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ワルアークの終わり

「ひぃー、ひぃー、ひぃーー!!」


 ワルアークは這いつくばっていた。

 目の前には刀を手にしたセイマがいる。


 つい先ほど、セイマが乗り込んできた。

 ワルアークはセイマ襲撃以来、警備の人員を五倍にしたし、腕利を揃えたのだが全く意味を為さなかった。

 瞬く間にセイマに制圧されてしまったのだ。


 あまりにも簡単に。

 笑っちゃうくらい呆気なく。


 ワルアークは攻撃性のある人間で、セイマを殺すことばかりにご執心で、もし、セイマが襲ってきたらどうするのかという部分が抜けていた。

 いや、頭の隅っこにはあったのだ。

 だから、人員も増やしたのだ。


 だが、よく考えれば分かる。

 千人の兵隊を退け、二人のS級冒険者をあしらったのだ。

 警備を十人から五十人に増やしたくらいでどうにかなる筈がなかったのだと。


「ダッツニール! 貴様! 何故セイマと一緒にいる! 裏切ったか!?」


「わ、私はもうこの方には逆らえません。この方に刃向かったことが間違いだったのです」


 ダッツニールは怯えながら答えた。


「き、貴様ーー!!」


「黙れ」


 セイマの刀が閃く。


 ワルアークはザックリと斬られた。


「ぎゃ あ あ ぁ ー ー !!」


 斬られたワルアークは床を転げ回った。

 セイマは逃さず、ワルアークを足で蹴って止める。


「五月蝿い。致命傷じゃない。まだ助かる」


「たす、たす、たす、助けてくれぇ〜」


「子供を誘拐する案はお前らしいな。よくも幼気(いたいけ)な子供たちにゲスな真似をしてくれたな」


「許して下さい。もうしません」


「許す? 俺がお前を? 許すはずがないだろうが」


「ひぃ、ひぃー!」


「いいかワルアーク。お前はこれから王宮に出頭してこれまでの悪事全てを告白するんだ」


「ぜ、全部!? そんなことをすればワシは公爵ではいられなくなってしまう」


「お前、まだ自分の立場がわかっていないな?」


 セイマはワルアークの親指をへし折った。


「ぎゃ や や や ー ー ー!!」


「お前に選択肢はない。こっちもお前の悪事は大体把握してるんだ。一つもこぼさずに白状しろ。さもなくば、また俺はお前の元に来るぞ」


「は、はひぃ!」


「俺から逃げられると思うなよ。お前の気配は覚えた。どれだけ距離が離れていようと、どんなに頑強な城砦に閉じこもっていようと必ず探し出すからな」


「はひぃーーー!」


 こんな怪物と関わるのではなかった。

 被害者届けなど出さずに泣き寝入りした方がよっぽど良かった。

 ワルアークは恐怖と後悔でいっぱいだった。


「さて、金庫はどこかな? 貯め込んでるんだろ」


「ひっ、宝物庫に手をつけるのか! ・・・つけるのですか?」


「お前はしばらく牢の中だ。持っていても仕方ないだろ」


 そんなことはない。

 むしろ、待遇を良くする為にカネがいる。

 それに、再起を図る時だって必要だ。

 いくらあっても足りないくらいなのに。


「どうせ、悪事で貯めた金なんだろ? 全部貰うぞ」


 もうワルアークはセイマに逆らえなかった。

 泣く泣くセイマに全財産を手渡した。


 簡単な治療をしてワルアークは王城に出頭したのだった。







「陛下。先程、ワルアーク卿が参られまして、これまで犯した犯罪を全て告白すると言っております。それと、セイマへの被害届を取り消すと」


「・・・そうか」


 国王は両手に顔を埋めた。


(セイマ)


 とうとう公爵を黙らせたか。

 まあ、殺さなかっただけ良しとしよう。

 殺していたらどうなっていたか。

 貴族殺しは重罪だ。

 必ず処罰せねばならない。

 しかし、セイマに力づくは通じない。

 非常に厄介な事態になっていただろう。


 これからもセイマは貴族、平民関わらず、劣悪な環境下で働く奴隷たちを救うだろう。

 それは一側面においては尊いが、犯罪だ。

 これはもはや、テロ行為だ。


 セイマは止まらない。

 そして、止められない。


 いっそセイマの要求を呑み奴隷制度を廃止にしようかとも考えたが、既にセイマのことは王都内で知れ渡ってしまっている。

 ここでセイマの要求を呑んでは、国が平民一人に屈したと思われてしまう。


 もし、セイマが最初にこの王城に来た時に要求を呑んでいたらまた話は違ったのかもしれないが。

 終わったことで考えを巡らせても詮無き事ことだ。


 なんとか落とし所が欲しい。

 セイマの要求を呑んで尚且つ、こちらのメンツを保ったまま事態を終息させる方法はないか?


 そんなことを考えていると、突然勢いよく扉が開かれた。


「ほ、報告! 緊急の報告がございます!!」


 気が立っている時に突然入って来られて、王も眉間に皺がよったが、ここで態度に出したりはしない。


「落ち着け。何があった?」


「帝国が! 帝国が我が国に侵攻を開始しました!」


「なっ」


 あまりに驚愕の報告にさっきまで考えていたことが吹っ飛んだ。


「なんだと!?」


「あまりに突然のことでした。恐るべき速度で兵を集結させ、我らが領土に侵攻。真っ直ぐ王都を目指しています」


 帝国とは色々あった。

 領土を欲していることは分かっていたが、協定で守られている内は大丈夫と思っていたが、更新は確かにしていない。

 警戒はしていたが。


「国境付近の部隊は?」


「突破されました。私も急ぎ、報告にと早馬を走らせましたが、今は何処まで進行しているか・・・」


「なんたることだ。宣戦布告もなしか」


 もはや、セイマどころの騒ぎではなくなった。

 国が滅びるかどうかの瀬戸際だ。

 判断を誤れば国が滅ぶ。


「急ぎ兵を集めよ。それと元帥を呼べ。すぐに動かせる兵がどれだけいるか知りたい」


「はっ!」


「ああ、しまった。うっかりしていた。敵の兵の数はどれほどか?」


「十五万騎の大軍勢です・・・」


「十五万・・・」


 暗澹(あんたん)な気持ちになり、大きな息を吐くのだった。

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