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報酬

 宿屋に戻った俺達は、看板娘ちゃんに二人追加で泊まれるかを尋ねた。


「はーい。お二人様追加ですね。大丈夫です」


「出来れば俺の隣に部屋がいいんだけど、空いていますか?」


「はい。空いてますよ」


 よし、ラッキー。

 俺の横で話を聞いていたステラはほっとした様子で胸を撫で下ろしている。


「セイマ様のお部屋の右隣になりますね」


「ありがとう。鍵貰っていくね」


「ごゆっくりお寛ぎ下さい。夕飯はどうしますか?」


「そうだな。部屋で一度落ち着いたら降りてくるよ」


「分かりました」


 看板娘ちゃんと会話を楽しんだ俺は、二人を案内し、部屋へと向かう。


「みすぼらしい部屋だな。王族の止まる宿ではない」


「あら、私は好きよ。簡素でいいじゃない」


 ステラとアルトスは正反対の感想を言った。


 二人部屋らしく、ベットが二つあったが、それを見たアルトスは分かりやすく狼狽える。


「う、わ、私が姫様と一緒の部屋で泊まるなど」


「うーん、確かに、私もちょっと・・・」


 確かにそうだな。

 これはうっかりしていた。


「わ、私は廊下で寝ます」


「ええ? それは駄目じゃない?」


「い、いえ。姫様を護るのが私の使命。部屋にいては何かあった時にすぐに対応できません。廊下で待機しております」


 おお、見上げた根性だな。

 俺はちょっとアルトスを見直した。

 こいつ、俺に対しては本当に横柄な奴だが、ステラを護りたいという思いは本物の様子。

 さっき恋人の振りをしたかったことを踏まえると、多分ガチでステラのことを好きなのだろう。


「何他人事のようにしているんだ貴様。貴様も護衛に付くんだ」


「え、俺も?」


「当然だろう。貴様はその為に雇われたのだからな」


 ふむ。

 確かにそう言われてしまうとその通りなので何も言えない。

 そうか、護衛だからその辺はちゃんとやらなければ。


「そんな、いいわよ。二人共ちゃんと寝てよ」


「いいえ、何かあってからでは遅いのです」


「うーん。じゃあセイマ。部屋で一緒に寝る?」


「は?」

「な、なぁ!?」


 ステラはウインクして俺を部屋に招こうとした。

 これは明らかに冗談の類だと簡単に気が付いたが、アルトスはまったく気が付かずに、ステラの言葉を真に受けた。


「な、何を言っているのですが姫様! なりません、男の、しかも人間と一緒に寝所を共にするなど、言語道断です。そ、それに私が駄目で何故この男は・・・ゴニョゴニョ」


 アルトスは女々しくゴニョゴニョ言っている。

 ステラは笑いをこらえて小さく震えているのが分かるので、俺はため息をついて、どうにかしろとゼスチャーを送った。


「やーね、アルトス。冗談よ冗談」


「じょ、冗談?」


 アルトスはポカンと口を開ける。

 からかわれていると気が付いたアルトスは、口をへの字に曲げて憤りを見せるが、姫であるステラにそれをぶつけるわけにはいかずに、何故か俺を睨みつけてきた。

 何でじゃい。


「こ、コホン。は、はしたないですよ姫様。そのような冗談は王族にふさわしくはありません」


「ふふ、ごめんね。でも、まさかこんなに簡単に引っかかるとは思わなかったわ」


 アルトスは顔を赤らめて狼狽えた。

 ふっふっふ、可愛いところがあるじゃないか。


 それはそれとして、警護の件は真面目に考えないといけないな。

 俺は部屋に備え付けられている椅子に座ると、二人に提案した。


「じゃあ、こうしないか。俺とアルトスで交代しながらステラの警護につくっていうことでどうだ?」


「え、ほんとに警護につくつもりなの? 二人共寝てよ」


「駄目です。ここは人間の街です。何処に何が潜んでいるのか分かりません。そんな場所で姫様を一人にするなど出来る筈がありません」


「大丈夫だと思うんだけどなー」


「思い込みは禁物です、姫様」


 アルトスは頑なに譲らずに、自分の意見を押し通した。

 まあ、俺としても正式に雇われた以上は、警護はやぶさかではない。


「貴様もしっかりと警護につくのだぞ? 分かったな?」


「雇われた以上はしっかりとやるさ」


 俺は肩をすくめてそう言った。


「あ、雇ったんだから、ちゃんと報酬の話もしないとね」


 ポンとステラが手を叩いて、今思い出したというように発言した。


「ごめんね。こういうのは一番最初にやらないといけないのに」


「いや、大丈夫だよ」


 そうか、報酬か。

 今お金があるものだから、考えが及ばなかったな。


「アルトス。お金を」


「・・・は」


 アルトスは持っていた荷物から、革袋を取り出す。


「五万ルピンだ。受け取れ」


「あ、ああ」


 五万、か。

 こんなものか?

 俺はお金を次元収納袋に収めた。


「ちょっと待ちなさい、アルトス」


「なんでしょうか姫様」


 アルトスは首を傾げた。


「私もお金には詳しくないのだけど、王都まで七日かかるわよね。七日間拘束してそれで五万というのは随分と安いんじゃない?」


 うん、日本で考えればちょっと安い。

 まあ、ルピンも完全に円と同じ価値ではないだろうし、ここは異世界だし、こんなものかと思ったけど。


「人間にくれてやる報酬としてはそれで充分です」


「じゃあ、もしこれがエルフなら、貴方はいくら渡すの?」


 ステラが詰め寄るとアルトスは一瞬顔を歪めた。


「そ、それは・・・王族の警護と言うことを加味して、五十万程が妥当ではないでしょうか」


 おいおい、十分の一かよ。

 俺も安く見られたな。


「なら、セイマにも同等の代金を支払いなさい!」


「人間ですよ? 人間にそんな正当な報酬を」


「アルトス、忘れたの? 貴方はセイマを尊重して扱うと、先程約束したはずよ。高潔なエルフがそれを反故にすると言うの? そんなことは許されないわ」


「ぐっ」


 ステラは腰に手を当てて、アルトスに命令する。


「五十万、セイマに支払いなさい。これは命令よ」


「わかり、ました」


 アルトスは悔しそうに顔を歪めながら、渋々といった様子で俺に金を受け渡した。


「二十五万ある。後の半分は成功報酬だ。これでいいな」


「ああ」


 俺は追加のお金を袋に詰め込んだ。

 でも、これは結構美味しいお仕事なのでは?

 七日間、拘束はされるけど、五十万は美味しい。

 旅の間は豪遊できないけれど、この仕事が終わったら美味しいご飯を食べに行くんだ。

 そんな夢想をしながら、俺は喜びを噛みしめた。

読んでくださりありがとうございました。

星評価よろしくお願いします。

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