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魔法修行

「一万回!」


 俺はノルマの素振りをこなしてタオルで汗をぬぐう。

 もうすっかりこの素振りも身体に馴染んできたな。

 一体どれだけの回数をこなしてきたんだろう?

 もう数えるのも馬鹿馬鹿しい。


「勢馬君。君がここに来てどれくらい経ったか分かるかの?」


「さあ、二、三百年くらい経ちましたか?」


「うむ。今日で丁度二百年目じゃ」


 二百年か。

 長いようで短い二百年だった。

 最初の内は娯楽に飢えていたけど、今ではそんなことも気にならなくなった。

 俺もすっかりストイックになったものである。


「では、君が待ちに待った魔法を教えようぞ」


「本当ですか老子!」


 長かった。

 苦節二百年。

 ようやく魔法を教えてもらえる日が来たのだ。

 思わず涙が浮かぶ。


「まずは講義じゃ。魔法には火、水、土、風、雷、光、闇の七属性が存在する。それと特殊系魔法もあり、これらは誰でも使えるものではなく相性がある。君にはどの属性が相性がいいのかチェックをしてもらう」


「属性に相性ですか。全部使えるようになりますかね?」


「難しいじゃろうな。後天的に才能が開花する場合もあるが、大体が先天的な才能がモノを言うのでな」


 そうなのか。

 俺が物語の主人公なら全属性が使えるようになるんだろうけど、望み薄だろうな。

 老子がそんなズルを認めてくれるはずもないし。


「それではチェックしようかの。この水晶に手をかざすがよい」


「は、はい」


 これはなんだろう。

 いつものように虚空から出現した水晶に手を当てる。


「では、魔力を流し込んで見よ」


「え、流し込んで見よと言われましても。魔力って何って感じなんですが?」


 そんなちょっとやってみろ、みたいに言われても分からん。


「ふむ。異世界の人間は馴染みがあるから言われんでも出来るんじゃが、逆に魔法が全くない世界の君からしてみたらイメージできんものなのかもしれんな。よかろう。わしが君の身体に魔力を流す。これが魔力だと認識せよ」


「は、はい」


 そう言うと老子は俺の手を触り、何かを念じた。

 するとどうだろう。

 俺の中に何かが流れ込んで来るような感覚に襲われた。

 なんだこれ、何か熱のような、それでいて冷たいような何とも言えない奇妙な感覚は?


 これが、魔力。


「目を閉じよ。そして認識せよ。わしが送った魔力はほんの少し。だが、君の中にも既に魔力は存在しているはずじゃ。わしが流した魔力と同じものが君の中にもある。それを感じ取れ」


 俺は指示に従い目を閉じると、今老子が流してくれた魔力と同じ感覚が俺の中にあるのか意識を向けた。

 すると、確かに存在する。

 俺の中にも老子と同じものが。

 おお、これが俺の魔力か!


「あ、ありました俺にも魔力! こんなものが俺の中にあったなんて」


「君が死んで今の肉体になった時に既にあったんじゃよ。今まで意識を向けなかったから気が付かなかっただけでな」


 そうだったのか。

 つまり、俺は二百年前から魔法が使えたのか?


「では、その魔力を水晶に向けよ」


「え、えっとどうやって?」


「イメージせよ。今、君の中にある魔力を押し出すイメージじゃ。それを水晶に向けるのじゃ」


「む、むむ」


 そうは言っても難しい。

 一体どうすればいいんだ?

 何か取っ掛かりのようなものがあればいいんだけど、何をすればいいのかが分からない。


「難しいかの? では、血液が体内を循環しているのはイメージできるか? それを魔力の置き換えて、魔力が体をめぐっていると想像してみよ。そして、それを体外へと放出するイメージを作り出すんじゃ」


 血液を魔力の置き換えるのか。

 それを外に出すイメージ。

 うん、それならいけそうだ。


 俺は老子の助言に従って、魔力を外に押し出すイメージを膨らませた。

 腹の底に渦巻いている魔力を腕に、そこから指先に伝い、そして、外に。

 魔力は外へと放出された。


「で、出来た」


 眼を開けると、手がポワンと光っている。

 これが俺の魔力。


「それを水晶に向けて」


「はい」


 俺は手をゆっくりと水晶にかざす。

 すると水晶はいくつかの色を放ち始めた。


「ふーむふむ。ほぉ、君才能があるぞ」


「ええ!! 本当ですか!」


 やった!

 正直まったく期待していなかったが、どうやら魔法の才能はあるらしい。

 もしかしたら全属性が使える?


「風と水、雷と相性がいいようじゃな」


「そ、そうですか」


 属性三つ。

 流石にそう上手くはいかないか。


「えっと、因みにこれだけの属性が使える人間は異世界に行ってもかなりレアなんですか?」


 期待を込めて聞いてみる。

 俺だってちょっとは特別感が欲しい。


「そうじゃな。五段階にわけるとしたら四と言ったところか」


 なんとなくそこそこ優秀って感じだな。

 まあ、駄目よりはいいけど。


「あっちには全属性が使える天才もおるぞ」


「あ、そうですか」


 やっぱり思うようにはいかないし、上には上がいるもんだ。


「他にも召喚術や死霊術等の特殊な魔法はあるが、君にはそっちの才能はなさそうじゃ。この三属性を鍛えていくぞ」


「はい、老師」

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