再戦
「確かに奴隷制度は人道的には良いとは言えぬ面もある。聖王国ルーデリッツァなどは奴隷制度反対を唱え、我が国にも意見をしてくる。将来的には奴隷制度を縮小することもあるだろう。そうなればお前の心配も減るのではないか?」
「王様。違う、違うんです」
セイマは首を振る。
王の提案を蹴った形となり、周りが色めく。
「子供たちはそんなあるかも分からない未来に助けて欲しいのではないのです。今です。今助けて欲しいのです」
アルバレスは嘆息する。
これは駄目だ。
交渉が成立しない。
譲歩を引き出せない。
「セイマ。お前の気持ちは分かった。が、どうにもならん。お前にしてやれることは何もない。下がれ」
セイマは目を一度閉じると小さく「分かりました」と言って立ち上がる。
「俺は俺のやり方で子供たちを助けます」
やはり、そうなるか。
この男をこのままにはしておけない。
しかし、こいつを力で止めるというのは。
「待ちたまえ」
ザワつきが起こり、一人の男がセイマの前に立ち塞がった。
剣聖ライアスである。
「久しぶりだね、セイマ君」
「お久しぶりです」
「これから何をするつもりかな?」
「・・・」
「答えないか。行動に移せばすぐに分かることだよ」
「俺は自分の力で、出来る限りのことをしたい。それだけです」
ライアスは目を瞑り、ゆっくりと剣を抜く。
「君がこれから何をするのか、なんとなく分かるつもりだ。だが、それをさせるわけにはいかない」
「止めても無駄です」
「いや、君を止める」
ライアスは剣を構える。
どうやら本気の様で、ちらりとアルバレスを見て許可を願うと、アルバレスはほんの少し考えるとコクリと頷く。
「あれから鍛え直してね。ガッカリはさせないよ」
「では、お受けしましょう」
セイマは剣を抜き、謁見の間は騒然となる。
「ライアス殿が出てきてくれればなんの問題もあるまい」
「うむ。あの平民など叩き斬ってくれるだろう」
両者相対し剣を構える。
達人同士の緊張感が当たりを包み、騒然としている部屋が静まり返る。
チリチリとした空気が辺りを包む。
平民だと侮っていた貴族、騎士たちもこの男は只者ではないと感じ取った様だ。
どちらが先に動く?
皆が固唾を飲んでそれを見守る中。
そして、遂に、
ライアスが動く。
上段からの打ち下ろし。
剣にスキルを込めた必殺の一撃。
前回はこの剣を止められた。
しかし、ライアスはあれから鍛え直した。
正に鬼神の如く、己を鍛え直した。
期間こそ短いが常人の何倍も鍛えた筈だ。
この一撃は、ライアスは意地や信念が詰まっている。
この一撃をセイマはどう受ける?
セイマは、剣を手放した。
誰もが「あっ」と叫んだ。
死ぬぞ、と誰もが思った。
ライアスは目を見開く。
セイマは両腕をクロスすると、何か、分からない力、魔力とは別の何かとしか分からないモノを腕に集中させた。
そして、スキルで限界まで強化された剣で、魔剣はセイマの腕とぶつかった。
結果。
カランカラン、と。
剣の刀身が転がった。
根本から折れた状態で。
馬鹿な!
誰もが思った。
国王アルバレスでさえも、目を見開いて驚愕した。
折れたのだ。
国宝魔剣デュランダルが、しかも、剣同士のぶつかり合いであればまだ納得がいったが、相手は生身の肉体だ。
あり得るのか?
剣と生身の肉体がぶつかり合って剣の方が折れるなどということが。
誰もが、驚き過ぎて声が出なかった。
しばらくすると、ガクリとライアスは膝をつく。
「嘘だ! 嘘だぁ〜〜〜〜!!!!」
ライアスが泣いた。
まるで幼児後退してしまったかのように、涙を流して泣き叫んだ。
こんなライアスを見たのは皆初めてだったが、気持ちは分かる。
ここ最近のライアスの修練は尋常ではなかった。
今になって思うと、それはセイマと戦う為だったのだろう。
しかし、結果は・・・。
考えられないことだった。
生身で魔剣と衝突して逆に折ってしまったのだ。
こんなことが出来る人間が他にいるか?
セイマは一礼をすると、謁見の間を後にしようとするが、騎士たちは慌ててセイマを止めようとする。
「よい。行かせよ」
アルバレスは騎士を下がらせ、セイマを行かせる。
正直、この男を行かせていいことはない。
捕えて牢にでも入れておくのがよいのだが、仕方がない。
ライアスがやられた今、セイマを止められる人間などいないのだから。
これからセイマは行動に移す。
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