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ニルデラートファミリー

 ラーメンを食べ終わった後、俺と子供たちは外で遊んでいた。

 うーん。かけっ子も健康的でいいが、何か遊具が欲しいな。

 ブランコでも作るかな。

 俺が遊具設置の構想をまとめていると、何やら見た目あまり感じの良くなさそうなチンピラ風の二人組がやって来た。

 そいつらは肩をいからせ、ドシドシと歩いてくる。

 なんだ?

 揉め事でも持って来たのかな?


「よう、見ねえ顔だな」


「最近来たばかりのもので、どういったご用件で?」


「最近来た? はっ、そうかよ。まあいい、院長を呼びな。ニルデラートのもんだって言えば分かる」


「・・・少しお待ちください」


 一応初対面なので敬語を使いつつ、感じ悪いなと思いながら、俺は院長を呼んだ。

 ニルデラートの者だと伝えると顔色を悪くし、やや小走りで移動する。

 あまりいい話じゃなさそうだぞ。

 俺は後からついて行こう。


「よう、院長。今月のシャバ代払ってもらおうか」


「・・・はい」


 シャバ代?

 それってあれか、暴力団が使う土地代の隠語。

 こっちで言うとマフィアか。

 ここは貧民街だから、この辺を支配しているのはそのニルデラートファミリーって訳か。


 院長は恐る恐るチンピラに金を差し出す。

 止めるべきか?

 シャバ代なんて、こいつらが勝手に決めたルール。

 法的には全く支払う必要のない金の筈だ。


 だが、ここにはここのルールがあるだろう。

 口を挟んで院長たちに迷惑をかけるのは控えるべきか。

 ひとまず黙っておくことにする。


「それにしても、ちょっと見ない間にガキ増えてねーか?」


「はい、色々あって」


「ふーん」


 チンピラは何を思ったか、ニヤリと笑いながら指を鳴らすと院長に一歩近づく。


「これだけ養えるなら羽振りがよくなったんじゃねーのか? これならもう少しショバ代を請求しても良さそうだなあ」


「そ、そんな困ります!」


 院長は慌ててチンピラにしがみついた。

 今は俺が渡した金があるとはいえ、永続的に金を毟り取られたらキツイだろう。

 もし素直に金を渡しても、ならもっと絞り取れると思われ更に取られかねない。


「うっせえぞババア! いいか、お前らがここにいられるのは俺らがいるからだぞ。なら俺らに献上するのが当たり前じゃねーか」


「これ以上は払えません! どうか御慈悲を!」


「あー、うっせえうっせえ。おい、これ以上騒ぐとよう。おいジョン」


「はい、兄貴」


 二人組のもう一人が手の骨をバキボキ鳴らしながら前に出て来た。


「このガキどもに少し痛い目にあって貰おうかなあ?」


「やめて! こ、子供たちに手を出さないで」


 おい。

 こいつら今なんて言った、おい。


 子供に手を出すだと?

 ふざけてるのか?

 それは俺にとっての禁句だぞ?

 俺の中で何かがぷっつんした。


 子供たちは流石に何か感じ取った様で、怖がっており、シスターやステラに引き連れられて孤児院の中に入って行った。


「どうすんだ? あー? 子供が大切ならよう。手前がやることは一つしかねーだろうがよう!?」


 恫喝され、院長は震え上がる。

 もう院長も六十になるこの世界ではおばあさんだ。

 その人に大声を上げるなんて。


 あー、もういい。

 黙ってようかと思ったが、もう我慢出来ん。


「院長。こんな奴らの言うことを聞く必要はないですよ」


「あ?」


 俺がスタスタと前に出て、チンピラの兄貴分の目前で止まる。


「セイマさん。いけません。この人たちに逆らっては・・・」


「黙ってるつもりでしたがね。子供たちに手を出すと聞かされたら黙ってられないですよ」


 こいつらにとって脅迫は交渉手段のひとつだろうが、なめられちゃいけない稼業だ。

 下手したら本当に手を出しかねない。

 ここでこいつらを止める。


「どうやら新顔は俺らのことをよく知らねえらしいな。おいジョン。ちょいと教育してやれ。強めに、な」


「へい、兄貴」


 ジョンと呼ばれた体格のいい男が俺の前に立った。


「へっ、馬鹿な野郎だ。黙ってればいいのによう」


「お前らは俺のタブーに触れた。ちょっと強めに行くぞ」


「ガハハ! 死ねよバーカ!」


 大男のパンチが俺に迫ってくるので、それを片手で止めた。


「あ? あ、あ、あ あ あ あ ぁ ぁ あ あ!!!!」


 ちょいと強めに握ってやる。

 大男の拳がバキバキ音を立てて、へしゃげた。

 あまりの痛みに大男はその場で崩れ落ちる。


「お、おい。何やってんだジョン、ひっ!?」


「じゃあ行くぞ。ちょっと強めに、な」


「お、おいよせ。お、俺を誰だと思ってんだ? ニルデラートファミリーだぞ! 逆らってタダで済むと」


「五月蝿い」


 バカスカベキバスカスドス!!


「あへあわーーーーー!!!!」


 強めにタコ殴りにしてやった。

 全身打撲でボロボロになってしまった兄貴分。

 俺が睨みを効かせると、よたよたと立ち上がり、慌てて逃げて行った。

 弟分のジョンも慌ててついていく。


 全部を見ていた子供たちはわぁっと声を上げた。


「セイマお兄ちゃんつえーー!!」


「いつも院長とシスターをいじめていたやつらよ。いい気味だわ!」


 子供たちは大変喜んでいるようだが、院長の心中は複雑な様だ。


「セイマさん、すいませんでした。ああ、でもニルデラートファミリーに逆らってしまった。この先どうしたら・・・」


「それ程やばい奴らなんですか?」


「暗黒街を牛耳るボスだと言われています。国も手を出さないそうで、こんな孤児院、彼らに手を出されたら」


「暗黒街のボスですか。ひょっとすると、奴隷も扱ってます?」


「え、ええ。おそらくは・・・」


 ほう。

 ほう、そうかそうか。


「あのセイマさん?」


「心配いりませんよ院長。俺がなんとかします」


「な、なんとかって。一体どうやって・・・?」


 ニルデラートファミリーか。

 奴隷も扱っている様だし、ちょうどいい。


 潰すか。

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