の五人の妖怪に加え、酒呑童子から直々に加護を授けられた五人の人間のみ。

その一人に該当する者は、主人である酒呑童子のいる館へ入る。

父様とおさま。只今、古都の密告者から情報を頂きました。ご覧になられますか?」

悠々とした態度で報告をする『鬼童丸キドウマル』。

彼は“三妖魔”の酒呑童子の息子であり、その名声や伝承でいえば“災禍様”の領域を達している。

だが、“災禍様”の強さは妖怪によって天と地の差がある。

鬼童丸では酒呑童子に到底敵わない。

父様と呼ばれた男は襖を開き、姿を晒す。

美男子で長髪で黒髪が粗く逆立ち、目は赤みがかかる程度だが、鬼の目ではない。一見すると体格を除けば人間そのものだ。

やや巨大で、背丈は二メートルの長身である。これは、酒呑童子自らが人間の姿を好む為に擬態している。本来の姿ともなれば、まさに鬼神の如くの妖怪となり、その猛威を振るうだろう。

従える鬼と人間が恐怖に震える程の強さを持つ彼を怒らせれば、たちまち鎮めが必要となる。

「分かっている。妲己が退位した件は熟知している。それを口にするのは守護者を蔑ろにすることになる。それより、玉藻前は見つかったか?」

「いや、それが……」

言葉を濁す鬼童丸に対し、酒呑童子は我慢がならなかった。

「なんだ?まだ手掛かりすら見つからないのか⁉︎」

「は、ははっ!なにぶん最都へ向かった者の連絡が途絶え、一文の文通すら届きませぬ!」

「ぐぬぬ…‼︎やはり大嶽丸の仕業か⁉︎」

「恐らくは……。入る者拒み、出る者は拒まず。最都と思しきその先には大嶽丸が待ち構え、最都には一歩たりとも入れた者はおりません」

「報告はもういい!ったく、この酒呑童子が直々に向かわなければならないと申すのだな?」

酷く荒れた怒りが治らず、すぐさま襖を閉じてしまった。

こうなってしまえば、鬼童丸にはお手上げ状態。

「はぁ……父様は気が短い御方だ。まぁ、酒浸りになるよりかはマシでしょうけど」

特に止める事はせず、後は襖の奥にいる寵愛者達に委ねるしかなかった。

息子である鬼童丸がこの言われようだ。血縁者でもない者にはさぞ厳しい鬼だと誰もが言う。

しかし、その実態は闇に包まれている。




襖の奥で四人の人間は長閑に過ごしていた。

各々が寵愛者である事を存分に利用していた。外で鍛錬する者、命令され全ての情報を傍受する者、ソワソワして犬のように酒呑童子を待つ者、寝ている者。それぞれ順番に名を明かすと、金箱揮たけばこふるい西園寺朱音さいおんじあかね、キュオン=フェアラ、クエント=アダスである。

「おい者共!」

酒呑童子が入るなり、大きな声で彼ら四人を呼ぶ。

最初に寄ってきたのはキュオンであった。

異国出身であるが、国が成立する前にこの世界に渡り、酒呑童子に拾われた。獣のような粗髪に染まる茶色。しかし、その目は髪とは似合わぬ程の綺麗な可愛げのある目をし、纏う装飾は目を背けたくなるような裸体とも捉えられる露出度を誇る色気。

これには理由があり、異能とそれに見合う身体能力を活かせるように、敢えて露出させているのだが、鬼ですら欲情してしまう露出度である。

「はい!酒呑童子様、いかが致しましたか?」

「てめぇははしゃぐな甘犬あまけんが」

犬のような態度で接するキュオンに冷たく揮が言う。

金箱揮。右眼を失い、喉から額にかけて痛ましい傷痕を持つ。額から髪は布で覆われ、髪型は謎で、強面の顔は(ツラ)は豪く風格がある。

侍のような青染の和服が特徴で、両腰には長年研ぎ続けた研磨された名刀を身に付ける。

しかし、彼は鎌倉以前に生まれた立派な武士である。貞信とは経験値は桁違い、その昔、“災禍様”に匹敵する名のない妖怪とそれを従える人間を葬った経験を持つ。

ここまでの実力を隠すのには、この世界のルールがあるからだ。貞信とは違い、揮は自重する慎重な心を持つ。

「クゥーン。揮様は御厳しいわ〜」

「なんでも言いやがれ。酒呑童子様、御見苦しいところをお見せ致しました」

キュオンと自身の悪態を謝罪する。謝る際、彼らは酒呑童子に無意識下でも心臓の髄から恐怖している。

発言一つでも間違えれば無事ではないからだ。

緊張感走る空間で酒呑童子が発した言葉は意外なものだった。

「そんなに怖がる必要はない。余が苛立っていたのは鬼童丸が相変わらずの馬鹿だったからだ。別に貴様らに怒る道理がない」

理性的に話し掛けるその姿は、鬼と思えないほどに穏やかだ。

ここは怒るかと思った四人だが、今日の酒呑童子は機嫌が良いらしい。

緊張が解け、キュオンは安心し切って酒呑童子に豊満な胸を押し付ける。

「酒呑童子様!ここへ来たって事はアタシ達が必要なんですよね⁉︎」

キュオンは男を惑わすように色目を使い、酒呑童子の気を自分に向けさせる。この行動は求愛に近く、心底から惚れている求愛行為である。

「そうだな。貴様らにやって貰う仕事がある。その為に今日は部屋ここへ呼び出した。聞いてくれるな?」

「はい!」

クエントは除き、他の三人は丁寧に座り込む。クエントは相変わらずの態度だが、寝ながらでも外の声が聴こえるという特技を持っている。寝ていてもさほど問題ない。

酒呑童子はその容姿に似合わぬ崩した体勢で話をする。体を横にし、脇息に肘を置く。

「7日後、この地の頭上を『魔女』が通過し、近くの洞窟に身を潜める。その際、奴等が古都へ行くのを手助けしろ」

全員が言葉を失ったように驚く。

何を思って発言しているのか、彼らの理解が追いつかない。

「どうした貴様ら?余の頼み事に信じ難いと顔をして。まさか、頼まれてくれないと言うのか?」

「いやだって……酒呑童子様。あんた様が怪都への侵略をなさっているのは承知しています。それに、幾度なく都市の人間を拐ってこの町を広げてきました。なのに、ここで魔女を見過ごすと言うのですか⁉︎」

揮は真剣に訳を尋ねる。

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