123話 領域I
今日は妖怪の領域について書いてます。実は会話を挟もうかと悩みましたが、文章だけの読みはキツイので、会話も付け加えました。
個人的な事情になりますが、今大阪に来てます!
就職の件で事情出来ており、観光みたいに楽しんでます!お好み焼きと串カツは美味しいですね!
基本的に、妖怪には認知度や伝承の優劣で領域的な物がある。
「ひとつは“妖生”だ。人間界および妖界でよく誕生する伝承の小さい妖怪がいてな。大体は弱者だから放っておいて問題ない」
「もしかして妖都や古都にいる住民みたいな奴らか?」
「間違ってはないな。基本、弱い奴は安全な場所にいたがる習性があるからな」
まず、伝承の不明な妖怪や名を持たない妖怪は“妖生”と呼ばれ、基本的に単体で倒せるレベル。
「で?人を加えるレベルは何処からなんだ?」
「ふむ…“無妖”は害はないが、貴様の飼ってるすねこすりは“害妖”だ。ソイツなら人間を時間掛けて殺すなど可能だからな」
「えっ⁉︎」
「貴様、よく飼っておいて吸い尽くされなかったな?ひと月あれば天に召されていただろうに」
なんか同情された。
いやいや、すね子が俺に懐いているから問題ないだろ。
伝承は持つものの、人に危害がない妖怪を“無妖”と呼ばれている。
“無妖”と肩を並べ、人間に何かしら危害を与えるのを“害妖”。この“害妖”は死に至らずとも、不運や生気を奪ったりする妖怪だ。ちなみに、『すねこすい』は少し特別なようで、“害妖”の領域を超えるという。
ここまでなら、能力なしで倒せる妖怪。
「怖え……でも可愛いし大丈夫だろ?」
「やはり変わったヤツめ。だが、ここからはちと安くみると痛い目を見るぞ?貴様がこれまで出会った名の知れた妖怪は大抵ここから属している。強さはあるが領域はそれほど大差はないと思え」
妲己の態度が改められる。というか、なんか上機嫌にも思えてきた。
これ以降は能力があっても倒せない可能性があると言う。
「この世界の妖怪の総称は妖怪だが、“妖怪”という領域があってな。まあなんだ?一言言えば、ヤツらは知性を持ち始めた伝承妖怪だ。明確な知性を持ち、簡単に人を食い殺すなど造作もない」
「知性って…すね子は該当しないのか?」
「その猫みたいな犬が言葉が話せないだろ?言語を習得出来ぬ妖怪は“妖怪”とは言わんぞ。時偶に言葉を発さずとも“災禍様”ぐらいなら現れるんだかな」
なるほど、言語っていうか意思疎通が出来ない妖怪はレベル低いのか。
ちょっと残念に思ったが、すね子はそれぐらいなのか。
“妖怪”。基本的に人間を殺める伝承や人間を騙す一般的に知られる妖怪がここに該当する。『骨食い』・『送り犬』・『尻目』・『鎌鼬』などが当て嵌まる。名のある妖怪が力を失った場合、基本的にこの部類に格下げとなる。
「力を失えば、神の伝承を除いた妖怪は一度ここまで堕ちる。だが、伝承さえあれば問題ないがな。“妖怪”と肩を並べる領域のヤツは多くてな。面倒なことに、三つもある」
「三つ?なんだよそれ?」
俺が聞くと素直に口を聞いてくれた。
「貴様の戯言に付き合う興が乗ったからな。最後まで聞かなかったら食べてやるぐらいには気分がいいぞ!」
「冗談だよな…?」
食べることが機嫌がいいって可笑しい気がするんだが。
冗談混じりだと信じ、話に集中する。
「三種族…“妖怪”と同レベルが自然を操る精霊のような“自然妖怪”。人間のあらゆる特性を心得る“人間妖怪”。怪奇現象や建物に魂を宿す“怪奇妖怪”の三種族がおる」
「“妖怪”と何処が違うんだ?」
当然の質問を投げた。違いが分からないままだと怖いしな。
妲己は溜息を吐いて呆れたように顔に手を付ける。
「区別付かないのか?全く…仕方がないヤツだ。“妖怪”は人間の姿をせず、動物の姿で本能のまま生きる妖怪で、他の三種族が人間に何かしら近しい容姿と理性がある妖怪だ。これで良いか?」
あ…面倒臭いという嫌々な態度を取られた。
“自然妖怪”・“人間妖怪”・“怪奇妖怪”。これは自然と人間のどちらか又は両方の面を司る妖怪が該当し、『烏天狗』・『女天狗』・『天邪鬼』・『エルフ』・『座敷わらし』が言われているそうだ。この域に達している妖怪であれば、異能を持つ妖怪も稀に現れると言う。ここまでなら、人間に対してまだ友好的な妖怪だと言う。
「それとだな。先程の四種族とは他に呪いを操る妖怪が“怨妖”だ。ヤツらは四種族のいずれかにも属さず、人間や妖怪に呪いというもので呪殺が出来る。背後でも突かれたら人間なら呪い殺されるだろう」
「人を呪い殺すって……まさか、牛鬼とかくびれ鬼とかか?」
「そうだな。牛鬼はこの前までは“災禍様”だったんだがな、どうやら秋水という人間に殺されて今はいないがな」
「あいつかよ…!地獄行ったらぶん殴ってやる!」
「いやいや、貴様は大馬鹿か?あんな生物虐殺を快楽とした人間に怒りを向けてもどうもならんだろ?」
妲己が秋水を知っているのは驚きだ。
「あんたが秋水知ってんのか⁉︎」
「関係ないだろ?あんな下種、消えて清清したぞ」
「まあそうだな。俺もあんな奴が消えてくれてホッとしてる」
“怨妖”。憑依する伝承や告げ口によって人間に災いをもたらす。非常に厄介なのが、姿を容易く見せないという点だ。『くびれ鬼』・『ザン』・『魃』・『幽霊船』・『牛鬼』など。ここの域になると、人間に対して温情する者と食い殺すと言った極端な両面を持つ。
「同情はせぬが、あんな下種は地獄でさぞ苦しんでるだろうな。さて、そこに居る雪女の領域が知りたいだろ?」
妲己が雪姫に指を指す。すると、雪姫は顔を背け地面を睨んでいた。
「なあ雪姫?そんなに自分の話、嫌なのか?」
「っ…」
雪姫が相当嫌がるってことは、このレベルに何かあるかも知れない。
興味本位で俺は知りたくなった。
「妲己。雪姫やあんた、他の災禍様について教えてくれるか?」
「良いだろう。先程告げた領域は可愛いものだ。だが、これら先言う領域を持つ妖怪は絶対なる強者。故に、人間如きが叶う相手ではないと思うんだな?憶えておけ」
「…分かった」
怖い気持ちはあるが、全てを聞く価値はある。聞かないで逃げるよりかは、その強さを知って理解した方が為になる。
そんな淡い気持ちで聞こうとした俺が間違いだった。
「人間の負の感情や死と直結すると恐れられた妖怪が“災厄”だ。そこの雪女が一番例え易いだろう。雪という季節に貴様は何を思う?」
突然の質問。俺は雪に対しての感情を言う。
「綺麗で冷たい…けど、雪の遭難事故や雪崩による被害がよくニュースで見たことがある」
「そうだろうな。雪など人間が抵抗出来るものではない。幾ら対策をしたところで人間の負の要素である恐怖が消えない概念を“厄災”と言うのだ。『魔女』や『鬼』に連なる者、悪魔や怨恨と言った概念もこれら“災厄”に属す」
「それは災害や人災、人の嫌みから生まれた妖怪だってことか?」
俺は横にいる雪姫を見ながら話を続ける。話が進む度に、雪姫から強い怒りを感じた。
分かっているが今回は無視する。
「伝承の他に、最も恐ろしいのが人間が向ける畏怖の念だ。それらが集合体となって妖怪を作り妖界へ生み堕とす。土地神、自縛神、自然、人間の怨念が名を得たのがそう呼ばれる。個人の名ではなく、妖怪だから幾分かは理性や思考を持ち合わせてはいるがな」
“厄災”。あらゆる存在にも災いを与え、都市や町に害をなす悪妖怪として恐れられる。その強さは人間が挑んでも歯が立たず、強力な加護でさえ無意味な理不尽さを持つ。悪魔に属する妖怪や集団で集まると脅威を増す妖怪を指す。『マモン』・『がしゃどくろ』・『土蜘蛛』・『魔女』・『キョンシー』がその妖怪の一部だとのことだ。
この中に、伝承強い妖怪も属する事があり、『雪女』がその該当者。
「そう…なのか」
「だが安心しろ。そこの雪女は名を得て“災厄”から解放されている。今はワレとの狭間に属していると思って良い」
「狭間って…」
「もっとも、その女は妖精というくだらない種族になって領域が測れないで困ってるがな。仮に純妖であれば“災禍様”間違いないんだが…」
『雪女』から『雪姫』となった今、強さは少し上らしい……とのことだ。
「その妖精って他にいるのか?」
「知らんな。『仙女』と同じなら“自然妖怪”だが、名ではなく種族であると判別は出来ないな」
妖怪と妖精の違い。それを聞こうとしたが、妲己は知らないと首を横に振る。
俺が名付けして妖怪名を変えてしまったことに罪悪感が襲う。
聞かなきゃ良かったと、雪姫に心の中で謝罪した。
名を受けたら妖怪の種族って人間になるよな?なのに、俺の場合は妖精という謎の種族に変化する。
「そう言えば、すね子と來嘛羅も進化してるのか?」
「ワレに聞くな!直接聞け」
拗ねたように怒った。
「いや、無理なんだけど。すね子は喋らないし、來嘛羅との接触も会話も禁じられているしな。“放浪者”という烙印がある限り…」
俺も拗ねたい。
“放浪者”がなければ今頃は妖都で過ごせたのにな。
はぁ……初めて会えた好きな人と喋れないって、こんなに苛立つ気持ちなんだな。
心の中で、俺は溜息を吐いた。




