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誓い

「いやー、まー、何と言いますか・・・」


 俺が返事に窮しているとステラが助け舟を出してくれる。


「記憶喪失なんですって。何も覚えていないらしいわ」


「ええ!?」


「まあ、そういうこと。あまり気にしないで」


「そう、ですか。ですが、これでセイマ殿への態度を改めなければならなくなりました」


「は? 態度?」


 アルトスと違ってリーゼは俺にとても礼儀正しく接してくれているけど、これが変わっちゃう?

 このままでいいんだけど、態度悪くなる?

 それは困る。


「聖人として扱うべきではないかと」


 聖人て? なんぞ?


「聖人だと!!」


 激しく反応したのはアルトスだ。

 眼を血走らせてリーゼに歩み寄る。


「馬鹿を言うな。こいつは人間だぞ。人間を我らの里で言うところの聖人として崇めろというのか!」


「あれ程の霊格を備えた神獣を付き従える方です。もしあのリルという神獣が里にいたならば間違いなく信仰の対象となる。ならば、その主であるセイマ殿も、聖人として扱うのが妥当でしょう」


「そんな、そんなことがあって堪るか。こいつは人間。ただの薄汚い人間なんだぞ!!」


「いい加減にしなさい!!」


 ステラが大声でアルトスを怒鳴りつけた。

 驚いたアルトスは、目を見開いてステラを見る。


「セイマを聖人とするか、それはこの際置いておくわ。でも、アルトス、言ったわよね。セイマを尊厳を守り、一人の旅の同行者と認めると。それが何? 薄汚い人間? どの口がそれを言うの?」


「姫様、ですが・・・」


「ですがもへちまもないわ。セイマへの侮辱は私への侮辱よ。貴方は何度私の顔に泥を塗れば気が済むの?」


「そんな、私が姫様の顔に泥を? そんなことがある筈が・・・」


「気が付いていないのね。貴方はずっとそれをしてきたのよ」


「・・・」


 アルトスはナワナワと震えながら膝をついた。

 俺はもう流してるんだけど、ステラは耐えられなかったということだろうか? 俺への侮辱が。

 その気持ちは感謝したい。

 でも、このままアルトスが蔑ろにされるのはちょっと可哀そうかな。

 ずっとステラが生まれた時から護ってきたわけだし、今はステラにぞっこんな様だし、それがこんなに言われちゃキツイだろ。


「まあまあ、俺は気にしちゃいないからさ。アルトスもそんな気にすんなよ」


 俺は出来るだけ気さくにアルトスの肩に触れた。

 だが、それをアルトスは払いのける。


「・・・触るな」


 酷く底冷えのする声でそう言った。


「私に、触るな」


 そのまま部屋を出て行く。


「隣の部屋で休みます」


 そう言ってドアを閉めた。

 沈黙する一同。

 これは、ちょっと空気が重いね。

 何とかしないと。

 だけど、さっきみたいに俺が出しゃばると余計に拗れそうなんだよな。

 さっきも多分俺、盛大に逆恨みされただろうし。

 やれやれ困ったね。

 アルトスとの仲を改善するには一体どうすればいいんだ?


「それでセイマ。追った黒いのはどうしたの?」


 おっとそうだ。

 ステラにその報告をしないと。


「ごめん。毒を飲まれた」


「・・・死んだの?」


 頷くと顔を顰めるステラ。


「そう。随分と潔いわね。じゃあ、何も聞き出せなかった?」


「残念ながら」


 ため息をつきながらステラはベットに腰を下ろした。


「正直、半信半疑だったけど、本当にいたのね。私を狙う人間が」


 不安なのだろう。

 表情に陰りがある。

 こんな時、何と言ってあげればいいだろうか?

 命を狙われたことのない俺には彼女の心情を察することしか出来ないが、とんでもないストレスがかかっているに違いない。

 護ってあげたい、この子を。

 誰が裏で糸を引いているか分からないが、卑劣な連中にステラの命を奪わせはしない。


「ステラ、君は俺が護る。安心してくれ」


 胸に手を当てて誓いを立てる俺を、ステラは目をキラキラさせて見ていた。


「うん。頼りにしてるよセイマ」


 もう王都まで間近に迫っているが、それまでは必ず護り抜いてみせる。


「じゃあ、部屋の外にいるから、安心して寝てくれ」


「あ、待ってセイマ」


 部屋を出ようとしたらステラに呼び止められた。

 振り返ると、ステラは眉をきゅっとさせて言う。


「この部屋にいてほしいんだけど、駄目かな?」


「えっ?」


 ええ、部屋に?

 男の俺が?

 それは、不味いんじゃないでしょうか?

 うん。不味いよね。不味い不味い。

 変な汗が出てきた俺は、口を歪めながら拒否する。


「い、いや。女性二人がいる部屋に俺がいるのはどうかな?」


「でも、さっき襲われたばかりだし、また窓から侵入してくるかもしれないし」


 確かに、それはそうだが。

 でも、女性二人が寝ている部屋に俺がいるっていうのは、駄目じゃないでしょうか?


「それとも、セイマは私達が寝てる間に変なことする?」


「しませんけども!」


 ここはハッキリと否定しておかないと。

 俺はブンブン首を横に振った。


「セイマ殿。私からもお願いします。姫様は不安なのです。少しでも安心していただきたい。どうか」


「リーゼまで。・・・いいの?」


「私は構いません」


 アルトスがここにいたら一体何と言うか。

 想像しやすいな。

 いなくてよかった。


 観念した俺はため息をついた。


「分かった。ここにいるよ」


「ほんと!」


「ああ、絶対に君を護るから」


「うん。ありがとうセイマ!」


 ステラは笑顔になるとベットに入った。

 続けてリーゼもベットに潜り込む。


「それじゃあ、セイマ殿。お休みなさい」


「ああ、お休み」


 ゴロンと反対側を向いてリーゼは寝てしまった。

 部屋の隅っこに陣取った俺は、このまま警護につく。

 しばらくし、寝息が聞こえ始めた頃、もぞりとステラが起き上がった。

 寝てなかったのか?


「セイマ。ちょっといい」


「ん。どうしたステラ。眠れないのか?」


「うん。ちょっとね」


 無理もないな。

 意識がない時に何が起こるのかわからないのだ。

 安心して眠れるものではないだろう。


「ねえ、手を握っていてくれない?」


「手を?」


 ステラが差し出した手をマジマジと見ながら、俺は判断に迷う。

 寝ている女の子の無防備な手を握る。

 童貞には中々ハードルが高いミッションじゃないか。

 俺は手汗が気になって、一度ゴシゴシと服に手をこすりつけた後、ゆっくりとステラの手を握った。

 ステラはうっすらと笑って握り返してくる。


「ありがとう。寝るまででいいから」


「ああ、安心してお休み」


 それからステラはしばらくすると寝息を立てて眠りについた。

 この先何があってもステラを護り抜くと誓う。

 例え相手が誰であってもだ。


読んでくださりありがとうございました。

星評価よろしくお願いします。

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