奴隷制度
「セイマに話があって」
そう言うステラの瞳にはある種の決意が見て取れた。
一体何を考えているのだろうか?
「考えてたの。クレアのこと、奴隷のこと。これからどうするべきなのか」
どうやらステラも俺と同じことを考えていたらしい。
ステラはこの話をどう着地させるつもりだろうか?
「私、奴隷制度を無くしたい。これ以上、クレアの様な子を作りたくない。セイマ、どうすればいいと思う?」
俺はステラの手を握りしめてしまいそうになった。
それは正に俺も考えていたことだったからだ。
だが、この先で俺も行き詰まる。
奴隷制度を廃止すると一言で言っても、一体どうすればいいのか俺には見当もつかない。
一体誰に相談すればいいんだ。
有力貴族?
いや、もう直接王様に?
「やっぱり、王様に相談するのが一番じゃないかな?」
これが俺の結論。
まどろっこしい真似はしない。
せっかくコネがあるのだから、もう一番偉い人に頼むのが一番ではないだろうか。
「やっぱりそうよね」
ステラはうんうんと頷くと、真っ直ぐ俺を見る。
「決めたわ! 引き返しましょう。王都に」
「いいのかステラ? 君は早くエルフの里に帰らないといけないんじゃないのか?」
せっかく王様との会談がうまくいったんだ。
それを出来るだけ早くにステラのお父さん、つまりエルフの王様に伝えなければならないと思うのだが。
「報告はアルトスに行かせましょう。私たちは王都に戻る」
それでいいのか?
アルトス、納得するかな?
「私は嫌なの。もうクレアみたいな子を見たくない。その為には奴隷制度を廃止しないと!」
そうだな。
その通りだ。
奴隷制度を廃止させる。
もうクレアみたいな子を出させない。
俺も、ステラも、クレアだけじゃなくて多くの苦しんでいる子供たちを救いたい。
方針は固まった。
明日、俺たちは王都に引き返す。
「絶対に成りません!」
その日の朝。
アルトスの声が盛大に響く。
昨日の夜、ステラと話した計画をアルトスに打ち明けたら、当然アルトスは大反対した。
「何をお考えなのですか姫様!? せっかくここまできたのに王都に引き返す? しかも、奴隷制度を廃止するように王に呼びかける? 何を馬鹿なことを! 友好国の姫がそんなことを言えば、両国の関係に大きな溝が出来てしまうことなど言うまでもないことでしょう!?」
「饒舌に意見してくれてありがとう。でも、これはもう決めたことなの。行くわ、私、王都に。そして奴隷制度を廃止させる」
「またそうやって一人で決められて・・・いや」
アルトスは視線を俺に向けるので俺は速やかに天井を見上げた。
「また貴様だな? 貴様がまた姫様を唆したのだな?」
唆すとは心外な。
二人で計画しただけだ。
「セイマは関係ないわ。最終的に決めたのは私の意思だもの」
ステラは腕を組んで堂々と胸を張った。
「くっ、こんな、奴隷の子供を拾ったがために・・・」
「あう・・・」
恨めしそうにアルトスはクレアは睨みつけ、その圧力に押させてクレアは身を縮こませる。
俺はすぐに割って入った。
「アルトス。お前の気持ちは分かるし、俺には何を言っても良いけど、クレアに文句を言うのはやめてくれ。この子は被害者なんだ」
「そうもいくか。大体貴様がこんな子供を拾ってくるから」
「アルトス」
俺は声を低くして言う。
「これ以上、クレアを悲しませることをこの場で吐くな。それ以上騒ぐとその口、塞ぐぞ?」
「な、ぐっ・・・」
俺の圧に押されてアルトスはたじろいだ。
いつもの調子で人間批判をするようなら黙ってはおれない。
この子になんの罪もないのだから。
「や、やめてください。喧嘩はダメです。あたしのことで喧嘩はしないで下さい!」
クレアが泣きそうになりながら俺とアルトスの間に入った。
しまった。
俺がクレアを泣かせてしまった。
俺は優しくクレアを抱きしめる。
「悪かったね。もうしないから大丈夫だよ」
「ほんとに?」
「ああ、本当だよ」
俺が笑うとクレアも微笑み返してきた。
かわええ、この子かわええ。
それはそれとしてケジメはつけなくては。
「アルトス。申し訳ないと思ってるよ。ただ俺とステラの気持ちは同じだ。奴隷の子を無くしたい。この気持ちを曲げるつもりはない」
「貴様・・・」
アルトスは悔しげに唇を曲げる。
「姫様。里では陛下並びに家臣一同、姫様の帰りをお待ちしております。この人間はここに置いておき、我々は帰りましょう」
「そうなのよね。お父様も帰りを待ってるし、このままじゃ不味いわね」
アルトスはようやく説得が実を結んだと思ったのか、満面の笑みを浮かべる。
「ええ、ですので帰りましょう」
「だからアルトス。貴方一人で先に帰ってこのことをお父様に伝えてもらえるかしら?」
「・・・・・・は?」
意味がわからなかった様でアルトスはポカンと口を半開きにした。




