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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
古都・妖狐救済編
138/284

137話 拒否そして新たな強敵

3章最終話です!

明日、pixivで投稿するので今年は最期とします‼︎申し訳ございません。卒業論文を作る上で研究が必須なので仕方がなく……。

1月20日にpixivの転すら二次創作の猫じゃらしで投稿します!


では、こちらではpixivの方からまた連絡いたします!



良いお年を。

「幸助さん。わたくしめが下す条件をここで呑み込み、是非とも怪都に足を運んで下さい。食料提供、移動手段、護衛なども幾らでも貸し与えます。その代わり、あの四人の方々は提供したものが消失する度に魂を頂戴させて頂きます。さあ…わたくしめと『契り』を…」

俺に優しく手を差し伸べてくる。

その手は悪魔の誘いのように、俺の手を待っている。

この手を握れば莫大な支援を約束される。だが、その代償として俺の雪姫達を売る事を意味する。

「……」

「あなたには期待しています。その加護その異能、間違いなく幸助さんは全てを果たしましょう。この手を握り、“三妖魔”の方々を捕縛し、全て方をつければ済む話。如何ですか?他人の命だけが代償として払うのみ。あなたにとっては所詮は護衛みたいなものでしょう?」

褒姒の従える配下を頼るのは申し分ない。俺よりも強者だろうし。

だが、俺は承諾しなかった。。

「…悪い。俺は仲間は売れねえよ。あいつらは來嘛羅が推薦してくれた。だから俺が判断する権利なんかねえんだ」

來嘛羅に託された二人と俺を想って付いてきてくれた二人。俺には必要な奴らだ。

だから対価にしていい筈がないのだ。

そんな権利、俺には……。

しかし、そんな俺の心を見透かすように微笑む。

「では守れば良くないでしょうか?」

褒姒は優しく言う。

「守る、だと?」

「そうです。幸助さんがわたくしめが与えるものを欠ける事なく返上すれば良いのです。さすれば、四人は何事もなく生きていられます。あなたが強く…誰にも負けない人間として全員を守れば良いのです」

今度は天使の言葉が投げられた。

俺は無理だと言おうとしたが、それも良いのではと愚かにも思ってしまった。

強さを保証しているような発言だし、俺なら出来るのではと。

「俺が強く?」

「はい。あなたの異能は真なる強さが秘められている。だからこそ、玉藻前に目を付けられたのです。その力を信じ、全てを守り切る覚悟をすれば何か変わるかも…知れませんよ?」

期待してくれている。しかも、『褒姒ホウジ』が俺を試してくれている。その証拠に、今だ手を差し伸べてくれている。

手を握れば認められ、俺は褒姒に気に入られる。

好きな妖怪に認められることが嬉しかった俺ならば、この手を握ろうとしただろう。


俺は認められたい。


それなら、この褒姒との『契り』も俺の強さのきっかけになるかも知れねえんだ。

悪魔と天使の両面を持つ彼女の言葉を信じかけていた。


だが、俺は踏み留まる。

「……」

「どうしたのです?この手を握ってくださらないのですか?」

俺は知っていた。なのに、何故、褒姒を信用しようとしているのかに疑問を抱く。

無名が言っていた。妖怪は気紛れだと。

褒姒が俺を気紛れに魅入ったに過ぎない。そして、俺をその気にさせる為に本音を晒したのもまた気紛れ。

褒姒ホウジ』という妖怪の性根を知らない。それで済ませたら痛い目をみる。

俺は思い留まる。

「やめとく。あんたの言葉と気遣いはありがとな。でもこの条件つかむ訳にはいかない。勝手に約束したら怒る奴がいるしな」

「それは……雪姫様の存在でしょうか?」

「うっ…流石は九尾狐に属する勘の鋭さ。俺が苦いところをついてくるよな?」

來嘛羅と同じだから、当然俺の思考なんか読める。

ここまで来ておいて、俺が褒姒の甘い誘いに乗らないのは雪姫の存在がある。

「分かります。あの方は元々『雪女ユキオンナ』でしたので。しかし、自ら不利な縛りとなる『契り』を結んだのは如何なるものか…」

顔には出ないが、あからさまに呆れられた雰囲気を醸す褒姒。

よく考えたら、『契り』は褒姒と結べないことを後に思い出す。

「ちょっとあいつが心配性だから俺が無理やり、な?」

まあ、雪姫が躊躇っていた姿を見て思わずなんだがな。

褒姒からすれば、俺が恐るべきは目の前の妖怪だと思うことだろう。

何故なら、褒姒は雪姫より強い。

妖怪伝承的には伝承や雪姫の動きを見れば上かもしれないが、九尾狐の眷属は大抵が妖術を操る術師みたいな種族だしな。

來嘛羅が容易に召喚術や多彩な妖術を操るかぎり、妲己や褒姒も似たことが出来ると考えるべき。

「恐ろしいお人です。まさか、わたくしめの異能を二度も受けても尚、雪姫様に気が向いていようとは。邪念に匹敵する精神力」

褒めても蔑んでもない中間の評価。

「それは…褒めてんのか?」

「そうですね、幸助さんの立場で考えれば評価していると思ってください。あなたの欲は清く純粋、故に隠し事はない。心地がいいと言えば善に該当します」

ただ、褒姒がそれで話を止めるというのはない。

漸く手を引っ込め、褒姒は残念そうに裾で手を隠す。

続けて褒姒が俺に忠告するように言う。

「…ですが、はらわたを曝け出すような行為は妖怪に好かれません。隠し事をするなとは言いませんが、時には嘘や偽りは大切です。その心得はありますか?」

唆し、脅すだけにみえる褒姒であるが、本当に悪意だけをみせるのではなかった。守護者たる配慮というものが感じられる。

「残念ながら妖怪に嘘が吐けねえんだ」

「それは残念」

俺の呆れた回答に心ないような口調で納得する褒姒。

「僻むなよ。俺の好きな妖怪を傷付けたいと考えたくないだけだ。別に、殺さないで妲己みたいに仲良く出来るなら嘘なんか要らないだろ」

褒姒の忠告を無視するように、俺の意思を伝えた。

しかし、褒姒の口からはまたもや忠告が告げられる。

「妖怪を侮り過ぎております。幸助さんはこれまで『雪女ユキオンナ』・『すねこすり』・『九尾狐キュウビキツネ』・『妲己ダッキ』・『無名ムメイ』・『玉藻前タマモノマエ』に認められ、加護または愛を向けられております。これは著しく妖界に衝撃を醸す事態です。妖術に長け、そして“放浪者”の烙印。今は都合よく保護されていますが、近いうちに災いがあなたを襲うこと間違いないでしょう」

真剣な顔付き。感情の上下はなく、何処となく気味の悪い話し方。

「なんだよ…急に改めちまって」

嫌々も、俺は真剣に今の状況を呑み込もうとした。

「敵心を向ける敵だけではなく、身内にも気を付けることも申しておきます」

「……は?」

突然、鉄砲に撃たれた不意打ちが褒姒が言った。

思わず、黙った後に情けなく聞き返した。

褒姒は薄く笑い、立ち去る際、半目で嘲笑うように言い残す。

「わたしめは人をよく観察しております。故に、幸助さんの未来も僅かばかりですが想定出来ます。なので教えて差し上げます。あなたは真っ当な人生を今後歩めない。そして、その原因、最初に心を捧げた妖怪が齎すでしょう。ですが……フフッ、あなたには幸せなことではありませんか?妖怪からの嫉妬は寧ろご褒美なのでは?その代償は言うまでもありませんが」

「………」

滑稽とばかりに馬鹿にし、褒姒は俺の何を視たのだろうか。その心意は理解するのに相手が悪かった。


恩人と思った褒姒に無理やり命のやり取りを迫られ、俺を嘲笑い去った彼女に情が薄れていくのだけが強く、苛立ちだけが後味悪く残った。

信用したくない。そんな感情を抱いてしまった。

俺は、褒姒が苦手になった。そして、褒姒を悪女としか思わなくなった。


その後、褒姒にお礼を言いそびれ、何も伝えることなく俺は古都を立ち去った。







平穏な妖都、幸助達の居る古都の狭間で事態は動く。

暗躍する者ではなく、飢えに侵された妖怪が人間を多く喰らう。


聖域陵サンクチュアリでそれは起きた。

ちょうど、幸助達が入った森の一片の何処かで殺戮が起きた。


人間である者達は危機感に武器を持つ。

「侵入者‼︎侵入者だ‼︎妖怪が森へ入ったぞーーー‼︎」

警告を鳴らす者。すぐさま異変に足を運ぶ者達は準備をする。

「馬鹿な‼︎この森は妖怪が立ち入れないんだぞ⁉︎」

妖怪を禁ずる神聖な森。そこに一体の妖怪が侵入してきたのだ。

森に入ってから数十人は食い散らかし、幸助に閉じ込められた者達も余さず食らった。

妖怪は血を啜るように殺した人間を食する。その光景は悍ましく、他者の命を糧としか思えない扱いをする。

人からすれば悍ましい光景だ。当然、妖怪を見た事のない者達が混じる集団の中には耐え切れず嘔吐する者さえいる。

お構いなしに聖域陵に入り、肉片を貪る妖怪が嘲笑う。

「おい人間…何を驚いている?この森に立ち入ってはならないと看板はなかったぜ?」

妖怪が入ることでさえ危険な聖域陵の奥地に現れたことで、そこに住んでいた人間達は戸惑う。

武器を持ち、人々は一体の妖怪を討伐に命を賭ける。

「チクショォッ‼︎鬼の妖怪がぁ‼︎俺らの棲家を荒らすな曲者がーーー‼︎」

この者達は団結力があった。自身の安全地帯を脅かす存在は排除する。一致団結した心は強いのだと、妖怪に思い知らせる。

少なくとも、加護を持たない人間は団結するしか妖怪に勝てない。


聖域陵において妖怪は弱者となる。妖界における人間が優位に立てる場所。

それに、今回はたかが伝承のない鬼の妖怪。団結さえすれば、彼らに勝機はあると思われた。


「ヒャッハァー‼︎人間という弱者風情がしゃしゃるな!お前らは俺の餌でしかないんだ。弱き弱者は強者の糧となって腹に入れ!」

鬼は武器を持たず、その武器は己の肉体。

鬼が振るった拳は容易く頭蓋骨を粉砕した。

その直後、背後にいた人間数名も同じく頭蓋骨が吹き飛んだ。

空気圧縮による空拳。ただそれだけだ。

理不尽な強さに腰が抜ける。

「どうしたっ⁉︎この俺を討伐するんじゃないのか‼︎下手れた種族は強者に跪くか⁉︎」

鬼の殺意漲る蓮撃。鬼の怪力剛力。鬼としての残忍さと無慈悲が襲う。

立ち向かう者は皆が肉片に変わり、逃げようとした者は容赦なく肉壁のように潰れた。


悲鳴が飛び交い、誰もが死に物狂いで抵抗した。


だが、死ぬ前に彼らが思い出せたものは、鬼の異様な笑いと恐怖で埋められてしまった。

この世界に居ることを後悔し、彼らは地獄へと送られた。


数百名の人間が居た集団は、一人残らず仕留められた。

その鬼は特別な妖怪だった。

鬼は異能を獲得していた。

元々混妖だった妖怪が異能を獲得するケースは少なく、伝承を持つ妖怪でも“災禍様”に至らなければ獲得していないのが普通である。

この鬼は異能を獲得してしまったのだ。自己欲求による強い願望がかれに力を与えたのだ。

名はある。しかし、それは妖怪名ではない。

気付いたらそう名乗っていたに過ぎない。その名だけは覚えていた。誰かに刻まれたものだと鬼は認識している。

「不味い…。弱者の人間ニクの味は貧相なものばかりだな。男も不味い…女も不味い…赤子も食えたものではない」

地面に散らばる肉を貪り、鬼は残さずに食らう。

人間の血肉は妖怪の糧になる。生気漲る人間は、鬼にとってはご馳走でしかない。

「ふぅ…不味かった。だがこれで、俺も“災禍様”とやらを更に喰らえる。人間を多く喰らえば喰らうほど力を得ると本能が言っていたが、本物だったな。これは素晴らしい…素晴らしいぞ!」


伝承による地位の向上以外に方法が存在する。


至極困難であり、大抵の妖怪は至るに時間を要する。

“災禍様”に至る条件。

それは人間を食った数が要となる。

名のない妖怪が“災禍様”に至るには、人間を10万食らわなければならない。

人間は大抵が四大都市にしか存在しない。荒野や森、地平線のような地帯から人間をかき集めるのは至難の業。それぞれの都市には守護者が構え、不届き者に裁きを下す。荒野や無法地帯では人間を見つけることすら力無い彼が達成するには、長き年月と貧欲さ、運がなければ生き残れない。

しかし、鬼は初めて成し遂げてしまった。

数百年掛けて、鬼はこの世界に名を刻んだ。

「ヒャハハハッ!力が漲る…漲るぞ‼︎この世界の最強格に入ったぞ!最強の人間をさらに食えばかくなる上は“災禍様”も喰らってやる!手始めに、新城悟美…松下幸助を食らって糧としよう‼︎ヤツら…古都に居るようだしなぁ?」

勘は鋭く、幸助達が居るであろう方向に鬼の目は向けられる。

その名は『オダマキ』。妖界にその名を刻み、今後の災禍として幸助達の強敵となる。

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