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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
碧落奔走編
141/284

140話 存在意義

疲れて寝ていました。少し投稿時間が遅れましたが、今回で天邪鬼の罪悪と改心を書き切ることが出来ました。


明日は投稿しますが、明後日は休みとなります。2月はところどころ予定があったりするので、逐一報告するようにします。

烏天狗はそれが堪らなく感に触る。他の妖怪も、人間に抑えられない恨みを抱く。

それでも、烏天狗は人間である悟美と紗夜に恨みを吐く事も向ける事もなかった。

烏天狗は感情を昂るが、愛情や深情も育んでいる。人間と過ごした事で、人間らしい父性を得た。

「だがな、己の罪に悲観する貴様に俺は同情しない。人間を理解しているような貴様は人間という種族を本当の意味で理解していないからだ。嘘に塗れた恥を隠す種族?俺にはまったく思えんな。…俺の娘達がいれば会わせてやりたい。あんなに妖怪も人間も隔てなく接する人間はそうは拝めないぞ?」

人間を育て、その性格を知った今、烏天狗が人間に対する恨みは消えていた。

それは女天狗も同じであった。

「ワタクシ達は天逆毎様に懇願し、身寄りのないあの二人を拾いました。天邪鬼、貴方が人間に対する恨みは理解し難くもありません。何故なら、貴方は人間をよく知ろうとしていない。人間の裏ばかりを知り、秋水という憎き人間の存在が更なる不信へと貴方を走らせてしまった。これは、ほかの妖怪も同じと言えるでしょう。人間は人間界ばかりではなく妖界ですらその穢らわしい欲望に染めようと目論んだ。誰の目から見ても許されざる大罪。地獄では生温い畜生…ワタクシも許すのは難しい……。ですが、そんな人間ばかりに囚われてはならないのです。人間は妖怪を勝手に生み出すのではなく、ワタクシ達に大事な事を学ばせてくれる種族なのです。許す必要はないのです。ただ、信じたい人間を信じてあげる事こそが、ワタクシ達に足りない欠片ではないでしょうか?」

聖人のように女天狗は涙ながら訴える。

人間自体を許せるとは考えていない。しかし、悟美達には関係ないこと。それを自らの怒りをぶつけるのは間違っていると諭す。

続けて女天狗は天邪鬼に優しく微笑む。

「天狗に属する者は、最も人間の傍にいた種族。それは誇るべきことでもあります。人間は身勝手に妖怪を創造しますが、それが新たな出会いにも繋がるのです。天狗を敬う者が現れ、神聖な妖怪として崇められたのは誰のお陰です?妖怪が導くとき、誰を導こうと働きますか?当然、種族は決まって人間です。彼ら人間はワタクシ達を頼り、そして善き道を求めようと救いを乞う。妖怪は時に、人間に必要とされるから生まれるのです。貴方も同じです。嘘は人間にとって皮肉で愚かな手段。ですが、偽りばかりの言葉を裏返すと、誰かを傷付けない手段ともなります。人間は必要に嘘を使い、愛する者を安心させたい、救われて欲しいと願い嘘を吐くのです。天逆毎様より生まれたとされるワタクシ達眷属は、人間の感情が具現化したものだと思っております。怒り、悲しみ、笑い、共に分かち合える…これほど人間が近しい事はないのです」

女天狗は気性荒く、天逆毎のように暴力に走る性格を有する。

そんな彼女が母性を持った。訴える心意が真実であると疑えず、天邪鬼自身も感化される。


天邪鬼は二人の言葉に強い憧れを持った。

自ら恨んだこの伝承が馬鹿らしくなったのだ。

しかし、それで気持ちが晴れるわけでもなく、完全に受け入れられる筈もない。

「し、しかしだ!たとえ、人間と近い儂でも心許せる人間など見つけられる筈もなかろう?妖怪は人間から生まれ、人間と共に滅ぶのが掟だ。仮に、もし貴様ら妖怪の存在が来世で消失した場合、その時は人間に恨みを抱くか?」

伝承は人間から忘れ去られると消える。それは妖怪の消失も意味する。

烏天狗と女天狗は顔を合わせ、自身の抱いている今の心境を語る。

「俺は怖いな。人間に忘れ去られた妖怪などごまんといる。その中の一人に俺はいずれなるだろう。もしかしたら、この世界が滅ぶ前に妖怪が滅ぶかも知れん。人間が妖怪を忘れれば、伝承の意味がなくなり、概念自体が消え、俺らは星の屑のように当たり前になるかもな。だが、それを恐れてまで人間を拒絶はしたくはない!俺は最期まで人間を見ていたいと今は思う!」

「ワタクシも同じです。天より人間に記された我々が、伝承消失を恐れるのは無理もありません。ですが、人間と同様の存在のワタクシはそれを受け入れます。来世で消える定めでも、今の我々をよく理解する人間が今傍にいるのです。あの二人に親のように思って貰えた喜びが、消滅する恐怖に勝る。未来を見据え怯えるより、ワタクシは今を受け入れたいのです!それに天邪鬼、もう既に心許した人間がいるのでは?」

双方の意思はどちらも人間に必要とされたい。それは揺るがぬ意思であり、天邪鬼にこれ以上の反論の余地はない。


天邪鬼は二人の話しを受け入れ、自ら考える時間を得た。


人間に恨みを抱く己ではなく、伝承を作った人間に深い感謝を向ける。

「…そうだな。儂は忘れておったわ。どうして人間の裏を見ようとばかり考えていただろうか?秋水といい名妓といいあの小僧といい、まったくの別物だ。あの小僧は裏がない無垢な人間。裏ばかりを見てきた儂は、本質だと思った裏に囚われ、本筋である表を見てこなかった。ならば、儂は人間の裏を知らぬ者を助けるのが‼︎」

己を知り、それを恥じてでも自らの過ちに気付いた。天邪鬼は強い意思を持って、烏天狗と女天狗の言葉を受け入れ、自らの意思で來嘛羅に懇願する。

土下座をし、その意思を伝える。

「來嘛羅様!儂は、罪滅ぼしで松下幸助を助けたいわけではございません!妖怪を救おうとする姿と意思が純粋過ぎるからです。他の人間には見ない妖怪への凄まじい純粋な情、まさに生きていなければならない希望です!ここで死ぬには妖界における多大な被害となる。儂はあの人間の助力となって助けたい所存!どうか、儂の我儘を押し通して下さいませ‼︎」

天邪鬼の後に続き、天逆毎が席を立ち上がり、頭を深く下げた。

「妾からも頼む。最初は、危険人物としてこの手中に収めたかった人間であったが、天邪鬼の強き感情、そして、松下幸助の妖怪への熱い情を知った。これほど妖怪を救おうと尽力した人間は過去に例がない。悲惨な“妖怪大戦争”でさえ、そんな人間は訪れなかったというのに…。この者を松下幸助へ遣わせてくれないか?」

天逆毎が接触すらしていない幸助に加担しようとする。

当初から、天逆毎は幸助の可能性に目を付けていた。未知の力と“ある禁忌タブー”を破るその未知数に漬け込もうとし、良くない悪巧みを頭に巡らせていた。

しかし、そこへ阻むように懇願したのが天邪鬼であった。

天邪鬼の懇願に戸惑い、その真意を聞いたことで、天逆毎は自らの企みを捨てた。

自らの眷属の願いの為に計画を捨て、來嘛羅に出向いたその覚悟は賞賛に値する。

まるで、その一部始終を見てきたかのように、來嘛羅は満足そうに微笑する。

來嘛羅はこの場で良い返事を与える。

「天邪鬼、“災禍様”におる天逆毎よ。其方らの申し出、快く受け入れよう。幸助殿に助力するという件、妾が此処で享受した事を宣言する」

「ありがたきお言葉…感謝致します」

「…感謝するぞ」

天邪鬼は心から礼を言い、天逆毎は一言で礼を伝えた。

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