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雑談は続く

「え?」


「よく覚えてないけど、ファオに会った気がする。それが原因で記憶に欠落があるんだよ」


 俺はなるべく嘘がバレないように正面を向いて話す。


「ええ!? ファオに? よく無事だったね」


「あ、ああ」


 くそ、これでこの子にもファオが何なのか聞けなくなったぞ。

 一体ファオって何なんだよ?


「そっか、それがショックで記憶を失っちゃったんだね。じゃあ、どうして自分がそんなに強いのか分かんないの?」


「そうだな。とにかくずっと修業していた気がするよ。ただひたすらに、他の娯楽とかそんなのは一切せずに、ずっとずっと剣を振っていた気がする」


 まあ、これくらい話す分には問題ないよね。

 俺みたいな凡人がたかが十九年修業したって、こんなに強くはならないだろうし。


「そっか、そうだよね。セイマの強さって色々超越してしまっている部分があると思うけど、それだって努力の結果だもんね」


「そうだな。だから、エルフなんて、ずっと人間よりも長生きなんだから、人間なんかよりも強いんじゃないのか?」


「んー、そうだなー」


 ステラは唇を押さえて考える仕草を見せると、首を横に振る。


「人間よりは強くなれるかも。でもそれだって成長限界はあるからね。大体二百年くらい生きるとそこで成長は止まるかな」


「そうなんだ」


 俺だって本当はそれくらいで成長は止まっていたかもしれない。

 やはり、スキル『成長限界突破』は優秀だな。

 そして、よい師に巡り合えて幸運に感謝だ。


「そういう意味では人間は凄いと思うよ。中には人外と呼ばれる程突出した才能の持ち主が時々現れるからね。それこそ二百年修業し続けたエルフと同等の力を持つ人間がいることが信じられないよ」


 確かにな。

 そんな人間がこの世界にはいるわけか。

 じゃあ、俺を楽しませてくれる奴もいるかもしれない。

 楽しみにしておこう。

 わずかに口元が緩む。


「どうかした?」


「いや、そんな強い奴がいるのなら、戦ってみたいかなって」


「どんな相手でもセイマは勝っちゃうんじゃないかな?」


「そう?」


「少なくともエルフじゃセイマには敵わない」


 そうか。

 エルフでは俺を満足させてくれる相手はいないのか。


「でも、いつかエルフ最強の戦士と戦ってみたいな」


「ふふ、じゃあ、会わせてあげようか?」


「ほんとに?」


 王女のステラなら紹介できるのかもしれない。


「うん。いいよ。あ、それならセイマはこのまま王都までじゃなくて、帰りも私達を護衛してよ。そうすればエルフの里まで連れて行ってあげるからさ」


「え? う、うーん」


 強い奴と戦ってみたい気持ちはあるけど、そうするとずっとアルトスと一緒に旅をしなければいけないわけか。

 それはちょっと忍耐力が必要だな。


「ふふ、アルトスが嫌?」


「・・・まあ、そうだな」


 正直に言う。

 ステラも腕を組んで唸る。


「ごめんね。アルトスとは生まれた時からの付き合いなの。アルトスはエルフ上位氏族の生まれで選民意識が強くて、人間が大嫌い。エルフの中でも保守派中の保守派で人間とは関わりたくないって、派閥なのよ。特に、私のことが絡むとそれはもう酷くて、セイマにも失礼なことを言ってるし、その点は本当に申し訳がないわ」


 ステラはしゅんとして俺に頭を下げた。


「い、いや。ステラが謝ることじゃないって」


「いえ、部下の責任は私の責任よ」


 しっかりしてるなステラは、まだ十七歳だっていうのに。


「アルトスは何歳なんだ? 若いのか?」


「二百歳くらいね。まあ、エルフにしてみたら若いほうかしら」


「ふむ、千年生きると考えればまだまだ若造か」


「ふふ、十九のセイマに若造扱いされたと知ったらまた怒りだすわね」


 口元に手を当ててコロコロ笑うステラ。

 まあ、実際は千年生きてますからね。


「でも、帰りの護衛の件。真剣に考えてくれないかしら? セイマ程の実力者に護衛してもらえれば心強いわ」


「ハッキリとここで返事は出来ないけど、考えておくよ」


「今はそれでいいわ。よろしくね」


「ああ」


「さて、他にはどんな話をしましょうか? セイマは記憶喪失なんだから、あまり話は出来ないわね」


「なら、ステラのことを話してくれよ。差しさわりのないことでいいからさ」


「私の話? 何か面白い話題あったかな?」


「なんでもいいんだ。君のことをもっと知りたい」


「なんか口説き文句みたいね」


「え!? あ、いや」


 た、確かにそう聞こえなくもなかった。

 俺は慌てて手を振りながらそれを否定する。


「あはは、いいわ。じゃあ、私の話。これは旅に出る前のことなんだけどーー」


 それから俺とステラは完全に日が差して、アルトスが起きてくるまで話を続けたのだった。

読んでくださりありがとうございました。

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