表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/87

勝敗の行方

 ライアスはほくそ笑む。

 上手く勝負に乗ってくれたとでも思っているのかもしれない。

 現状、ライアスが俺に一矢報いるには、俺の刀を折るしかないわけだから、ほくそ笑むのも理解できる。

 まともにいけば俺はライアスの剣を躱して、勝負を決めることが出来る。

 それを彼は勝負に持っていったわけだ。


「信じるぞ。相棒」


 天羽々斬を握り締め、ライアスの前に立つ。

 ライアスは一度呼吸を整えると、大きく目を開く。


「行くぞ!」


 振り上げた魔剣デュランダルが光を放つ。

 おお、これがスキルの力か。


「受けよ! 奥義『絶剣』!!」


 全てを切り裂くという最強の一撃。

 それを真っ向から受けた。


 結果はーー。




















 キィーーーーーーーーン。


 響く金属音。


 そして、俺の天羽々斬は。



























「馬鹿な・・・」


 健在。

 折れるどころか刃こぼれ一つない。


 俺は笑顔を向けた。


 そこでーー。


「それまで」


 王様が手を上げて、立ち合い終了を宣言した。


 ゆっくりと刀を鞘に納める。

 対してライアスは王様の言葉を聞いていなかったのか、はたまた、聞いている上で動けないのか、微動だにしない。


 王様は、額に手を当てて何やら考え込んでいる。


「・・・まさかな、ここまでとは」


 そう呟いて、手をどけると俺を見た。

 ここまで自分の国最強の人物が打ちのめされるとは思っていなかったのだろうか?

 その顔色はお世辞にもいいとは言えない。


 まあ、いいか。

 俺は楽しめたし。

 そっちにも色々あるだろうけど、上手くやってくれ。


 ライアスはまだ動かない。

 何やらぶつぶつ言っている。


「馬鹿な。陛下からいただいたこの魔剣で、私の奥義を放って、それを受け止めた? 有り得ない・・・」


 相当ショックだったらしい。

 まあ、生きてればショックなことなんていくらでもあるだろ。

 俺だってこの千年、ショックなことだらけだったぞ。

 多分、今まで剣でそんなショックを受けたことなんてなかったんだろうけど、これも人生ってことで。

 どんまい。


「ライアス。よい、戻れ」


「・・・はっ」


 声をかけられてやっと硬直から解けたライアスは、剣を納めると、ふらふらしながら王様の横の立った。


「ライアスがここまで手も足も出ない人間がいるとは、正直想像もしていなかったぞ。セイマよ。そちは人間か?」


「ええ、正真正銘の人間ですよ」


 なんか最近その質問されること多いな。

 まあ、千年生きる人間なんていないから分からないでもないけど。


「どうだセイマよ。わしに仕えんか。お前ならば地位も、名誉も、金も思いのままだぞ?」


「え?」


 それって俺に騎士になれってことか?

 俺が騎士か。

 うーん、似合わない。

 なりたいとも思わない。

 堅苦しそうだし、自由がない感じがする。


「せっかくの申し出ですけど、この後、王女達を送る依頼を受けてまして」


 やんわりと断ってみる。


「ならば、送った後はどうだ? 何か予定があるのか?」


 食い下がって来た。

 困ったな。


「いえ、わたくしは気ままな冒険者があっていると思うんです。ですので、断らせていただきます」


「冒険者では何かあった時に色々と困るだろう? わしに仕えれば、福利厚生などもしっかりとしておるぞ? 老後はどうする?」


 おお、ここ中世って感じの文化形態なのに、もうそんなのが充実しているのか?

 やっぱり地球とは違うのか。

 それとも、中世はその辺りしっかりしていたのか?

 確かに老後とかのことを考えると、いつまで身体が動くか分からない冒険者よりは潰しがききそうだ。

 そうなんだけど・・・。


「わたくしは自由が好きなのです。縛られたくはありません」


「ふむ。わしが直々に言っているのだ。それでも聞かんか?」


 王様からの直接のお誘いを断れば不敬に当たるか。

 下手をしたら牢屋行きか?

 いいさ、もしそうなったらとんずらすればいいだけだ。


「考えは変わりません」


 王様は圧を強めてきた。

 おおう、一般人だったらビビってるね。

 でも、これでもこちとら神様の圧を受け続けた身なので、今更人間の圧にビビる程なよっていないんだよね。


 俺がびくともしないと悟った王様は圧を弱め、幾分力を抜く。


「・・・仕方ないな。だが、考えが変わったらいつでも来い。歓迎するぞ」


「はい。その時はどうぞよろしくお願いします」


 まあ、ないと思うけどね。

 次の王様はステラに視線を移す。


「さて、王女よ。余興に付き合ってくれて感謝する。もうこちらの用事は終わった。そちらからは何かあるかな?」


「いえ、こちらも何もありません」


「そうか。最高級の宿を予約してある。今日はそこで疲れを取り、明日帰国されるがよい」


「陛下。お心遣いいただきありがとうございます」


 ステラは一礼すると、ゆっくりと謁見の間を後にし、俺達はそれに続いた。


 今日一日、ずっと退屈だったけど、最後はちょっと面白かったな。



*********


 勢馬達が立ち去った後の謁見の間。


 しばらく沈黙していたライアスが、真っ青な顔で国王に膝をつく。


「王よ。申し訳ありませんでした」


「何を謝るライアス」


 表情を変えずに国王は問い返した。

 ライアスは頭を上げることなく、喋り続ける。


「頂戴した魔剣デュランダルをもってしても、彼の剣一本を折ることも叶いませんでした。面目次第もございません」


 ブルブルと、怒りか、悔しさか、情けなさか、あるいはその全部が合わさって震えているライアスに、国王は淡々と語る。


「うむ。わしもあれには驚いた。ドラゴンの鱗すら容易く切り裂くそちのスキルを以てしても刃こぼれ一つしないとはな。どうやら、持ち主だけではなくあの剣も規格外の様だ。一体どこで手に入れたのやら」


 あれ程の名刀となると名のある人物が打ったものに違いない。

 しかし、一体誰が鍛えた物やら。

 そもそもデュランダルは神から賜ったと伝説にある、世界最硬と名高いアダマンタイトという鉱石が素材だ。

 それと打ち合えるなど、一体どんな物質だというのだ。


「剣は勿論、彼の腕も怪物でした。まるで歯が立たなかった。あんなに簡単にあしらわれるなど、経験がありません。何故今まで無名でいたのか」


「奴をなんとしてでもこちらに引き込みたいが、どうやらエルフの王女と深い縁が出来てしまった様子だな。あのままエルフに取られるのは痛いが」


 実に悔しい。

 エルフよりもこちらが先に接触していればあるいは手に入ったかもしれないのに。


「一騎当千と言う言葉はありますが、実際にそんな人間はいないと思っておりました。しかし、彼は違います。千どころか万の軍勢も彼を押し留めることは出来ないでしょう。もし事を構えれば、我が軍数万の軍勢を跳ねのけて、この王宮まで駆け上がり、その剣は王の首に届くものかと」


 国王は唸る。


「・・・つまり、奴を怒らせれば、ただ一人の人間にこの国は亡ぶと?」


「考えたくはありませんが」


 ため息をついた国王は、座る位置を直すと深く腰を落とす。


「奴はエルフ国と結びつきが出来た。もし、あの国と戦争になることがあれば、もれなく奴と戦うことになる。そうなれば敗北は必死か。くはは。まったく難儀なことよな」


「笑い事ではございません陛下。私は本気で心配しています」


「そういえば、以前、もし仮にS級冒険者数人がこの国に反旗を翻したらどうなるかを議論したことがあったな。あれは怪物だ。S級数人分の働きはするだろうな」


 咎めるように言うライアスをしり目に、国王は苦笑する。


「まあ、常識人に見えたし、善人にも見えた。こちらが誤らねばそう事は大きくならんだろう。心配するな」


「・・・はい」


 こちらにつかないというのなら、最悪殺した方がいいのではないかとすら思ったが、ライアスを軽くあしらうような化け物だ。

 暗殺も高確率で失敗する。

 そうなった時どうなるかなど想像もしたくない。

 出来るだけ、良好な関係を維持したい。

 ライアスは万の軍勢を退け、自分に剣を突き立てると言っていたが、確かに想像できてしまう。

 実際、ライアスをあしらっている様を見た時に背筋が寒くなるのを感じた。

 久しく忘れていた恐怖。

 思い出したくないようなものを思い出させてくれた。

読んでくださりありがとうございました。

星評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ