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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
古都・妖狐救済編
109/277

108話 穢れた名誉

遅れました。すいません。

アルバイトが忙しく、投稿するタイミングを逃しました。


明後日、『妖界放浪記・長編』を投稿します!

命の危険を感じたのだ。

この場の全員が死ぬと。

それもその筈、妲己も禁術を破ったのだ。

妖怪万象ヨウカイバンショウ』に初めて手を出す。その代償に、彼女の肉体と精神が妖狐に侵されていく。


肉体が変貌していく。服は破れ、尻尾が肥大化し始める。

装飾は地面に落ち、裸体を晒す。しかし、その皮膚に人間の皮膚はなく、獣のような禍々しい狐毛が全身を蝕んでいた。

解放したことで身体に変化が起きたのではなく、解放する前から地毛として存在していた。

狐毛は妲己の全身に行き渡り、人間の裸体という美しい美貌はなく、妖狐に堕ちた姿があった。

その毛が自身に下った罰の印のように。




幸助はその姿をはっきり見てしまった。

「あ……アレが…妲己なのか?」

場違いな驚きをし、その姿に見入ってしまう。

獣の呻き声が妲己の口から発せられる。

苦しみのある呻き声に、誰もがその場から動けなくなる。

「何が傍観せよだ……ワレは変わりたいのだ!この穢らわしい恥肉を纏いたくなどなかった!何故貴様ら人間は妖怪ワレを醜くする⁉︎同じ人間とは思えぬ鬼畜!尊厳を愚弄する人間など死ねばいい‼︎人間など消えればよい!よいのだ‼︎ワレを記した人間共にこの醜鬼しゅうきに穢れた姿を見せてやろうっ‼︎」

妲己は己の人としての肉体を捨て、『妖怪万象ヨウカイバンショウ』を解く。


妲己の代償は、己の尊厳。人間の姿を犠牲に、自らを本来の妖狐へ変貌する。


自分を捨て、人間としての在り方を捨てる事で、邪獣の九尾狐としての姿へと変わる。

漆黒の毛に覆われ、自分の感情が制御不能になる。

肉体と肥大化し始め、妖力の化身とも思えるほどの大量の妖力が新たに肉体を模る。


その口から発せられる声は、もはや人間の声ではなかった。


美の欠片すらなく、痛々しく、全ての怨念を宿したかのような姿が幸助達の目の前を覆う。

「グッハッハッハっ‼︎これが貴様らが望んだワレの姿だ!人間よ、この醜き邪悪な妖狐を生んだのは紛れもなく貴様ら人間だ!こんな醜く憐れな妖怪など知らぬ。ワレは貴様らの命を奪った後、この姿で古都を滅ぼしてやる。“四霊神獣”も“三妖魔”すらも喰らってやるとしよう‼︎」

飢えた巨大な妖狐が出現した。それにより、恐怖の空間に身を晒す者は正気を保つことが出来なくなる。


治療する華名の手が止まる。

空間内というのもあり、その異様な怨念オーラを感じ取り、体が硬直した。

「手が…震える⁉︎心臓が逆流しそうです…。吐きそう……」

緊張感と悪気が華名の体に痛みを走らせる。

夜叉はそんな華名の手を優しく握る。

「カナ様、落ち着いて下さい。大丈夫です、私が此処を御守りしますので」

「夜叉……ありがとうございます」

華名は落ち着きを取り戻し、悟美の治療に専念する。

悟美の血を媒体に血の精霊を喚び、失血した血を注入していく。

精霊は華名の意思に従い、悟美の血と適合する。最初こそ拒絶は起きたものの、悟美の肉体は華名の精霊を受け入れた。

生気が戻り、悟美の意識が順調に回復する。


血を輸血し、完全に意識が戻り、悟美は起き上がる。

その強靭的な回復速度に華名達は驚いた。

「悪かったわ、貴女達にお世話になっちゃったみたいで。ありがと!」

悟美は御礼を言う。

悟美とて、助けられた相手を無視することはしない。助けられた身としての振る舞いは心掛けている。

「今から動くんですか⁉︎治ったばかりですので、あまり無理せずに休んだ方が…」

華名は悟美を心配する。

血は回復したが、体から血が抜けた影響は消せない。悟美とて、血液が抜けたからにはまともに動けない。

無理をすれば貧血で倒れるだろう。

悟美は座り込む。

「えへへ、そうね。今は私の出る幕じゃないかしら?」

「意外ですね。貴女が戦う意思を放棄するなど」

夜叉は悟美の冷静さが的確であると知る。

しかし、悟美の冷静は少し違った。

「シシシッ!私、さっきまでほぼ死んでたから。紗夜が凄い泣いていたのよ。そして、私に訴えるように戦っちゃ駄目って囁いてくるの〜。戦おうとすると「手足もぎ取る!」からって面白いこと言ってきたわ」

「紗夜?誰ですか?」

華名達は首を傾げる。


紗夜と会ったことがなく、聖域陵サンクチュアリで名前すら聞いていない。紗夜は華名達を信用出来ず、数日間、悟美の影から一度も出てきていない。


悟美の影から紗夜が現れる。その表情は強張り、華名達を強く睨み付ける。

「なんか出てきました‼︎」

「……黒い影。闇よりいでし女。こんな強者が潜んでいようとは⁉︎」

華名は思わず夜叉の背後へ隠れる。夜叉はその異質な気配に今気付く。

紗夜は出てくるなり、悟美の裾を掴み、影の中から質問する。

「悟美ちゃん…なんで無茶、なんかした、のですか?」

震えながら怒り問う紗夜。その様子はいつものおどおどした彼女ではなく、闇に現した紗夜だった。

「えへへ、紗夜には迷惑だったかしら?」

悟美はヘラヘラ笑う。

紗夜は体を更に震わせ、その表情は怒りに変わる。

「なんで…なんでぇ⁉︎なんでなんですか‼︎悟美ちゃんが死ぬなんて嫌っ‼︎私と一緒に居てくれるのでしょ⁉︎悟美ちゃんが居ないと生きたくない‼︎」

強引に裾を引っ張り、普段とは違う紗夜がそこにいた。ヒステリック衝動に駆られたように、紗夜の態度が恐ろしくなる。

悟美に見捨てられるのに恐怖するように、悟美が死ぬ事を強く拒む。

いや、それ以上に悟美を手放したくないという勝手な感情が混ざっている。

それでも、悟美は笑って返答する。

「心配しなくて良いわ。こうして生きてるんだもん」

気楽に答える悟美。しかし、それで落ち着く紗夜ではなかった。

「生きてるからじゃない‼︎悟美ちゃんは私のなんだから!死んだら連れ帰るから‼︎」

普段は敬語を口にするが、今の紗夜にはそんな落ち着きはなく、ますます激情する。

そんな紗夜を見るのは久方ぶりだと悟美は微笑む。

「大丈夫よ。私が紗夜を置いて地獄へ行くわけがないわ。ちゃんと傍にいてあげるから」

悟美の満面な笑みに、紗夜は頬を赤らめる。

「悟美ちゃん……‼︎じゃ、じゃああの⁉︎妖狐を懲らしめに行ってきます‼︎」

紗夜は悟美の期待に応える為に、影へと再び潜る。愛する悟美を懲らしめた妲己を殺そうと殺意を研ぎ澄ます。

暗殺者のように、静かに妲己の影へと潜る。

(うふふ!悟美ちゃんは悟美ちゃんだ‼︎早く九尾狐を始末して褒めて貰わないとです!私にしか私の悟美ちゃんは止められないから)

自分のものと誇張し、自ら闇の中を移動し、変貌した妲己を討ち取るべく行動をする。

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