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エピローグ

「・・・な、な、なぁ!?」


 オデニーは事ここに至り、恐怖を覚えた。

 今、この場でセイマを止められる人間はいないのだと。


 セイマはゆったりとした足取りでオデニーに近づく。

 逃げようにも、腰が抜けて逃げることが出来ない。


「さて、皇帝。死んでいった者たちの無念。少しは味わってくれ」


「なっ、余を、誰だと!」


 ザシュ!!


 振り下ろされた剣。

 飛び散る鮮血。

 燃えるような痛み。

 斬られたと感じた時、オデニーは悲鳴を上げた。


「ぐ あ ぁ ぁ あ! い、痛いぃ!! 余が、血が、余の命が零れていくぅー!!」


「五月蠅い。まだ致命傷じゃない」


「余を殺すのか!?」


「一思いにやってやろうかと思ったが、後が面倒そうだから殺すのは勘弁してやる」


 わずかな安堵。

 だが、剣を突き付けられ、オデニーは震え上がる。


「いいか。二度と王国に手を出すな。王国には俺がいる。お前が動けば今度こそお前を殺しに来るぞ」


「う、ぐ、ぐ」


 喉が干上がる。

 呑まれる。

 皇帝である自分が。


「お前を殺しても続くようならその後釜も、それで駄目ならその次も。容赦なく殺す」


 大きく開かれた黒い目。

 この男は本気だと理解した。

 同時にどうやっても抗えない存在がいるのだと思い知らされた。

 何故、こんな奴が王国にいるのか。


「じゃあ、俺は帰るから」


 そう言うとセイマは剣を上に掲げる。

 すると轟音が鳴り、落雷が落ちて、天井に大きな穴が空いた。

 ふわりとセイマが飛ぶ。

 一体如何なる原理で飛んでいるのか分からない。


「じゃあな。大人しくこの国で過ごせ」


 そう言い残してセイマは去っていった。



 この後、オデニーは王座を息子に譲り、隠居して引っ込んだ。

 王国には手を出してはならない。

 そう、言い残して。







「お断りします」


 王様の話を俺はきっぱり断った。

 だってそうだろう。


「凱旋パレードの主役になるなんて、なんでそんなこと」


 面倒だ。

 果てしなく面倒だ。


 謁見の間には多くの貴族たちが俺と王様の会話を聞いている。

 俺を見る彼らの目には以前のような不信感はなく、畏敬の念がこもったものを感じる。

 くそ、どうしてこうなった。


「そうは言うがな。あの戦争の主役はどう考えたってお前だろう?」


「柄じゃないですよ」


 戦争が終わったというニュースは瞬く間に国中に広がった。

 引っ越した国民も帰ってきて、王都は大いに盛り上がっている。

 そんな中でこの戦争勝利の立役者の存在が浮き上がってきた。

 こんな噂がまことしやかに囁かれていた。

 即ち、神の御使が降臨したと。


 ほぼたった一人で戦争を終結させた神如き存在がいると。

 そんな大英雄を一眼見たいという人間が日増しに増えている。らしい。


 自重はやめたけど、やめたけども! 目立ちたくない。

 神の御使?

 誰だそれ? 確かに神様の元から来たけども!


「国民は英雄の誕生を待ち望んでいる。お前を待っているのだ」


「嫌です」


 王様は首を二、三度振り、指を額に当てる。


「では、爵位はどうだ? 丁度ワルアークが取り潰しになり、公爵の地位が一つ空いた。お前に公爵(デューク)の地位を与えたいが」


「とんでもない」


 貴族になるなんて、絶対にごめんだ。


 俺は王様から褒美として、奴隷制度の撤廃を約束させた。

 王様としても俺の対応に困っていただろう。

 あのまま、活動を続けていても、実ったかどうかは正直怪しい。


 そんな時に起こった戦争だ。

 王様はこれを利用しようと考えた。

 俺に褒美を与えるという方法で、俺の願いを聞き入れ、帝国を追い返す一石二鳥の策を。


 褒美は貰った。

 これ以上はいらない。

 けど、王様は俺をこの国に繋ぎ止めたいんだろうな。

 今回のことで俺は証明してしまった。

 俺は一国の軍をも退けられると。


 だから、貴族なんて地位を俺に押し付けようとするんだろうが、ごめん被る。


「ならば、お前に守護騎士の称号を与えよう」


 まだ何か俺に役職を与えようと!?

 周りが騒ぎ出した。

 一体守護騎士とはなんなのか?


「なんですかそれ?」


 騎士爵とは違うのか?


「守護騎士とは、緊急を要した場合に限り、その権限において如何なる命令をも下すことが出来る。まあ、つまり王に次ぐ権限を保有するということだな」


「はあ? なんですかそりゃ?」


 余りにも大きな権限じゃないか。


「しかし、土地も財産も何も有しない。この国の防波堤となり、国を護ってほしい。それが余の願いだ」


 俺は頭をかいた。

 護ってほしい、ね。


「そんなことしなくても護りますよ。この国には俺の大切な人が出来ましたからね」


「ならば、この役職、果たしてくれるな?」


「・・・俺はこの国を止まるかわかりません。ですが、この国にいる限り、護ると誓いましょう」


 おおぉ、と周りが騒ぐ。


「では、これを授けよう。守護騎士の指輪だ。見る者が見ればすぐにお前が守護騎士だと分かるだろう。何かと融通がきくぞ」


「・・・まあ、せっかくなので貰っておきます」



 この後、簡単な儀式をして、俺は指輪を受け取った。




「これからどうする?」


「まずはステラを里まで送ります」


「戻ってくれるか?」


 期待に満ちた目で見ないで欲しい。


「ええ、孤児院も気になりますし」


「その時は寄るといい。軽く、遊びに来る感覚で、茶でも飲もう」


「分かりました。その時まで」


「うむ。その時までさよならだ」






「ぐす、ぐす。セイマお兄ちゃん」


「行かないでー」


「寂しいよぅ」


 旅立つ日当日。

 多くの子供たちが俺たちとの別れを惜しんだ。

 俺も寂しい。

 ここには沢山思い出が出来たからな。


「泣くな。これで最後じゃない。また会える」


 俺は子供たち一人一人にお別れをいい、頭を撫でてやった。

 別れはいつだって寂しい。

 だけど、老師との別れと違って最後じゃない。


「セイマさん。貴方に出会えてよかった。この孤児院は貴方のおかげで持ち直しました」


 院長とシスターにもお世話になった。


「また来ます。子供たちをお願いします」


「ええ、必ず」


「また会いましょう」


 この孤児院は治安の悪い場所にあり、今までは悔しいがニルデラートファミリーが護っていた。

 でも今は、そのニルデラートファミリーを壊滅させた俺がいた孤児院だと分かっている。

 この孤児院を狙う奴はいないだろう。


 さて、孤児院との別れ、それはつまりあの子たちとの別れになるわけだが、





「お兄ちゃんと一緒に行きたいです!」


「僕も!」


 うーん。


 クレアとカイは俺についてくると言って聞かない。

 困った。


「遊びに行くんじゃないんだぞ? 大変だぞ?」


「どんなに辛くても我慢します!」


「村にいた時はひもじい思いなんていっぱいあったよ。大丈夫だよ!」


 うーん。

 俺に特に懐いてくれた二人。

 俺も別れるのは辛いが、小さい子供を連れて旅をするのはどうかな?


「いいじゃない。連れていけば」


 ステラは気軽に言う。


「この子たちなら心配いらないわよ。旅は道連れよ」


「ステラ・・・」


 まあ、依頼主がそう言うなら。

 俺が護ってやればいいか。


「ちゃんと言うこと聞くんだぞ?」


「は、はい!」


「やった!」


 やれやれ。

 子供には勝てない。


 これからこの国は変わっていくんだろう。

 奴隷制度がなくなり、奴隷がいなくなる。

 今までと勝手が違って混乱も起こるだろう。

 だけど、地球でも、そんな混乱を乗り越えて、人は新しい時代へと向かっていったんだ。

 この国だって大丈夫だ。


「さあ、今度こそ行こう。エルフの里に」


 旅は続く。

 どこまでも。

セイマを強くし過ぎた。


どうも、作者のさく・らうめです。

御愛読ありがとうございました。

今回はここで筆を置かせていただきます。


セイマ強すぎですね。

敵がまるで相手にならなくて困ります。

失敗だったかな?

読者様は強い主人公を求めているのかなと思う一方で、主人公が負けるかも知れないギリギリの戦いを描きたいとも思っています。

まあ、それは作者の別作品をご覧ください。

ではまた。

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[一言] 強くてもいいと思うよ
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