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ドルフの最後

「なんだ? やらないのであれば私がやるぞ」


 そう言いながら割って入って来たアルトスが刀を拾おうとすると、驚愕で体を強張らせた。


「なっ、何だこの剣は! なぜこんなに重いんだ!?」


「あ」


 そうだった。

 天羽々斬って重いんだった。

 俺がアズルさんと戦った時に、木刀を持たされたけど随分と軽いなと思ったものだったが、そうだった、俺の刀重いんだ。


「き、貴様。今までこんな重い剣を振り回していたのか?」


「まあ、そうだな」


「もうセイマに関しては何があっても驚かないわ」


 ステラは半目になって様子を見ている。


「ふん。こんな重い剣を手渡すなど、嫌味か? これだから人間は好かん」


「いや、そんなつもりはなかったんだが、ごめん」


「いえ、いいのです。ですが、こんな剣を振り回すとは、貴方は一体・・・」


「ッチ。この男のことは後から説明する。さあ、私の剣を貸してやろう。これで止めを刺すがいい」


「ありがたく」


 アルトスから剣を受け取ったリーゼは、ゆっくりとドルフの方を向く。


「ま、待て。俺はお前を殺すつもりはなかったぞ。売るつもりだったんだ! なのに俺を殺すっていうのか。ああぁ!!」


「私をゴミの様に蹴ってくれたじゃないか」


「くっ、躾だ。奴隷になる奴には躾が必要だったんだ!」


「そんな理由で私が納得するとでも思ったか」


 ゆっくりとゆっくりと近づき、ドルフの前に立ったリーゼは、これまたゆっくりと剣を振り上げる。


「や、止めろ。止めろよ!」


「死ね!!」


「止めろーー!!」


 ザシュ!!!!


「がはぁ!」


 振り下ろされた剣が深々とドルフに突き刺さる。

 ドルフは目を剥いて吐血した。


「ば、馬鹿な。この、この最強の山賊のドルフ様が、こんな、こんなエルフの女に・・・俺様が、俺様が、お、れ、が・・・」


 途切れ途切れに言葉を発していたドルフだったが、がくりと脱力し、動かなくなった。


「やった」


 リーゼは厳しい顔のままであったが、何処か達成感を漂わせていた。


「お疲れ様リーゼ」


「姫様。ありがとうございます。本来姫様を助ける筈の私が、助けられ、ご助量までしていただき」


「私は何もしてないわ。全てはセイマのおかげよ」


「そうですか。彼の」


 リーゼは俺の前までやって来ると、綺麗なお辞儀をした。


「セイマ殿。この度は誠にありがとうございました」


「え、いや。いいって。気にしないで。俺はあの山賊を懲らしめて、ここまで案内させただけだからさ」


「ですが、そうしなければ私は助けていただけず、姫様とも再開することは叶いませんでした」


「ま、まあ。会えてよかったですね」


「この御恩は一生忘れません」


「いやいや、そんな大したことでは」


 この人礼儀正しいな。

 俺は人間なのに、素直に礼を言って。

 アルトスは何かあれば俺を蔑視するし、見下すけど、この人はそうじゃない感じだ。

 むしろアルトスが極端なのか?

 考えを巡らせているとそのアルトスが面白くなさそうに、俺達の間に入って遮った。


「もういいだろう。リーゼ。お前も人間に頭など下げる必要はない」


「ですが、セイマ殿がいなければ、私は未だに捕らわれの身でした」


「それは偶然が重なった結果に過ぎない。本来であればこいつは護衛として山賊を追い払ったらすぐに出発するべきだったのだ。たまたまお前がいたからおめでたい雰囲気になっているが、こいつは職務を逸脱した行為を見過ごせん」


「そんな言い方はないんじゃないアルトス。セイマの行動に賛成したのは私よ。それに、そもそもあの山賊だって、セイマがいなかったら追い払えなかったわ。そこに感謝したっていいじゃない」


「報酬は十分に渡しています。これも仕事の内。当たり前なのです」


「もう、頭硬いんだから」


 リーゼと違ってここまで頑なだと、もう人間不信は治らないかもしれないな。

 俺としてはこれからの旅の道中で少しは関係を改善したいと思っているんだけど、これは望み薄か。


 首を横に振ると俺は気持ちを切り替えた。


「一旦馬車に戻らないか? 御者も待ってるだろうし」


 提案するとアルトスが鼻を鳴らす。


「不本意ながら賛成だな。あの御者も人間。もしかしたら逃げたかもしれん」


「またアルトスは」


 はぁ、とため息をしてステラは苦笑する。

 アルトスの人間不信は筋金入りだ。

 これまでの旅の道中も、あともう少しで大きなトラブルになる場面が何度もあったし、これからもあるかもしれない。

 アルトスはその度に「これだから人間は」というが、ハッキリ言ってアルトスが悪いと思う場面の方が多い。

 横暴にされたらいい気分がしないのが人間だ。

 それは誰だって同じこと。

 アルトスだってそれは分かっているだろうに、相手が人間だという感情が先行して冷静な判断が出来なくなっているんだ。

 このままじゃ、いずれ取り返しのつかないことになる。

 姫のお付きがこれでは国際問題にもなりかねないのではないだろうか?

 それをアルトスは分かっているのか?

 それとも、もしかしたらそれを狙っているのか?

 戦争になったら戦争になったで構わないと、そう思っているのか?

 ちらりとアルトスを見る。

 今も、こんな山の中まで入ったことから不満顔だ。

 あるいは、俺がリーゼを助けたから?

 その不満は全て俺に注がれているのだろう。

 幸か不幸か、リーゼを助けてことで、大っぴらに俺を批判できなくなってしまったので(さっきは少し言っていたけど)猶更機嫌が悪い。


「・・・なんだ?」


 視線に気が付いたアルトスが俺を睨んでくる。


「いや、なんでもない」


「じゃあ見るな。お前に見られるとそれだけで不愉快だ」


 アルトスは舌打ちをして顔を背けた。

 こいつと仲良くなれる日が来るのだろうか?

 

読んでくださりありがとうございました。

星評価よろしくお願いします。

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