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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
古都・妖狐救済編
110/277

109話 玉藻前

ここでとうとう三妖魔の玉藻前の登場です。皆さんは予想通りだったでしょうか?


滅茶苦茶好きな容姿に設定しているので、自分の玉藻前への入れ込み具合が分かるかと思います。


そして謎が深まる。この状況、これは一体なんなのか?


明日は妖界放浪記・長編を投稿します。ですが、夜勤明けで投稿するので、大分遅くになるかと思います。

妲己の気配を『九尾狐キュウビキツネ』達は感知する。


妲己に命じられ、ひたすら待機する褒姒は、この気配に悪寒を催す。

「妲己様…なりません。貴女様はその姿を一番認めなかった筈……。そのお姿になれば、貴女様は『九尾狐キュウビキツネ』に侵食されてしまいます!」

褒姒は妲己が『妖怪万象ヨウカイバンショウ』を解放するところを今まで一度も見たことがない。それ故、今の状況を呑み込めていない。

妲己が人間を殺める為に『九尾狐キュウビキツネ』の力を使う。

人間を嫌う以上に、妲己は『九尾狐キュウビキツネ』を心底から拒絶していた。

それが分かっているからこそ、無表情の褒姒は状況が思わしくないと見た。

褒姒は初めて顔に人間らしさが宿る。

「妲己様。どうか、『九尾狐キュウビキツネ』に取り込まれないで下さい。あと…幸助さん。妲己様の目を覚させて下さいませ」

手を合わせ、妲己の無事を祈る。そして、幸助に救済を求める。

その願いは、果たして………。




來嘛羅も感じる。隔絶された空間の中で妲己の苦痛を感じ取る。

「ほう…力を解放してしまったか、妲己。拒んだ力を使ったその代償は計り知れぬ。さて、幸助殿よ、妾の願いを叶えてくれるかの?九尾狐の怨毒えんどく、お主がどう断ち切ってくれるかの」

來嘛羅はこの状況を見届ける。『千里眼』で幸助を通して見ており、この状況に至るまでを全て目に通した。

手助けはできない。だが、幸助を導く為ならば、閻魔大王すらも欺ける。

幸助の異能を唯一知る來嘛羅。その目に、幸助の勇姿を焼き付ける。

「7年後、この世界は混沌に至る。此処でお主が取る行動が、後に妾達の命運を分けよう!お主の妖怪への純愛とやらをみせて貰おう!」

來嘛羅は幸助に聞こえぬ意思を口にした。

そして、來嘛羅が言い放った“7年後”とは一体………。







都市を中心に、現代の世界を模った都市が存在する。

日本風、東洋風を思わせる建物が聳え立ち、怪奇的な構造の建造物が都市を支配する。

独特な世界観を思わせ、その建物の下で人々が雑踏する。


最都は奇妙なルールで縛られている。


妖怪が人間を襲わない。また、人間が妖怪を害さない。

妖怪が人間を虐め、人間が妖怪を虐めることを禁ずる。


これは最都を支配する者によって定められた守護者が行使する強制力が働いている。

その効果は絶大な効果を発揮し、覚醒者の人間はともかく、“災禍様”である守護者ですら掟を破る事はできない強制する力。

自らでさえも縛りに縛られる代わりに、絶対強者として君臨し続ける。


最都の守護者として君臨する妖怪は、そんな都市を支配する妖怪には相応しい人物である。


「事態が動きました…か」

待ってたとばかりに、顔に綻びが生じる。歪み、その魅惑は水晶へ向けられる。

彼女は、妲己の『妖怪万象ヨウカイバンショウ』を水晶越しに見ていた。

儚げな雰囲気を感じさせる整った顔、高級感あふれる十二単、その隙間から覗く透き通るような白い肌を持ち、白き狐耳は立派に立っている。

肉体の何処にも妖狐のような獣の姿はなく、人間としか思えない肌を着物から垣間見える。

髪は純白に輝き、一滴の穢れがない。穢れを許さない容姿は、この空間に存在するどの宝物にも勝る。

純白に包まれた顔に埋め込まれたような紅玉ルビーの瞳が美しい。

成人女性より幼く見え、あどけなさが自然に発する容姿の整った美顔。

老若男女問わず、その美貌の前に跪き、全ての者は彼女を目にして心奪われない者はいない。

しかし、そんな美貌を遥かに凌駕する底知れぬ欲を爛々させる瞳をしている。

「力を解き放ち、人間に牙を向けましたか。この上なく、ワタシは嬉々に満ちている。あぁ…なんと醜くて美しい姿なんでしょう。妖怪が人を拒んだ末路とは、これほど面白いものを知らない」

妲己の姿に酔い痴れる。


面白いものに興奮を感じ、妲己の醜さを過大評価する。

一度たりとも太古の妖怪にその姿を晒した事はなく、警戒深き妖怪として知られる。

その美貌を拝むことが叶うのは、彼女の絶対的服従者のみ。

しかし、その従者ですら一度きりが常であり、その姿は仕切りに阻まれ、数百年姿を見ていないものすらいる程。

そして、最都:新来が誕生してからも、最都に住む住民が誰もその姿を拝んだことがない。

身内にですら素体を見せない為、その存在が何処にいるのかは如何なる妖怪でも探し当てられない。


稀少な異能を有し、妖術を駆使して最都を隠れ蓑にしている。

尚、最都の住民の全ての者は玉藻前が居るとは誰も信じていない。


見事、彼女に辿り着いた人間にその姿を現す。

しかし、出会ったが最後、彼女に支配されることが約束されている。


これまで辿り着いた人間が数百人いたのだが、殆どの人間はその名を知らずに陥落した。無事に生き残った人間ですら、彼女は人間とは扱わない。


その命すらも我が物として、使い捨ての駒と軽蔑する。尚、支配された人間はその事を認識する術がない。




その一人、須藤辰元すとうたつもとが堂々と仕切りを通して声をかける。

「我が君、準備が整いました。いつでも出陣が可能です」

彼も挑んだが、記憶を操作され傀儡となった人間である。

今回呼び出したのは用済み。気に召さなかった人間を野に捨てるのである。

部屋に一人の男が入り、水が差し、彼女は水晶を消す。

「そうですか……では、ビシュウと共に古都へ向かいなさい。お姉様は松下幸助に敗北する。そして、その心は彼に奪われてしまいます。そんな妖怪など、この世にいる必要はないので消して下さい。ワタシが飛ばしますので、ビシュウを此処へ呼びなさい」

態度を清め、彼女は凛々しい顔で妲己を亡き者にしに行けと告げる。

辰元はコクリと頷き、その場を後にする。


再び静まり返る。

彼女は未覚醒者など不要と考える。それ故、最都に未覚醒者が現れた時、その人間の運命は決まってしまう。傀儡となり、自らの意思で死地へ送られる。

「さようなら。力と色欲に囚われた愚かな男よ。ワタシの言葉に従う駒として死になさい」

美しい悪魔の笑みで見送った。

通常、人間が妲己を葬るなど天がひっくり返っても不可能なのだ。

しかし、彼女が支配する配下はそれ程の実力者を容易に相手取る。それは、常に未来を見てきた故の絶対なる余裕。

失敗作の人間に興味が失せれば、彼女は定期的に刺客として人間を送り込む。

自身を従う者は隷属し、自由意志すらも自由自在に操作する。

「まったく…人間とは不思議な生き物なこと。自らが魅了され支配されているのが分からないとは愚かなこと。人を助けるのに対価を求めれば、対価を物としない価値観を持つ。特に、後者は非常に少ない。人は人ならざるものがあると聞くが、まさにその通り。ワタシをお創りになった人もまた、人ならざるもの……」

自ら生み出した人間に対し、何故か笑いが込み上げてきたのか、彼女は優雅に笑う。


水晶を再び出し、妲己と幸助達の戦いを見物する。

妲己の穢れたその姿を嘲笑う。

「これは実に下駄げたなケダモノに成り下がったこと。醜悪な姿は嫌いではなく悦ばしいのですが、これがワタシの先祖とは情けない。“一尾”で始末出来るでしょう。それに、あの雪女は強さを磨きかけている。現代妖怪の端くれ…いいえ、現代妖怪の長にしてあげてもいいぐらい。ここまでの人間への執念、感激に値する」

妲己に失望し、400年ほど前に出会った雪姫を見て笑う。

「『雪女ユキオンナ』が我が身を代償に自由となり、我が呪いを受けても屈さず、生にしがみつく太き精神。やはり見どころのある妖怪であった。それを容易に受け入れた彼への恋心。よい醜さだ。一度、ワタシもお会いしなければならない時が来ましょう。ホホホ、これほど心踊る時はない。では、この気持ちが鎮む前に……」

彼女は雪姫を評価し、幸助という人間に目を光らせる。

自分から欲する存在を見て心躍る。

そして、自身の魂を彼の映る水晶に込め、我が物とする為に眩い光を発光させる。

加護を与え、自らの庇護下へ下す。

「大罪を担いし我が欲する者に永遠の加護を与えん。受けた罪を晴らすべく、その罪に抗う為にまごうことなき信念を抱く魂に純情を貢ごう。死は身近、生は遠き。天狐に見定められし者に深い執念と愛憎を。心の穴を持つ者に救済という名の縛りを。あやかしを愛し、そして人間に業を抱く者よ。いずれ辿り着く旅の行く末はからとなり、科されし罪は晴れるが宿命。我がえるあやかしに導かれよ」

本来、加護は直接与えなければならない。

直接触れなくとも、欲した人間に加護を与えられる術を知る。

彼女は特別な妖怪だ。そして、成す術も他の妖怪を逸している。


魅入った者は逃れられない。


欲しい物は幾千年かけてでも我が物とする。


土地も、人も、妖怪も、異能も、魂すらも。その欲は誰よりも強欲に滾り、我慢などない。


「この時代もワタシに都合が良い。何しろ、彼の異能はワタシを知れば恐ろしい真価を発揮する代物。神に近くも遠からずである力、じつに欲しい。あぁ…果てる夢を望めるだけで幸せに酔えること。早くワタシに辿り着くことを心よりお待ちしてます。さすれば、ワタシがもう一人の九尾狐に変えてあげますから。『妖怪万象ヨウカイバンショウ』、贋作な禁術とは比べようのない誰も行き着くことのない未知の生命の誕生。消えた名を復活する上で、適性者・・・は類い稀なる力が条件」

頬が緩む。映る映像に吸い込まれるように、水晶を撫でる。

傾国の美女と謳われ、平安の時代を混乱に巻き込んだ絶世の美女。




名を『玉藻前タマモノマエ』と伝承は彼女を記した。




太古の妖怪でも時代背景による影響はある。

玉藻前タマモノマエ』という妖怪は、現代社会において名が広く伝わり、その強さと知名度、知力は他の太古の妖怪とは比べられないほどの進化を遂げている。

そして、玉藻前は覚醒者であり、既にその先を研究している。

人道に反する実験も好み、進化を求め、その探究性は極められている。

根源的存在である『九尾狐キュウビキツネ』に最も近く、來嘛羅に匹敵する名を馳せた妖怪である。

玉藻前の目的は自身の胸の内に秘め、秘匿する。


現に、彼女の実験によって新たな人間が造られた。

それが玉藻前が支配する“八部覇尾はちぶはび”である。

彼らは人間であるが、人間としての生殖能力や生存本能を失い、神の子として成り代わっている。

人間を完全な存在へ変え、玉藻前の望む人間を自身で改造した。

強さを獲得し、その強さは“太古の妖怪”に匹敵する者まで現れた。しかし、誰もが贋作にしか過ぎない。

但し、この力を無条件で扱うことは不可能。一度たりとも迂闊に使えば、その魂は天国も地獄も逝かず消滅する。

そこで、玉藻前は禁忌を数多く破り、その力を扱わせる事を可能とさせた。

力を扱わせられる人数は限られており、その壁を越えることは長年の研究ですら成し得なかった。

幾つもの完全を求める玉藻前の計画の一つとして掲げているもの。それは……。


——完全なる九尾狐の力を引き継ぎし人類ヒトの誕生。


最終目標到達地点を目指し、生まれて今日こんにちまで悩み続けた。

しかし、長い年月をかけ、それを可能とする鍵を見つけ、彼女の興奮は絶頂に達した。

「時にして1000年。ワタシは待ち侘びました。我が力を受け継ぐ器が妖界に堕ち、ワタシを満たしてくれる。幾人造っても満たされない渇望に渇く欲が潤いを欲する。あぁ…なんと幸運!なんと贅沢な人の子が来てくれたのだろうか‼︎なあ、お前もそう思うだろ?……無名」

部屋の隅に封印された少女に話しかける。


少女は水晶のような球形の塊に閉じ込められている。

その姿は、幸助が初めて出会った少女と同じ容姿をしている。

だが、幸助と出会った彼女とはかけ離れた表情が晒されていた。

虚空を眺めるように目に光はなく、ただ悲壮な顔を浮かべる。全てに絶望し、何も受け入れたくないとばかりの顔が封印させている。

口は開いているが喋れず、生きているかさえ不明。息をしているかも判らず、本物でさえも判別出来ない。

そんな少女に対し、玉藻前は生きているかのように話しかけるのだった。

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