誘拐
ある日の昼下がり。
俺とステラとリーゼは喫茶店で作戦会議をしていた。
何を話し合っているのかといえば、奴隷解放に向けての今後の方針だ。
「王都に戻ってからそろそろ一ヶ月になるわね。これまで結構セイマが派手に動いたけど」
「そうだな。人攫いの集団を根こそぎ潰し、マフィアを片付けて、貴族を初め、奴隷を虐待したと噂される主人から救出」
ステラが呆れた様子でため息をつく。
「マフィアを壊滅させるとか普通に言うものねぇ」
「セイマ殿ですから」
俺は居心地悪く、肩をすくめる。
俺もそろそろ、自分という存在がどれ程この世界にとって規格外か分かってきた。
剣聖を一蹴し、千人の軍勢を退け、S級冒険者二人係を軽く追い返した。
S級冒険者や剣聖は人間の中でも最高峰だという。
となると、もう俺とまともに戦える人間なんていないじゃないか。
強い相手と戦いたい俺としては、こんなに寂しいことはない。
じゃあもうモンスターでいいか。
まだ見ぬ強いモンスターに期待しよう。
「やれることはやったって感じよね。これから先どうする?」
「うーん。続けていくしかないのかなー」
悪徳奴隷商などは、力に任せて潰した。
だが、意外なことに善良な奴隷商というのも存在したのだ。
奴隷商というだけあって腹に一物持っている人間ばかりだったが、奴隷は商品と割り切り、傷つけないように丁寧に扱う連中だった。
入手方法も借金奴隷や犯罪者奴隷などで、攫ってきたりはしていなかった。
犯罪者奴隷には特に思う所はないが、借金奴隷には俺は胸にモヤがかかっている。
借金しても、奴隷になることはないだろうと。
何かもっと上手い方法があるのではないかと思うのだ。
まあそれはさておき、そんな善良な奴隷商に暴力を振るうわけにもいかず、ニルデラートやデブホイから巻き上げた金にものをいわせて、全奴隷を解放した。
帰るところがあった人たちはそのまま行かせて、身寄りがなく解放されても何も出来ない人たちはニルデラートファミリーが持っていた物件に取り敢えず住まわせている。
それと孤児院の隣がニルデラートファミリーの保有する物件だったので、孤児院二号として使わせて貰っている。
孤児院も人が多くなって寝れなくなってきたからね。
ニルデラートファミリーを潰した俺の顔は知れ渡っており、奴隷商はかなりビビっていて、多額の金を支払うことで足を洗わせることが出来た。
脅すつもりはなかったが、結果脅したようなものだな。
「続けていく。それしかないわねー」
真っ当にいくなら反対運動などを起こした方がいいのだろうが、王族、貴族が治める絶対王政のこの国で、平民の運動がどれだけ実るだろうか?
奴隷制度を必要としている人がいる以上、強引な方法を取らなければいつまで経っても変わらない。
「しかし、姫様。流石にいつまでも里に帰らないわけには参りません」
「それは・・・そうよねぇ」
ステラはエルフの王女だものな。
最悪ステラを送り届けて引き返してくるか。
そんなことを考えていた。
結局はこれまで通り活動を続けていこうとなった。
話し合いも終わり、孤児院に帰ってくると、シスターセリスが俺の元に駆け寄ってきた。
「セイマさん!」
「シスター。どうしたんですか?」
かなり慌てている。
何かあったのか?
「クレアちゃんとカイ君が帰って来ないんです!」
「は?」
帰って来ない?
クレアとカイが?
「どういうことですか!?」
「お昼の買い出しに行こうとしたら、自分たちも何かしたいと言って。行かせたんですけど、お昼時間をとっくに過ぎているのに帰って来なくて」
さっき、三時の鐘が鳴った。
昼の買い出しに行って帰って来ないのは遅すぎる。
「落ち着いてください。まだ何かあったかは分かりません」
「でも、二人ともいい子です。寄り道をしているとは考えにくく」
確かにそうだな。
「俺、探してきます」
「わ、わたくしも」
「シスターはここにいて下さい。入れ違いになるかも知れない」
「それは! そう、ですね」
まずは冷静になろう。
ぶっちゃけ俺も冷静でいられないが、落ち着かないと。
「なーに、意外と二人で買い食いなんかしてるかも知れません。気を確かに」
「は、はい」
さて、探しに行こう。
「セイマ。私も探すわ」
「私も」
「わ、私たちもお手伝いさせてください」
ステラ、リーゼ、それにセリーとナーサも協力してくれる。
俺は頼もしくなり頷いた。
「頼む。一緒に探してくれ」
俺たちは手分けして二人を見つけるべく、捜索を開始した。
皆と別れ、誰もいなくなったタイミングでニンデストが近寄ってきた。
「主。今回の失態。どのような罰でもお受けします」
酷く悔しそうにしているニンデスト。
しかし、今はそんな場合ではない。
「いや、俺のミスだ。お前は孤児院を守ってくれてたんだろう? こんなことなら、もっと喚ぶべきだったんだ」
俺には契約している仲間がまだまだいる。
戦力的には十分だと思い、ニンデスト一人に負担させた俺に責任がある。
「それで何か知らないか?」
「孤児院にこれを放り込もうとした輩を捕らえました」
「それは?」
紙の入った瓶?
それを取り出した中身を読んでから、俺は紙を握りしめた。
内容はこうだ。
子供たちを預かった。
返してほしくば、指定した場所にセイマ一人で来い。
ここまで怒ったのは久しぶりだぞ。
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