対決、剣聖ライアス
王様は目を丸くして、大きく笑った。
「はっはっは。強者との戦いを望むか! ふむ、よい。実はわしも王女にお前が強いと聞いてどれ程のものなのか試してみたかったのだ。これは良い。両者の希望は一致したな」
豪快に笑った王様は、隣にいる騎士に目をやった。
「では、この男と戦ってみるがよい。この男こそわしが信頼するもっとも強き者だ」
へえ。
ただ者ではないと思っていたけど、王様が一番強いと豪語する程の人物とはね。
「セイマ」
後ろからステラが声をかけてきた。
「何?」
「彼は剣聖ライアス。この国随一という剣の使い手よ」
ほぉ。
あれが以前ステラが言っていた剣聖か。
まだ二十代後半てくらいの年齢じゃないか。
銀髪の超イケメン。
それなのに剣聖?
そんなに強いのか。
そりゃいい。
じゃあ、この国で一番強いってことか?
まあ、S級冒険者もいるし、本当の所は分からないけど、トップ5に上るくらいには強いに違いない。
やだどうしよう。
ちょっとワクワクしてきた。
「お手柔らかに頼むよ。少年」
「え? はあ」
少年?
俺ってそんなに幼く見えるか?
見ため十九だから少年ではないと思うが、まあいいか。
多分、なめられてるな。
余裕を感じさせるライアスと握手を交わして、向き合った。
*********
ライアスと勢馬はお互い剣を抜いて構えた。
勢馬は戦いたくてうずうずしているようで、顔がにやけている。
対してライアスは久しく感じていないプレッシャーに圧されていた。
顔を見た瞬間に分かっていた。
足運びや体幹のバランスが、尋常ではないと。
相当な使い手であることはすぐに理解した。
だが、こうして剣を持って向き合うと、その異常性に気が付く。
全く底が見えない。
これまで何人もの強者と戦ってきたがこんなことは初めてだ。
常人であれば、あの剣気に触れただけでも倒れてしまうだろう。
観戦している者達も、緊張感は伝わっているようで、じわりと汗をかいている。
なめていた。
まさか、これ程とは・・・。
「始め!」
掛け声がかかった瞬間に二人は同時に前に出た。
剣と剣がぶつかり火花を散らす。
速いだけではない、なんという重い剣だ。
ライアスは早くも必殺技を繰り出す。
急所のみを狙った五連続の神速の突きである。
今までこれを食らって無事だった者はいない。
剣の師匠もこれで戦闘不能にしてしまった程だ。
だが、勢馬はそれを全て捌ききった。
有り得ない。
ライアスは瞠目する。
勢馬は楽しそうに、それをそのまま返す。
「剣神雷鳴流 三日月」
更にカウンターを入れられた。
初体験。
必死に受ける。
それからも勢馬の攻勢は続く。
驚くほど速い剣速。
見まごう程に素晴らしい足裁き。
巧みな超絶技巧。
どれもこれも今まで受けてきたことがない超人的な技ばかり。
初めて感じる恐怖。
何もかもが初めて尽くしだ。
だというのに、対して勢馬は実に楽しそうだった。
まるで久々に壊れないおもちゃを見つけた子供みたいに、「これはどうだ?」「これは受けられるのか?」「じゃあ、これは?」そんな言葉が聞こえてきそうな無邪気な顔で、悪鬼羅列の如き攻撃を繰り出してくる。
まるで子供と大人。
いや、それ以上、赤ん坊と達人くらいの差を感じる。
才能の塊として生を受け、若くして剣聖と呼ばれていた自分が、まさかこれ程の達人と巡り合うとは。
だが、不可解だ。
この男の剣の才能は凡人レベル。
間違っても才能に恵まれて生まれてきた人間のそれではない。
言ってみればこの剣は「努力の剣」。
一日も欠かすことなく剣を振り続けてきた者が辿り着く至高の終着点。
この境地に至れるには膨大な努力量が必要なはず。
だが、どうみてもこの男の年齢はいい所二十歳前後。
おかしい。
どうすればこの剣を身につけられる?
この若さで、この才能で、どうしてこの極致に至れる?
分からない。
何一つとして分からないし、正直もうすぐにでも逃げ出したいが、それでもだ、自分にも誇りがある。
このままいいようにやられて終わることはできない。
王も見ているのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ライアスは吠えた。
思い切り剣を押し付け勢馬を吹き飛ばす。
壁に激突した勢馬だったが、ダメージなどないだろう。
だが、これで仕切り直すことはできる。
*********
凄い凄い。
この人本当に凄い!
俺は喜びに震えていた。
この人二十代後半くらいだろ?
だっていうのに何でこんなに強いんだ?
俺が剣を持って二十年とそこいらの時は全然大したことなかった。
アズルさんの方が年上だっていうのに、このライアスって人の方が全然強い。
これが才能か。
人間はここまで短時間で強くなれるのか!
わくわくが止まらない。
この人はあと二百年か修業したら俺に追いつくのではないか?
そんな期待が沸いてくる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ライアスが吠えて、俺を思い切り壁に突き飛ばす。
なんとしても一矢報いたいという思いが伝わってくる。
じゃあ、この後何がある?
何か奥の手が残されているのか?
胸をときめかせてゆっくりとライアスとの間合いを詰める。
「君は強い。圧倒的な程に」
ライアスはそう言って構えを取った。
「だが、私にも意地があってね。ここまでいいようにされて黙って負けを宣言するわけにはいかない」
「何かあるんですね? 奥の手が」
「お見せしよう。我が奥義を」
ライアスの取った構えは上段からの振り下ろしをするためのものだ。
やりたいことは解った。
俺が防御をする暇さえ与えずに、一瞬で勝負を決めようという腹か。
「私のスキルを教えよう。『絶対切断』。これが私のスキルだ」
「・・・それは文字通りの意味で」
なんでも切断出来る一撃か。
それがもし可能だとすれば、どんなに硬い盾や鎧、鱗も意味を成さないわけだ。
「限りなく切れる。くらいのものだ。だがーー」
キラリと、ライアスが持っている剣が光る。
「この魔剣デュランダルを手にした私に限り、斬れぬものはない!」
おお、魔剣か。
かっこいいな。
ライアスの持っている剣に注目する。
装飾の彩られた美しい剣だ。
なるほど、あれが魔剣か。
確かに普通の剣とは違って、何か力が秘められていそうな気がするぞ。
「君を殺したくはない。だから、私は君の剣を狙う。間違っても身体を突き出すような真似はするなよ」
ふーん。
優しいことで。
俺は自分の剣を見る。
何百年も俺と共に戦ってくれた天羽々斬。
この刀が斬られる、か。
じっと刀を見つめる。
光の加減か、刀が光った気がした。
まるで「信じていいよ」と言ってくれているみたいに。
「よし、信じてみるか」
俺は構えを取った。
「受けて立つ!」
読んでくださりありがとうございました。
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