王様に会うことになった
「こうしてお目にかかるのは初めてであるな。アレステラ王女よ」
豪奢な身なりの男は椅子に腰かけたまま、厳かに声をかけた。
この顎髭を蓄えた四十を超えたくらいの男こそ、この国の国王、アルバレス=フォン=シュレーンである。
なるほど、確かに国王の貫禄がある。
「さあ、かけられよ」
「お招きいただきありがとうございます。国王陛下。では、失礼します」
ステラはゆっくりと椅子に腰かけ、アルトスとリーゼはその後ろに付き従う。
「聞けば、道中モンスターと遭遇したとか。よくぞ無事で辿り着いたな」
「ええ、ですが、幸運にも優れた冒険者に助けられました。ここにいるのは全て彼のおかげです」
それを聞くとアルトスの顔が少し歪んだ。
「ほぉ、優れた冒険者とな。よもやS級かな?」
「いえ、ランクは低いですが、実力的にはそれと同等と私は考えています。彼のおかげでモンスターも、それに山賊も討伐することが出来ました」
「山賊にも会ったのか。それは大変だったな」
「全てはセイマ。いえ、その冒険者のおかげで乗り越えることが出来ました」
国王は顎に手を当てて、何かを考えている。
「それ程強いのか?」
「彼よりも強い者を私は知りません」
国王の目が光った。
「ほぉ、それはつまり貴殿の御父君、魔道王ルバルディス殿よりも強いというのか?」
「はい」
「ふうむ」
再び国王は考え始める。
そして、ふっと顔を上げた。
「ちと、興味が沸いたな。後で会わせてもらえるだろうか?」
「是非」
ステラはコクリと頷き、花のような笑顔を向けた。
これには経験豊富な国王もほぅっと息を吐く。
「では、面倒事はさっさと終わらせてしまおう。まずは、貴国の開国をいつ頃にするかということであるが」
「その点に関してはお配りした資料をご覧ください」
こうして、会談は幕を開けた。
*********
長いな。
どれくらい待っただろうか。
いつまで経っても迎えが来ない。
朝に会談が始まって、もう日は沈むというのに、まだお呼びがかからない。
こんなにも時間がかかるものだったのか。
くっ、こんな時スマホがあったらいくらでも時間を潰すことが出来るのに。
修業中はすっかり忘れていた文明の利器だったが、老子が旅立つ時に記憶を思い出させてくれたので、スマホなどの記憶もつい最近のことの様に残っている。
ああ、ソシャゲの続きがやりたい。
ラノベや漫画やアニメの続きが気になる。
修業時代、初期に思っていたことをもう一度思い出してしまう。
そんなことを考えていると、もしや俺は忘れられているのではないかと思うようになった。
会談が終わって気の抜けたステラ達は俺をほっぽって帰ってしまったんじゃないだろうか?
いやいやまさか。
アルトス一人だったらありそうな話だが、ステラに限ってそれはあるまい。
だとすると、会談はまだ続いているということか。
まあ、歴史的な会談になるだろうし、時間もかかるか。
そう思っていたら、ノックがした。
「はい」
ドアが開けられステラ達が入って来る。
おお、終わったか。
「お疲れ。終わった?」
「終わったー。疲れたー」
ステラは身を投げるように椅子に腰かけた。
「姫様。お行儀が悪いですよ」
「もういいわよー。疲れたわよー」
リーゼに窘められたステラだったが、態度を戻そうとしなかった。
よっぽど疲れたのだろう。
気も張ったはずだ。
お疲れステラ。
「ですが、姫様。セイマ殿をお呼びに来たのですから」
「うん。そうだったわね」
ん?
俺を?
「あのね、セイマ。国王陛下が貴方に会ってみたいって」
「は?」
王様が俺に会いたい?
何でそんな話になってるの?
「姫様が道中とても強い冒険者に護衛をしてもらったと言ってしまったのです。それで国王陛下も是非会いたいと仰られて」
「ええ~」
ステラ、また面倒くさいことをしてくれたな。
俺は王様に何て会いたくないぞ。
面倒くさい。
でも、王様だしな。
断れないよな。
会うしかないのか。
「まーまー、顔を売るチャンスよセイマ。ここはびしっと決めてきなさいよ!」
「はあ。分かった。会うよ」
俺は立ち上がった。
面倒なことにならないといいけど。
ステラに連れられてやって来たのは謁見の間。
海外ドラマとかでよく見るあそこである。
赤い絨毯が伸びた先に、王座があり、そこに座っている中年のおっさんが王様なのだろう。
うん、偉そうだ。
威厳もあるな。
王冠は被ってないけど、ああいうのは式典用なんだろうな。
俺はゆっくりと膝をついて、頭を下げる。
確か、こういうのって頭上げちゃいけないんだよな。
ラノベで読んだ。
「そちがセイマか」
声をかけられた。
ここで顔を上げていいのか?
いや、ダメかな。
声をかけられたんだから返事はして良いよな?
一応そのままで答える。
「はい、王様」
「よい、面を上げよ」
ゆっくりと頭を上げた。
よく見ると、王様の隣に騎士が一人いた。
ほぉ、あの騎士、中々強いね。
立っているだけで分かる。
「アレステラ王女を助け、ここまで連れてきたようだな。中々あっぱれな男よ」
「はっ、お褒めの言葉をいただき、ありがたき幸せ」
普段は絶対に使わない言葉を使ってみる。
この言葉使い合っているんだろうか?
「そちに褒美を取らす。なんなりと申すがよい」
「は? 褒美、でございますか?」
俺はキョトンとする。
何故この国の王様が俺にご褒美をくれるので?
「うむ。そう不思議がることではない。この度の会談はこの国にとっても非常に重要な価値を持つ。それを成功する役を担ったそちには褒美を与えるだけの十分な理由があるのだ。さあ、申せ」
ええー。
褒美?
いや、困ったな。
別にこれといって欲しいものないし。
「わたくしはたまたま王女を助けたに過ぎません。褒美と言うならば、十分な礼金を受け取っております。これ以上は不要でございます」
「ふーむ。無欲な奴。気に入った。だが、それではこちらもメンツが立たん。分かるな? お前には褒美を受け取ってもらわねばならん」
そういうものか。
顔を立てて貰ってもいいけど、さて、何を貰おう?
俺が欲しい物。
うーん、欲しい物ね。
少し考えて、俺はあることを思いついた。
「では、強者との戦いを」
「ん?」
「私は強者との戦いを望みます。王様が信に置く強者と戦ってみたくございます」
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