ギルドを通して下さい
アストロの街に戻って来た俺は、早速ギルドに報告をした。
二人には悪いが外で待っていてもらう。
エルフなので、二人ともフードを深くかぶり、正体を隠している。
やはり、街中でエルフというのは目立つらしい。
受付で俺は薬草と、ゴブリンの素材をカウンターに置く。
「依頼の品です」
「あ、おかえりなさいセイマさん。流石ですね」
「いや、それ程でも」
ちょっと照れる。
「そんなことはないですよ、え? このゴブリンの素材、二十匹はあるんじゃ・・・」
セーラさんが困惑しているので、すかさず説明に入る。
「はい。十匹と依頼書には書かれていましたが、行ってみると二十匹はいたので狩っておきました」
「いくらゴブリンとはいえ、ソロで二十匹は新人冒険者には結構大変なんですけど、フフ、セイマさんにはそんなの関係ないようですね」
そういうものか。
うん、でも、俺も初めてゴブリンと戦った時は苦戦したかな。
だけど、よく考えてみるとあのゴブリンは老子が選んだ強化個体だったんだよな。
この世界のゴブリンなら楽勝だったんだよ。
でも、セーラさんの評価が上がったようでちょっと嬉しい。
「あ、セイマさん。お金のご用意が出来ましたよ」
「おお、ありがとうございます」
よかった。
旅に出るから入用になるだろうからな。
「あの、セイマさん。提案なんですが、このままギルドにお金を預けませんか?」
「え? どういうことですか?」
俺が首を傾げると、セーラさんが咳払いをして説明を始める。
「つまりですね。高額のお金を持っているのは危険てことです」
「確かに、そうですね」
泥棒とかいるかもしれん。
「セイマさん。宿暮らしでしょう? クエストとか出かけている時は、大金を宿に置きっぱなしにするってことじゃないですか。とっても危ないと思うんですよね」
尤もだ。
日本だって危ないのに、この異世界は日本よりも治安がいいってことはないだろう。
「ギルドは銀行も兼ねてるんですか?」
「お金を預かるくらいは出来ますよ。後、ギルドカードさえあれば、ギルド支部ならこのギルド以外でもお金を下ろせます」
ギルドカード。
ああ、合格した時にそんなの貰ったっけ。
身分証にもなるし、キャッシュカードにもなるのか。
凄いな、ギルドカード。
そうだよな、冒険者はクエストに行っている時、ずっと金を持ち歩いてはいないだろうし、宿暮らしの人間も多いだろうから、大金の管理はとても厄介な問題なんだ。
特に上級冒険者は金持ちだろうし、その手の問題は常に付きまとう。
確かに、ギルドにお金を預けられるという制度は、冒険者にとってとてもありがたいことだろう。
俺は大きく頷いた。
「分かりました。お金を預けます」
「それがいいかと思います」
「あ、でも、十万くらい貰っていいですか?」
「勿論ですけど、何か買うんですか?」
「あー、個人的な依頼を引き受けて王都まで護衛することになったんですよ」
「まあ、王都ですか」
苦笑するとセーラさんは口に手を当てて驚く。
「俺、地理とか全然分からないんですが、王都まではどれくらいかかりますか?」
「ちょっと待って下さい」
セーラさんは、後ろに振り替えると、棚から地図を取り出した。
「ここから王都まで、この大通りを通ると、馬車に乗って最短で七日程かかります」
七日か。
確か昔は東京から京都辺りまで十四日程かかったというから、その半分くらいかな。
俺ならかっとばせば数時間の道のりだが、歩けばそれくらいだろう。
「セイマさんなら大丈夫だとは思いますが、道中気を付けてくださいね。モンスターや盗賊等も出没するという報告がありますから」
モンスターは勿論、盗賊も出るのか。
やっぱり治安が悪いな。
「分かりました。気をつけます」
「それとセイマさん。出来れば依頼を受けるならギルドを仲介として使ってください」
セーラさんにそう言われた俺は首を傾げる。
「それはまたどうして?」
「冒険者がランクを上げる為に必要なのはいくつかありますが、まず一番は件数です」
「依頼をどれだけ受けたのかってことですか?」
「そうです。成功が多ければ多い程望ましいですが、とにかく多く受けて、ギルドに貢献してくれた冒険者はランクアップが早いです」
「なるほど」
確かにそうだろう。
そう考えると、簡単なクエストでもコツコツと数をこなせばランクアップするということだ。
「勿論、昇格するにはそれだけではダメです。例えば、セイマさんはD級ですが、その中での高難度クエスト。C級冒険者が受けたとしても油断できない大物モンスターを討伐したり、難関なダンジョンに入るクエストをこなしたり、そんなクエストを沢山成功させた冒険者は一気にスピード出世します」
そう聞くと夢が膨らむ。
なんかこう、頑張ろうって気持ちになるな。
「だから一件と言っても馬鹿になりません。王都までの護衛依頼。ギルドの仲介を入れて、それをクエストとして受けることをお勧めします。ただでさえ、長旅になって日数がかかるのですから」
「日数の長さはクエストの難度としてはどうなるんですか?」
セーラさんは申し訳なさそうに言う。
「残念ながら、日数の長さだけでは高難度には含まれません。例えば、それが危険地帯に行く依頼とかならば、考慮に含まれるかも知れませんが、ここから王都までの道のりは比較的安全な部類でして。あっ、それでも危険はありますから油断大敵ですけど」
「そうですか」
ステラは王族だからそれをアピールすれば。
いや、不味いな。
三人だけの忍び旅。
わざわざ公言すれば、危険の呼び水になりかねない。
「それに、現在どの冒険者が何をしているのか、ギルドとしては把握しておきたいんです。特に優秀な冒険者は」
そう言うと、セーラさんは俺に向かってウインクした。
可愛い。
彼女を持ったことのない寂しい人生を歩んできた俺には、微笑みからのウインクに抗う耐性がない。
だが、とにかく、二人を呼んでギルドから俺指名で依頼をしてもらおう。
「ちょっと、外に依頼主がいるので呼んできます」
「はい。では、お金を用意しておきますね」
セーラさんはそう言ってお金を用意してくれている間に、俺はギルドから外に出た。
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