ステラ暗殺の危機
馬車に戻った俺達は御者に出発するように言うと、馬車の中で腰を下ろす。
ようやく一息つけたな。
さて、このリーゼから話を聞くとしよう。
「さあ、リーゼ。何があったのか話して」
「はい」
リーゼが口を開いた時、どうも気になることがあったので思わず口を挟んだ。
「ごめん。ちょっといい?」
「貴様。これから重要な話をするところなんだ。何故邪魔をする? お前が出る幕ではない。下がれ」
アルトスはそう言うが、もうこいつは俺の中で空気なので、ここは無視。
「具合が悪いんじゃないか? 腹を庇ってるだろう?」
「っつ」
俺が指摘すると、リーゼは気まずそうに顔を逸らした。
「そうなのリーゼ! 具合悪いの? お腹痛い?」
「・・・いえ。大したことでは」
何かを察してステラは、リーゼの服をめくる。
「見せて」
咄嗟に視線を逸らす俺とアルトス。
ステラが重い声で「酷い」と呟く。
どうやら、捕らわれている時に、酷い暴行を受けたようだ。
もう殺してしまったからどうにも出来ないが、改めてあのドルフに憤りを覚え、ぐっと拳を握る。
「どうして早く言わないの!」
「・・・私などに気を使うことはないと」
「馬鹿なこと言わないで!」
リーゼの言葉を遮り、ステラは怒鳴った。
心優しいステラは、仮令それが自分に仕えるエルフだとしても蔑ろになどはしないだろう。
早く次の街に行って、傷の手当てをしなければ。
街まで後どれくらいかかる?
そうだ、氣を試してみようか?
本来は自分に作用するものだが、「手当」と言う言葉もある。
触れて、氣を流し込めば、少しは痛みも和らぐかもしれない。
そう考えていた時、後ろから柔らかい光が差し込んできた。
「待ってて、すぐに治してあげるから」
思わず振り返ってしまうと、なんとステラがリーゼに魔法らしきものをかけている。
「まさか、それ、光、回復魔法か?」
「ええ、そうよ。私、回復魔法は得意なの」
おお、いいな。
俺は回復魔法が使えないから羨ましい。
俺は羨望の眼差しでそれを見つめていた。
「どうだ。これが姫様の力だ」
偉そうに言うアルトス。
いや、何でお前がドヤ顔よ?
釈然としないが、ステラ凄いってことでいいね。
リーゼの表情が徐々に、険しい物から安らかな物へと変わっていき、傷もすっかりなくなった。
これが、回復魔法か。
リーゼが治ってほっとした。
「これでいいわ」
「姫様。私などの為にお力を使っていただき、感謝の言葉もございません」
「いいのよ。気にしないで」
リーゼは深々とステラに頭を下げた。
アルトスもだが、ステラ、慕われてるな。
ステラの人望に感心したところで、やっと話の本題に入れそうだ。
改めて、リーゼの話を聞くことにしよう。
リーゼは真剣な表情でステラに語りかける。
「姫様はお命を狙われております」
「え?」
「なんだと!?」
ステラは目を丸くし、アルトスは驚愕した。
因みに俺はキョトンとしていた。
え? 命を? なんで?
「どういうことだ!? 何故姫様が!」
「王都に潜入している草(諜報員)からの情報です。偶然にも姫様の命を狙っているという情報を掴んだと」
「一体何者だ!? 姫様の命を狙うのは?」
「密談している怪しげな人間を尾行したのですが、うまく巻かれたとのことです」
「っく。肝心な所でしくじりおって!」
アルトスは憤りを露わにし、爪を噛んだ。
ステラが狙われている、か。
一体何者だ?
「私はそれを伝えようと急ぎやってきたのですが、入れ違いになって、姫様よりも先に来てしまったようですね。そこで、あの山賊に捕まってしまった。申し訳ありません」
リーゼは悔しそうに唇を噛んだ。
「それはいいのよ。貴方が無事で本当に良かったわ」
「姫様。勿体ないお言葉、ありがとうございます」
深々と頭を下げるリーゼ。
「その情報は確かなんだろうな?」
アルトスが鋭い視線を投げかけると、リーゼは神妙な顔をして答える。
「分かりません。しかし、事が事です。一刻も早く姫様にお伝えしようとまかり越した次第です」
「むう」
アルトスは唸り、黙ってしまう。
こうなると、この護衛の難易度が跳ね上がってくるな。
これまでは山賊やモンスターがもしかしたら襲ってくるかもしれないと想定して護衛に当たっていたが、今度は偶然などではなく、情報が確かであれば確実に襲ってくると考えなければならなくなった。
そうなってくると、道中だけではなく、街中でも細心の注意をして護衛につかなくてはならない。
「ステラ。命を狙われる心当たりは?」
「あるわけがないだろうが! 姫様は恨みを買う様なお方ではない!」
横からアルトスが喚いてくる。
まったく、こんな時に焦っても仕方ないだろうに。
「恨みってのは、品行方正にしていても、買う時は買うもんだ。逆恨みとかな。もうかしたら『え? そんなことで?』って理由で恨まれることだってある。今は可能性を探るべきだ」
筋を通したからか、アルトスはそれ以上は何も言わずに押し黙った。
もう一度ステラに尋ねる。
「心当たりはないか? ステラ? なんでもいい」
顎に手を当てて考えていたステラだったが、力無く首を横に振る。
「ないわ。一体誰が」
「そう、か」
肩を落として、項垂れる。
するとアルトスは鼻を鳴らす。
「貴様のやることは変わらない。命に変えても姫様を護れ。雇い主としての命令だ!」
確かにそれはそうなんだが。
「命を狙ってくる相手によって対処も覚悟も変わってくるからな。相手の経済力は? 規模は? どれだけの人間を差し向けてくる? それが分かっただけでも、こっちとしては助かるんだが」
リーゼは力無く答える。
「残念ながらそれ以上の情報はありません」
「そうか」
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