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護衛の意味

「残念ながらそれ以上の情報はありません」


「そうか」


 相手が分かればこっちから仕掛けることもできたんだけど。


「これからは宿で食事を取らず、偶然入った店で食事した方がいいかもしれないな。毒味もした方がいい」


「そこまでする?」


 ステラが首を捻ると、アルトスが大きく頷いた。


「当然です。如何なる危険性も排除しなければなりません」


 アルトスは俺の方を向く。


「おい、貴様が毒味をやれ」


「分かった」


 俺が頷くと、ステラが思わず立ち上がった。


「そんな、セイマ、いけないわ!」


「いいのです。姫様。こいつは護衛。姫様の命を守る義務があります」


「毒味役と護衛は分けるべきよ! こんなことまで依頼内容に含まない!」


「しかし・・・」


「私が毒味をやります」


 そう言って手を上げたのはリーゼだ。

 自らの命を賭して、ステラを護るという。

 見上げた忠誠心だな。

 俺は感心して頷いた。

 まあ、だけど、それは無用だ。


「いや、俺がやるよ」


「セイマ。いけないわ。ううん、リーゼにもそんなことさせられない。やっぱり毒味なんて」


「いや、俺毒無効のスキル持ってるんだ。だから、毒は効かない」


「えっ、そうなの? でも、それじゃあ毒を飲んでもわからないんじゃ」


「いや、毒ってことは分かるよ。身体が異常と判断したら解毒するからわずかだけど違和感は感じる。だから毒味は俺が最適だ」


「セイマはそんなスキルも持っているのね」


 ああ、蘇る。

 毒を喰らい続けたサバイバル生活を。

 俺は心の中でひっそりと泣いたが、それがこうして役に立つ機会に恵まれたわけだから、やはり老師には感謝しなくては。


「セイマ殿。本当によろしいのですか?」


「うん、大丈夫。任せて」


 リーゼが心配そうに尋ねてくるので、俺は胸を叩いて頷いた。


「貴方がいてくれてよかった。どういった経緯で貴方は姫様の護衛につくことになったのですか? それに、他の者達は?」


 リーゼが尋ねると、ステラとアルトスの表情が暗く沈んだ。

 そして、ポツリポツリと話し始める。

 モンスターに遭遇し、他のお付きの人間は殺されてしまったこと。

 危ない所で俺に助けられたこと。

 そのまま俺を雇ったことを。

 リーゼは驚きで口を押さえた。


「そんな、ヤン、アキサーヌ、リベロ、ジハキ、マーハ。全て死んでしまったというのですか」


 目に涙を溜めて悲しむリーゼに言葉をかけられず、ただ黙って見ているしか出来なかった。

 ステラももらい泣きしている。

 アルトスは視線を逸らしていた。

 自分だけが助かったことに、罪悪感を覚えたのかも知れない。


「セイマ殿。重ねて感謝致します。姫様を救っていただき、ありがとうございました!」


「いや、成り行きだったし」


 手を握られて感謝されてしまった。

 こんなスタイルのいい美人さんに手を握られるとちょっと照れる。

 すると、何故かステラがリーゼの手をどかしてコホンと咳払い。

 ん? なんぞ?


「まあ、そうね。セイマには助けられたわ。ありがとうね、セイマ」


「いや、もういいから」


 そう何度もお礼を言われると照れる。

 それをアルトスは酷く不快そうに見つめていた。


「それくらいでいいでしょう。それに、謝礼分も報酬に含んでおります。これ以上感謝することはありません」


「最初は五万で雇おうとしたくせに」


 ステラに痛い所を突っ込まれて顔を歪ませたアルトスだったが、すぐに持ち直して素知らぬ顔をした。

 こいつ、図太いな。

 俺も礼目的で助けてわけではないから別にいいけど。


「それにしても、セイマ殿は本当にお強いのですね。オーガを簡単に倒すとは」


「いや、弱かったよ」


 本当に弱かった。

 白の空間で戦ってた奴より数段弱い。

 どれだけ戦ってもあの程度の奴に遅れはとらないだろう。

 正直に言ったのだが、リーゼは目を丸くする。


「オーガが弱い? 失礼、セイマ殿は本当に人間ですか?」


「正真正銘普通の人間だよ」


 首を捻るリーゼだったが、これ以上追求はしてこなかった。

 あまり突っ込まれても困るから助かる。

 まあ、これ以上何か言われたら記憶喪失で切り抜けるしかないだろう。


 この後、俺達は今後の護衛の対策などを話し合いながら、馬車に揺られて次の街に向かったのだった。







 街に着いた俺達はまず適当な店に入って食事を取った。

 しっかりとステラの食事を毒味して安全を確保した後、ステラには食してもらった。

 その後で宿を取って宿泊と相成り、俺とアルトス、ステラとリーゼで二部屋とった。

 リーゼが仲間に加わってくれて助かった。

 やはり、ステラを一人部屋に残すのは心配だったけど、男と同室というわけにもいかないし、困っていたところだったのだ。

 それにこれからは暗殺者にも注意が必要な状況にもなったし、誰かが側にいてくれるのはありがたい。

 無論、俺達男組もステラの護衛に当たり、どちらかが部屋の前で待機してステラを護っていた。





 深夜、俺は目を覚ました。


「そろそろ交代かな」


 既に生活サイクルが出来上がっていたので、大体起きる時間を感覚で掴める様になってきた。

 起き上がって隣の部屋へと向かう。

 部屋を出ると、アルトスがステラの部屋の前で立っていた。

 俺を認めると、顰めっ面を作り、無言である。

 俺の顔を見るのも嫌らしい。


「そろそろ交代だ」


「いいか、しっかりと姫様を護れよ。必ずやり遂げろ」


「はいはい」


「貴様、分かっているのか!?」


「分かってるよ。毎回毎回交代のたびにそれだ。もう耳にタコが出来る」


「何を訳のわからないことを! 姫様は世界の秘宝。なくてはならない方なのだぞ!」


 めんどくさい。

 長くなるのかなこれ。


 そう思っていた時、部屋の中から気配を感じた。

 背筋にぞわりとした感触が走る。

 すぐ様、俺は部屋に飛び込んだ。

 アルトスは突然の俺の行動に驚き、後ろからついてくる。


 そこで見た。

 黒ずくめの格好をした怪しい何者かが、窓から部屋に侵入しようとしているのを。

読んでくださりありがとうございました。

星評価よろしくお願いします。

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