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夢の終わり

 激高したドルフは勢いよく斬りかかった。

 だが、躱される。躱される。

 本気で斬りかかっているドルフの斬撃は(ことごと)く空を切る。

 まるで霞みを相手にしているかのような錯覚に襲われる。

 自分は今、何と戦っているのだ。


「それがお前の本気か?」


 尋ねるその声には明らかな失望の色があった。

 何か言っているが、ドルフはそれどころではない。

 必死にもがきながら斬り続ける。


「くそ、くそ、クソがぁ! 当たれ! 当たりやがれぇ!!」


「・・・分かった。もういい」


 黒髪の男は、刃のついていない方で、腹を強打された。


「ぐふぅ!!!!」


 今まで感じたことのない激痛に苦しみもがき、ドルフは膝をつく。

 一気に力が抜け、剣を持つことさえできなくなった。


「峰打ちだ。そう痛がるな」


 黒髪の男は酷く冷めた声でそう言った。

 こうして、この辺りで名を馳せていたドルフ山賊団は壊滅したのだった。






 山賊を倒し、残党がいないことを確認すると、俺はゆっくりと刀を納めた。

 この頭目にはちょっと期待したんだけどな。

 この程度の腕か。

 アズルさんとどっこいどっこいの腕だった。

 やはりA級以上じゃないと俺とは競えないのかもしれない。

 頭目、確かドルフ山賊団と名乗ったか。

 ドルフに声をかけた。


「まだ仲間がいるか?」


「・・・」


 ドルフは答えない。

 俯いて沈黙している。


「聞こえなかったか? 仲間はいるのかと聞いてるんだ?」


「・・・それを聞いてどうする?」


 下を向きながらドルフは重い口を開く。


「潰す」


 端的に答えた。

 人の物を盗み、用が無ければ殺すような連中を生かしておく理由はない。

 こうして遭遇してしまった以上は、絶対に許すことはできない。

 そう言えば、人を殺したのは初めてだけど、抵抗なかったな。

 やはり、殺されて当然の悪人だからだろうか?

 それにモンスターだったら、もう数える気も失せる程殺しているしな。

 感覚が馬鹿になっているのかもしれない。


「おい、ここでこいつを殺してしまえ」


 アルトスが会話に割って入って来た。


「こんな所で立ち止まってはいられないのだ。山賊に関わっている暇などない。さっさとこのクズを殺して先に進むぞ」


 まあ、確かにそうなのだが。


「いや、ここでこの山賊団を完全に潰してしまわなければ、また、同じような被害者が出る。ここで確実に潰しておくべきだ」


「そんなことは我々の仕事ではない。見誤るなよ。貴様の仕事は正義の味方の真似事ではなく、姫の護衛だということを」


 全くの正論に俺は言葉に詰まったが、ここで引くわけにはいかない。

 こんな連中の存在を許しておくわけにはいかないのだ。

 なんとかアルトスを説得しようと言葉を重ねようとした時。


「いいじゃない。私は賛成」


 ステラが助け舟を出してくれた。


「姫様。こんな所で道草を食っている場合ではありません。早く王都に着かなくては」


「いいって言ってるでしょ。別に急ぎではないのだし、少しくらい道草したって大丈夫よ。それにこの私を売ろうなんて考えた奴ですもの。他にも捕まっている人達がいるかもしれないわ」


 確かに、その可能性もある。

 奴隷か。

 考えただけで虫唾が走る。

 やはり中世レベルの文化か。

 そんなものがまかり通っているなんて、俺の中では考えられない。

 このふざけた制度、早くなんとかしないとな。


「どうなんだ? 他にも攫って来た人がいるのか?」


「さぁ、どうだったかなぁ」


 とぼけるドルフの顎を上げて殺気を叩きこむ。


「殺すぞ」


「っつ」


 俺の殺気に震え上がったドルフは、それでも口を割らずに頭を動かして俺の手から逃れた。

 どうしようか。

 正直、ここで拷問するのもな。

 ステラ見てるし、時間もかかるし。

 拷問の心得はあるんだよな。

 つーか、修業(あれ修業だろうか)の一環で老子にバッチリ拷問されてたし、本当に死ぬ目にあったし、出来るよ。表現できない位酷いこと。

 自分の心がちょっと壊れているのだと自覚した瞬間であった。


「なら、条件を出そう。もしアジトまで案内するなら俺はお前を殺さない」


「何?」


「ちょっとセイマ」


「今は捕まっているかもしれない人を助けるのが第一だよ、ステラ」


「・・・お前が案内した後に俺を殺さないって保証あるか?」


「証文でも書こうか」


「そんな紙切れが信用できるか」


「なら、信じてもらうしかないな。言っておくが言わなければ確実にお前はここで死ぬぞ」


「・・・チ」


 ドルフはノロノロと立ち上がる。


「いいぜ、案内してやるよ」


「よし、両手を伸ばせ」


「あ?」


「早くしろ」


 俺の命令に従って、ドルフは両手を突き出した。

 俺はその両手を水魔法で凍らせる。

 これでこいつは両手が使えなくなった。


「うおっ」


「その氷は特別製だぞ。どんなに物理的圧力を加えても溶けも壊れもしないからな」


 老師クラスの力がなければ。


「くそ! 凍傷になっちまうだろうが」


「その前にたどり着くといいな」


「くそが!」


 情けをかけずにそう告げると、ドルフは「こっちだ」と言って歩き出した。

 こうやって時間制限を設けてやれば、こいつも急ぐだろう。

 それに、これなら逃げられないし、逃げても氷は壊せない。

 逃げる気も無くなるといいんだけど、それでも逃げる可能性はゼロではないので気をつけなければならない。

 御者を馬車に待たせた俺達は、山の中へと入っていった。

 しばらく歩くとドルフが俺に聞いてくる。


「本当に俺の命は助けるんだな?」


「ああ、俺はお前を殺さない」


「なあ、逃げやしないからこの氷をなんとかしてくれや」


「駄目だ」


「冷たくて堪らねえ」


「なら、もっと急げ」


 俺は容赦なくそう言った。


「・・・」

読んでくださりありがとうございました。

星評価よろしくお願いします。

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