孤児院
子供たちが嬉しそうに檻から出てくる中で、出てこない子がいた。
不思議に思った俺はその子に近づき話しかけてみた。
「どうしたの? 具合悪くのか?」
その子は体育座りのまま顔を埋めており、解放された喜びなどかけらのない様子だった。
俺はその子の手を握ると、もう一度話しかける。
「さあ、ここから出よう」
そう言うとその子は顔を上げる。
男の子の様だ。
「僕、パパとママに売られたの。食べさせるご飯がないって言われた」
口減らしで売られたのか。
言葉もない。
何か両親にも事情があったのだろうか?
せっかく産んだ愛の結晶を売るなんて考えられない。
生活がきついなら考えなしに子供を作るなといいたいが。
「そっか。でもな、それでもここにいるよりはいい所があるんだよ」
「何処?」
「孤児院だ。君と同じ境遇の人たちが沢山いる。仲間になれるさ」
「僕はパパとママに捨てられた! そんな僕を構ってくれる人なんていない!」
「ばーか。そんなはずないだろ。確かに君は両親に捨てられたかも知れないが、それで人生は終わりってわけじゃない。これからも続いていくんだ。君には幸せになる権利がある」
「けんり?」
「そ。君はまだ幼い。まだまだ人生これからだ。絶対幸せになれるさ」
その時、ぐー、と男の子のお腹が鳴った。
「お腹減ったか?」
「昨日から何も食べてないの」
「そっか。じゃあご飯食べよう。皆も送る前にご飯食べようか。お腹減ったろ?」
「ご飯!」
「食べたーい!」
子供たちはわいわい騒ぎ出した。
いいぞ、ちょっと元気出てきたかな。
やっぱり落ち込んでる時には飯だよな。
「じゃあ行こう。お兄ちゃんがご飯作ってやる」
「お兄さん、ご飯作れるの?」
「わーい!」
俺は男の子に手を伸ばす。
「さあ、行こうか。立てる?」
「うん。僕、カイ」
「カイって名前か。俺は勢馬。よろしくな」
俺はカイたちを引き連れて孤児院に向かった。
あまり治安がよろしくない一角に、その孤児院はあった。
今にも何処かが崩れてきそうな、教会と隣接しているその孤児院には院長とシスターの二人が経営していた。
そんなある日。
四人の一団がやってきた。
二人はフードを被っているが、おそらくはエルフと一人は成人した男、もう一人は幼い女の子というよくわからない一団であったが、これから子供を沢山連れてくる。世話をお願いしたいとのことだった。
子供を迎えるのは構わないが、沢山というのがネックだった。
何しろこの孤児院はカツカツなのだ。
今でもギリギリの生活で、国から援助は受けているのだが、それでもお金が足りない。
そんな状況にまた子供が増えるとなると・・・。
そう伝えると男はそれ程大きくはなさそうなバッグから、とんでもない額のお金をドサっと渡してきた。
目も眩む様な大金だった。
男はこれを使って欲しいと言い、これから子供たちが増えるだろうから世話をお願いしたいと言った。
それが数日前である。
「セイマさん。また連れてきたんですか!?」
「あ、はい。シスター。またお願いします」
シスターセリスは顔を覆った。
救い主と思われたセイマだったが、連れてくる子供がとにかく多いのだ。
「これ以上連れてこられると困ります」
「いやーすいません。お世話大変ですよね」
「寝る所がないって言ってるんです!」
もう孤児院はパンク状態だ。
ベッドなんか満員で、床に雑魚寝させている状態なのにまだ増えるとなると寝る場所もない。
教会の椅子に並んで眠っているのだ。
「わかりました。早急に新しい寝床を用意します」
「でもそうなると今度は子供たちの世話が・・・」
「そっちもなんとかします」
平然と言っているが、本当になんとかなるのだろうか?
それにこの子供たちだ。
何処から連れてくるのかなんとなく察することが出来る。
この子たちはおそらく奴隷だ。
如何なる方法でこの奴隷の子供たちを連れてきたのか分からないが、もしや、なんらかの非合法な方法で連れてきたのではないだろうか。
ならば、この人たちとは関わるべきではない。
だが、既に関わりを持ってしまっている。
ズブズブだ。
それにセイマがもたらしてくれた資金にも手をつけてしまっているし、あの金が無ければ正直厳しい状況だった為に渡りに船だったのは事実。
そして、もう一つ。
「セイマ。お帰りなさい」
セイマの仲間ステラが満面の笑みでセイマたちを出迎えた。
「ただいまステラ」
セイマも笑顔で応える。
この二人デキているのか?
恋バナがしたいシスターセリスだった。
「また治療して欲しい子がいるんだ。カイこっちに来て」
セイマが連れてきた子供の中に怪我人がいたらしい。
カイと呼ばれた少年はオドオドしながらこちらにやって来た。
「ぱっと見分からなかったんだけど、肩を怪我してるんだ。診てやってくれよ」
「わかったわ。君、こっちにいらっしゃい」
「は、はい」
そう、彼らがここにいてくれて助かるもう一つの点は、このステラが回復魔法を使える点。
子供たちは怪我を日常茶飯事にしてくる。
この貧民街だと、要らぬトラブルに巻き込まれることもしばしばだ。
そんな時、ステラがいてくれるととても助かるのだ。
「さてと、子供たちもお腹が減っている様だし、食事にしましょう」
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