ステラとの雑談
時間はそれなりに過ぎて行き、空が白み、乳白色の朝の冷たい空気が、そっと忍び込んでくる時刻。
かちゃりと、ドアノブが回った。
「おはよー」
「おはようステラ。まだ、寝てても大丈夫だぞ?」
今、何時くらいだろうか?
五時くらいか?
まだ起きるには早い時間帯だ。
俺は部屋に戻って二度寝するように促す。
「んー、ちょっとセイマとお話がしたくて」
「俺と?」
「うん。ねぇ、ちょっと部屋に入ってよ」
「え? でも」
いいんだろうか?
女性と二人きりで部屋に入るのは?
それにステラはお姫様なわけで。
「いいから、さあ、入って」
ぐいぐい俺を引っ張るステラに負けた俺は、恐る恐る部屋に入った。
ステラはベットに腰かけ、俺は椅子に座る。
まだ、薄っすらと薄暗い部屋の中で、ステラの顔が淡い光に包まれて見えた。
綺麗だと、俺は素直に思った。
美しい蜂蜜色の金髪に、長いまつ毛、キラキラした緑色の瞳。透き通った陶器の様に滑らかな肌と、基本スレンダーなわりにも見事なくびれが出来る凹凸のある体つき。
正に森の妖精だな。
「ん? どうしたの?」
「あ、いや。綺麗だと思って、見惚れてた」
あ、思わず凄く素直にそのままの気持ちを言ってしまったよ。
恥ずかしくなった俺は、視線を逸らした。
ステラはどう受け取ったのか、キョトンとした顔をしていたけど、はにかんで笑う。
おお、笑うのか。
気持ち悪いとか思われてはいなさそうだ。
「ありがと。お世辞はよく言われるんだけど、今のセイマの言葉は本心ぽかったね。心にするッと入って来た」
「い、いやまあ。なんだ? 本心からそう思ってるからな」
うわわああ、テンパるな俺。しっかりしろ。
「私も王族だから、蝶よ花よと育てられて、今まで綺麗とか美しいとかよく言われてるんだけどね。まあ、お世辞よお世辞。聞きなれたっていうかさ」
「まあ、そうだろうな」
「人間とはあまり話したことがないけど、セイマみたいにこうして普通に話せる人もいるのね。貴方との会話は楽しいわ」
「そう言ってもらえると嬉しいけどな」
会話が楽しいっていうのは結構な誉め言葉だよな。
一緒にいていいってことだし、俺もステラと話すのは楽しいし、アルトスがいないとこんなにも会話がスムーズになるのか。
そう言えば、アルトスは隣の部屋でお休み中だよな。
こんな所アルトスが見たらまた何て言うか。
「ねえ、セイマはどうしてそんなに強いの?」
「え?」
突然、そんなことを言われてもな。
「人間の中にも強い人がたくさんいるのは知ってる。S級冒険者や、王国一と言われている剣聖ライアス。でも、そんな人達でも貴方と同じことが出来るとは思えないの。手も魔法も使わないでオーガを吹き飛ばしたり、指先一つで大の男の拳を弾き飛ばしたり、正直言って異常と言ってしまってもいいくらいだと思うわ」
「そうかな?」
「ええ、少なくともエルフで最強と言われる人物も貴方には遠く及ばない。どうしたらその若さで、ん? 貴方若いわよね? 人間だものね。二十歳くらい?」
「十九だ」
頭に千がつくけどな。
「そうよね。貴方と話していたら一瞬お爺様と話しているような気がしてきたわ」
「エルフは長生きな種族、だよな?」
ラノベなんかではお決まりのテンプレだが、果たしてこの世界のエルフは本当に長寿なのかどうなのか?
「ええ、そうよ。大体千年くらいは生きるかしら」
「おじいちゃんもそれくらい?」
「ええ、千年くらい生きているかしらね」
おお、じゃあタメか?
「じゃあ、ステラも人間の見た目通りの年齢じゃないわけだ」
「あら、女性に歳を聞くの?」
おっと、これはデリカシーがなかったな。
素直に謝ろう。
「ごめん。聞き流してくれ」
「ふふ、嘘よ。私はまだ十七歳」
「え? 十七? それじゃあ人間の十七歳と同じで、見た目通りの年齢ってことか?」
てっきり百は超えているものだと思ったけど。
「百歳を超えたおばあちゃんとでも思った?」
「あー、いや・・・」
否定できないな。
「ふふ、エルフってね、私くらいの年齢までは人間と同じように成長するんだけど、これくらいから徐々に外見が変わらなくなるの。多分私もそろそろこの見た目で固定かな。後百年はこのままの姿じゃないかしら」
「人間にしてみたら羨ましい限りだな」
世の権力者が喉から手が出るほど欲しいだろうな。
その長寿の秘密を。
俺はもう十分すぎるほど生きたから、後はこのまま人間らしく死ねればいいんだけど。
もう、あの白い空間から出た俺は、不老ではなくなっただろうから、このまま人間らしく老いていくのだろう。
「まあ、私のことはいいのよ。セイマのことを聞かせて。どうやったらそんなに強くなれるの?」
さて、どうしようか。
まさか、神様の元で千年修業したとも言えないし、ここはいつもの手でいくとするか。
「実は俺、記憶がないんだ」
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