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S級二人とバトル

 千人の憲兵、兵士との戦いから一夜明け、今日は何事もなく平和だ。


 そして、今日の夕飯は。


「これだあ!!」


 ドン、と。次元収納袋から取り出したのは、


「魚だー」


「魚・・・」


「え、魚って」


 皆一様に驚きと戸惑うの顔で魚を見つめる。


「魚が珍しいか?」


「うん」


「だって、お魚って市でも滅多に見ないし」


 そう。

 ここ、王都は海から離れている。

 海から馬車を使っても何日もかかる。

 故に魚が傷んでしまう為、滅多に市場に出回らない。

 まあ、この世界には魔法があるので、凍らせれば可能といえば可能ではあるが、はやり何日も運搬にかかるのでは、あまり現実的ではない。

 

 しかしだ。

 俺には次元収納袋がある。

 この袋に入れてしまえば時間的にも入れた物質を隔離できる。

 ここに入れておく限り、食材はいつまでも腐らない。

 俺はこの世界に来るまで白い空間で大量の食材をこの袋に保管していた。

 全ては老子の計らいだ。

 感謝してもしきれない。


「さーて、魚を捌いていくぞ」


 白い空間で色々料理をしていたからな。

 魚の調理もお手の物だ。


 俺が魚を解体していくと子供たちは珍しそうに見ていた。

 ふっふっふ、じゃあ、マグロを解体していこうかね。

 これは結構なパフォーマンスになりますよ。


 こうして俺が魚を一匹一匹解体し、捌き、出来上がっていく刺身。

 それを見て子供たちは感嘆の声を漏らす。


「え、待って。セイマお兄ちゃん。お魚を生で食べるの?」


 クレアが質問してきたので俺は頷く。


「そうだ」


「お腹痛くならない?」


「この魚に限っては大丈夫だ」


 やはり、魚を生で食べる文化はないようだ。

 この世界にないのか、この地域にないのかは知らないが。

 漁師町に行けばあるだろうか?


 さて、この刺身を酢飯の上に乗せれば。


「寿司の完成だ!」


 並べられた寿司を子供たちは見やった。

 相変わらず俺の出す料理は、この世界では見たこともない物だらけ。

 相当に珍しいだろう。

 しかも、今回は生の魚を使っている。


「すしっていうの?」


「そうだ。これを握るには技術が必要なんだぞ?」


 回転寿司は子供たちの人気店だ。

 食事時には行列の出来ている店舗も珍しくはない。

 食べてくれればきっと気に入ってくれると思うのだが、やはり怖いのだろう。

 中々手を付けけない。


「あ、あたし食べる!」


「僕も」


 クレアとカイが寿司に手を取った。


「ああ、その醤油に付けて食べてな」


 子供だからわさびは抜きだ。

 じっくりと味わってほしい。

 おお、いきなりトロを行くか。

 いいよ。堪能しろ。


 トロを口に含んだ瞬間。


「ふぁ~~。美味しい」


「うっめー!」


 やっぱりトロは美味いよな。

 気に入ってくれて良かった。


「本当に美味しいの?」


「じゃあ、食べてみる?」


 他の子供たちもおっかなびっくり、寿司に手を付けていく。

 ヒラメ、いくら、アジ、カツオ、イカ、貝類、ハマチなどなど。

 うんうん、皆味わって食べて欲しい。

 しばらく色々なネタを握って味を覚えさせたところでもう一工夫。


「さーて皆。ここに手巻き寿司の材料があります」


 俺は海苔、ネタ、酢飯をそれぞれ皆の前に出す。

 子供たちは不思議そうにそれを見つめているが。


「作り方は簡単だ。海苔にご飯を乗せてお魚を乗っけて巻くだけ。これで手巻き寿司の完成だ」


「・・・簡単」


「できそー」


「さー、ここにお魚を置いてある。皆好きなお魚を乗っけて食べてみな」


「好きなの乗せていいのー!」


「面白そう」


「俺、この赤い魚乗せるー」


 これなら子供たちも一緒に楽しめる。

 手巻き寿司パーティーだ。


「セイマ。この赤い粒粒はなに?」


「ああ、それはイクラだな。魚の卵だ」


 ステラが聞いてくるので答えた。

 あんまり見ないのかな。

 まあ、エルフは森で生きる種族だからね。

 海鮮には詳しくないだろう。


「ステラには軍艦巻きを握ってやるよ」


 俺はそう言ってイクラの軍艦巻きを作ってやる。

 ステラはじっと見ながら口にした。


「美味しい。プチプチっとした歯触りと濃厚でトロッとしたものが口の中に広がって」


 そうか、美味いか。はっはっは。


 寿司、大成功だ。






 子供たちがお腹が膨れてベッドに潜り込んだ頃。

 俺が、風に当たりたくて外に出ると、闘気を感じた。

 数は二つ。

 この闘気、雑魚ではないな。


「主」


「ああ、分かってる」


 ニンデストが俺に警告してきた。

 この闘気の主は俺を狙っている。

 またワルアークの手の者か。

 俺はゆっくりと孤児院から移動し、闘気の主の所に向かった。


 月も出ていて、星もきらめいている。

 夜ではあるが、十分に視界は良好だ。

 まあ、俺は既に目に頼らずとも気配で察することは出来るが。


 しばらく歩くと二人の人間が俺を待ち受けていた。

 一人は二メートルに届くほど大柄な男。

 もう一人はスレンダーな女性。

 二人共中々の手練れだ。


「はっはっは。来やがったな。お前が噂に違わぬ実力の持ち主なら、俺らの闘気を感じてこうして来てくれると思っていたぜ」


 なるほど。

 あれは挑発だったのか。


「貴方たちは俺を捕まえに来たってことでいいんですか?」


 俺が尋ねると大柄な男はふふんと笑う。


「かしこまった喋り方はなしにしようや。同じ冒険者同士なんだ。ため口でいいぜ」


 同じ冒険者?

 俺の素性は調べているってわけか。

 この二人も冒険者だってことは。


「ひょっとしてS級冒険者?」


 俺が尋ねると意外そうな顔をする二人。


「俺らのこと、知らねーか。はっ! 俺らの知名度もイマイチらしいぜカルラよ」


「まあいいさ。これからたっぷりと教え込んでやる」


 どうやらS級というのは間違いないらしい。

 そうか、S級二人が相手か。

 こいつは、楽しめそうだ。

 

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