表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖界放浪記  作者: 善童のぶ
古都・妖狐救済編
113/281

112話 妲己の苦しみ

昨日はすいませんでした。

物語を作成する上で、修正する箇所があまりに多く、手が付けられない状態に陥ってました。1日掛かってしまい、昨日は投稿出来ませんでした。


今度、お詫びですが、10月中に妖界放浪記のキャラクターイラスト描いてみようかと思ってます。勝手な押し付けのようですが、やはりある程度キャラの絵があった方が想像しやすいかと思いますので……。絵は下手くそですが、下手くそなりに描こうと思います。

この物語自体が好きなので。

妲己を理解してあげられるかは俺にかかっている。

俺は妲己をどう思うか。『九尾狐キュウビキツネ』の伝承を全て調べ尽くした俺に委ねられている。


暴れる妲己に俺は問いかける。

「おい、妲己‼︎俺の声が聞こえるか⁉︎」

耳に向け、大きな声で嫌というぐらいで訴える。

返事は返ってこない。ただ痛ましい雄叫びが返ってくるだけ。

「ギャアァアアアーーーッッ‼︎」

「目を覚ましてくれ‼︎あんたは強い!そんな怨念に負けんじゃねえよ‼︎」

目醒めるどころか、ますます凶暴化する妲己。

俺は妲己の毛を凝視する。

不味いな…。妲己の身体中が怨念に蝕まれている。

絡み付き、根が生えたように侵食していた。それが妲己の肉体を更なる『九尾狐キュウビキツネ』へと変えようとしている。

侵食度だけでも驚いたが、問題はその数だった。狐毛こもうに絡まっている黒いのは生きているような怨念。それが足の付け根から頭の頭部まで犇く。百や千という数ではない。それを超える人の嘆きが聞こえてくるようだ。

肉を抉り、再生した筈の損傷部から体内へ入り込む。その痛みは激痛以上の耐え難い痛みに違いない。

妲己は意識を失っても尚、肉体を攻撃する雪姫達を払い、痛みに叫び、自らの肉体に自傷を繰り返す。

こんなものが妲己を苦しめているなんて……クソッ‼︎

幾ら妲己が人を食べたからって、こんなに恨み持つ奴らがいるのかよ⁉︎

いや、そうじゃない。

自らの嘆き。

憎悪を抱く怨念。

美貌への自傷。

人間に対する異常な殺意。

これが発する妲己の感情。それを結び付ける。

俺は理解した。


これが妲己に与えられた罰の正体なんだ。


人間が妖怪の伝承を被らされ、それに狂わされた彼女が人を食い散らかした。ただでさえ重ねた罪が多いのに『九尾狐キュウビキツネ』の伝承を与えられた。

単なる人間が『九尾狐キュウビキツネ』に体を奪われ、悪行をあたかも『妲己ダッキ』だと伝承は語り継いだ。

それが、『妲己ダッキ』という人物に下された天罰。

望まずして妖怪に至り、人としての人道を踏み躙られた過去を持ち、本当の人間性を失った。

それが事実なら……。


俺は結論に導き出した。

だから助けるさ。

「悪いな妲己。もうちょい辛抱してろな?」

俺は【絶無】を抜いた。

なに…俺が妲己に刃を通すほど最低な事はしない。ただ、この怨念に向けただけだ。


俺が刀身をチラつかせると、怨念は俺へ向けて集まってきた。

その時、俺はこいつらの声を聞いた。

『コォロスなぁー‼︎この女にエイ遠を苦しませろぉ‼︎』

妲己を苦しませろと言う怨念。

『家族のかきゃき…死んでもシナセないぃ!』

強い憎悪で訴える怨念。

『人間…じゃない。ヨウ…怪だぁ!ソイツ…堕ちろ⁉︎』

否定する怨念。

奴らは殺された亡者だろうか。

妲己に殺されたのを執拗に恨む。そして、妲己を苦しませている。


呪いとは、名ばかりの恨み。人が人を呪う。人間が生み出した負の産物だと、俺は貶す。

つくづく思うことだ。

「呪いって勝手だよな?生きてる奴を恨むんじゃねえよ。妲己が一生懸命自分に抗ってるのに苦しませるな!」

俺も人のことを言えないな。一回死者に成り下がってるんだから。

『オマエェ⁉︎同じ臭い⁉︎死者の臭いだぁ⁉︎』

「うるせえよ。妲己を自由にしろ。離れないんだったら……」

【絶無】の効果は把握している。

俺の意思に呼応し、俺が望む力を貸してくれる。

俺は刀身に紗夜の【退魔の剣】と同じ陰陽術を真似た効果を付与する。そう願うだけで、【絶無】は俺に力をくれる。

悪霊を退散する最恐の亡者特効の効果で、妲己に一切傷を負わせず、怨念だけを祓う。

妲己を俺は救う。そう雪姫達と当初から考えていた案を叶える為に意思を込めて……。

【絶無】を妲己の頭部に刺す。

刺した箇所に傷は与えず、刺した所から展開して退魔の効果が広まる。

そこへ、俺は刀身に生気を注ぐ。

「二度と妲己を蝕むな怨霊!俺の浄化を持ってあの世へ行け!『浄霊術じょうれいじゅつ:業霊破邪ゴウレイジャハ』‼︎」

邪を祓う浄霊術を俺は込めた。

俺は陰陽術が嫌いだ。アレは妖怪を痛めける。配慮の欠片もない。

この世界にもあったのは驚いたが、紗夜の攻撃を見てキレそうだった。あそこまで痛ぶる術なんか要らない。


俺が欲しいのは圧倒的な力なんかじゃない。人を屈服させる力なんかじゃない。


好きな妖怪を救えるすべが欲しいんだ。


能力が《名》で助かった。名前を刻み、その効力を向上させる。その対象に、【絶無】は含まれている。

この【絶無】を使えば、妲己を蝕む怨念を絶ち、無かったことにする。

この力が本物なら、俺の意思に応えてくれ‼︎

願うと、眩い光が刀身を輝かせる。

妲己の中にありったけの力を体内に流し込み、内に侵食した怨念を祓う。生気は霊力の言い換えで、妖魔を祓う浄霊作用もある筈だ。陰陽術ではなく除霊術ならば、妲己を傷付けずに済むだろう。

それでも足りない。妲己の妖力自体は自傷と負傷による再生、怨念に食われた影響で既に枯渇してるかも知れない。

ここからが正念場だ。

加護を受けていない妲己へ生気を注ぐのに危険リスクはないのか?

だが幸いなことに、俺の中に妖力が混ざっている。

しかし、考えている暇はない。俺の中にある生気と妖力を注ぐことで取り戻せるなら……。

【絶無】から伝え、俺の生気と妖力を妲己と融合させ、怨念を祓うと共に妲己の無事に賭けるしかなかった。

注ぐ間、俺の身に浄化を拒もうとする怨念が纏わりつく。

声にはならないが、その声は苦しそうに悶え、悲鳴すら聞こえる。

しかし、それも長くは続かない。余程効いているのか、徐々に怨念は霧が晴れるように消えていく。


安心する事はできない。問題は、妲己の肉体が妖狐となっている点だ。

俺の全てを持ったとしても、妲己の妖力は回復しない。“災禍様”ということだけあって、俺の生気と妖力は掃除機のように吸い込まれていく。


………。


……。


…。





力を使い果たした。


もうこれで終わりだ。妲己が正気に戻らなければ、俺は真っ先に殺されるだろう。


そう思った瞬間、妲己を刺した【絶無】の刀身が空間内を烈しく照らした。


目が眩み、俺は妲己の上で膝を付いた。

時間としたら一瞬だった。

だが、俺にはその感覚は訪れなかった。

「っ⁉︎これは⁉︎」

眩く光の中で、俺は妲己の真実(これまで)を見た……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ