ナンパ
二人を探してキョロキョロすると、なんと見つけた二人は誰かに絡まれているではありませんか。
「なーなーねーちゃん。俺と一緒に酒でも飲もうぜ」
「嫌よ。あっち行ってよ」
「そんな釣れないこと言うなよ」
「貴様! この方の言ったことを聞いていなかったのか。どこかに行けと言ってるんだ!」
アルトスが息巻いて割って入る。
「あ? 野郎には興味ねーよ。てめーこそこの女の何だ?」
「わ、私はこの方の、こ、こ、恋人だ!」
「え?」
「ああん。恋人だとぉ?」
おっとアルトス、そこでまさかの恋人設定。
なんかステラまでキョトンとしてるけど、この後どうするつもりだ?
「嘘ついてんじゃねーぞ。恋人を『この方』なんて呼ぶかよ」
「五月蠅い。どう呼ぼうと勝手だ。とにかくお前は邪魔だ。早く消えろ」
「・・・鬱陶しいなてめえ」
イラついてきたチンピラはアルトスを睨んで拳を握る。
剣呑な雰囲気に包まれ、アルトスは剣に手をかけた。
「抜くっていうのか? そうなったらもう後戻りはできないからな」
「・・・」
アルトスは顔を歪めたが、剣から手を放そうとはしない。
チンピラの動き如何によっては本気で抜くつもりなのだろう。
だが、ここはギルドの真ん前。
大通りだ。
周りには人もいるし、ここで刃傷沙汰は大問題で、警察に類する機関の人間がやってくる可能性もある。
俺はため息をついて三人に近寄った。
「止めろよ。ここは天下の往来だぞ」
「あ、貴様。遅いぞ」
アルトスは早速俺に噛みついてきたが、それを無視して俺はステラの手を掴んだ。
「あ」
「待たせた。さ、行こう」
さりげなくこのまま去ろうとしたのだが、チンピラは当然それを許さなかった。
「ちょっちょっ、おい、待てやてめえ。いきなり出てきてその女を連れて行こうとしてんじゃねーぞ」
「俺の連れをどうしようが俺の勝手だ。お前こそいきなり現れて図々しいぞ」
「なんだぞ!」
気も短いようで、チンピラは拳を握る。
俺はそれを無視してステラの手を引いた。
「待ってって言ったろうが!!」
チンピラが俺に手を伸ばす。
俺はその手を捻ると関節を決めた。
「い、いてててて!!」
「いい加減しつこいぞ。このまま折ろうか?」
「て、てめぇ、あててて」
俺はチンピラから手を放して、再びステラの手を引いて歩き出す。
このまま行かせてくれればよかったのだが、どうもあちらは意地になってしまっているようで、目を血走らせて俺に殴りかかって来た。
その拳を指ではじいて跳ね返すと、チンピラの関節が可笑しな方向に折れ曲がり、そのまま吹き飛ぶ。
「ぎゃーーーーーーーー!!」
汚らしい悲鳴が聞こえてきたが、それを無視してさっさとその場を退散することにした。
ステラは手を引かれるがまま、アルトスも後ろから付いてくる。
しばらく歩いて、チンピラが追って来ないことを確認すると息を吐いた。
「はぁ。美人て大変だな。変なのに絡まれて」
「私は別に美人じゃないよ。それより、手」
「手? あ、ああ。ごめん」
ずっと手を繋いでいたことを思い出し、俺は慌てて放した。
怒っていないかとステラを見たら、怒ってはいないようだけど、自分の手をマジマジと見つめるステラ。
それを良く思わなかったアルトスは、俺を睨みつけた後、ステラの手を触る。
「姫様。下賤な人間に手を触られるとは、なんということ。宿屋に付いたらすぐに手を洗いましょう」
失礼な奴だな。
そんなに汚くないぞ。
つーか、さり気なくお前だってステラの手を触っているじゃないか。
ステラはアルトスの手から逃れて「平気よ」と、俺に視線を合わせる。
アルトスはすり抜けて行った手を残念そうに見つめながら、ステラを視線で追った。
こいつって、従者だからステラを大事にしてると思ってたんだけど、さっき恋人って自分で身分詐称したし、好きなの? こいつってステラのこと好きなのかな?
「ありがとうセイマ。助けてくれて」
「いや、大したことじゃないよ。こっちこそ放っておいてごめん」
「あいつったらほんとしつこくて。もうひっぱたいてやろうかと思ったわ」
中々過激なお姫様である。
「この男に礼を言う必要などありません姫様。こいつは護衛で雇われているんです。姫様を護るのは当然の任務。むしろ、姫様をあんな往来で待たせて用事など言語道断なのですから」
ネチネチとアルトスは嫌味を言ってくる。
「仮令そうであったとしても、礼は尽くすものよ。護ってもらって当然なんて考えは良くないわ。それにさっきも言ったじゃない。セイマにはセイマの都合があるんだから」
「くっ、何故姫様はこんな奴を」
アルトスは悔しそうに歯噛みする。
そこまで嫌わなくてもいいんじゃないかな。
いや、もう諦めたけど。
「そうだ。あのさ、悪いんだけど護衛の依頼はギルドを通してくれないか? そっちの方がギルドとしても俺としてもありがたいんだけど」
「そうなの?」
「らしい。頼めるかな?」
「何故、そんな面倒な手続きに姫様が付き合わなければならん?」
アルトスが騒ぎ立てるが、無視。
ステラの顔だけを見る。
「いいわ。行きましょう」
「姫様!?」
「別にいいでしょ。書類を書くくらいだもの。依頼するのはセイマってことは変わらないし」
「助かるよ」
「いいのよ。じゃあ、入りましょう。ギルドの中ってどんな所かしら? 楽しみね」
好奇心が旺盛なのか、ステラは楽しげにギルドに入って行った。
その後に俺とその後ろにアルトスがぶつぶつ文句を言いながら付いてくる。
まともに絡むと俺の体力が消費されるだけだ。
あまりあいつとは関わらないほうがいいと判断し、さっさと中に入った。
その後、簡単な手続きをして、正式にギルドからの依頼として護衛クエストを受注した俺は、宿に向かったのだった。
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