厄介な依頼
「はい?」
「姫様、何を言っているのですか!?」
俺は思わず聞き返してしまい、アルトスは悲鳴にも似た声を上げた。
護衛だって?
勘弁してくれ。
このお姫様だけならともかく、この俺を目の敵にしているアルトスと一緒に旅なんて出来るわけがない。
俺は土地勘もないし、一体王都までどれだけ距離があるのかも分からないんだぞ。
そんないつまで拘束されるか分からない依頼を受けるわけがないだろう。
「お断りだよ。俺が良くとも、そっちのお付きがそれを許さないだろ? ここで別れた方がお互いの為だ」
「ほら、アルトス。貴方の態度が悪いからセイマが断ってしまったわ」
「それでよいのです。あんなどこの馬の骨とも分からぬ人間を護衛に頼る必要などありません。貴方様には私がおります」
言いたい放題言ってくれるじゃないか。
まあ、どうせ断るからいいけど。
「ま、そう言うことだね。それじゃあねお姫様」
「待ってセイマ。アルトス、貴方からも頼んで」
「は? 私が、あの薄汚い人間に? 御冗談を」
「冗談ではないわ。さあ、早く。セイマが行ってしまうわ」
「い、いくら姫様のご命令でもそれは・・・。第一、あんな奴がいなくとも私がいれば」
「貴方だけだったら、今頃はオーガに殺されていたわ」
「うぅ、それは・・・」
言葉に窮し、アルトスは押し黙る。
それは正しいね。
あの弱いオーガに負けたのだ。
このアルトスは碌な腕ではないのだろう。
ステラがアルトス一人では心もとないと感じるのは無理もないことだ。
アルトスは苦渋に顔を歪ませると、俺を睨みつけ、本当に嫌なんだろう、奥歯を噛みしめて呟くように言う。
「・・・貴様、姫様の護衛になれ」
「お断りだよ」
「な、なんだと!? こっちが頼んでいるんだぞ?」
「あのなあ、それが頼んでる人間の態度か? 『こっちが頼んでいる』? 何様だよ。こっちだって人間だ。そんな頼み方で依頼を受けるわけがないだろうが」
あーもー、帰りたい。
ホント、帰りたい。
とにかくこいつと口を利きたくない。
「ほら、アルトス。誠心誠意お願いして」
「ぬ、く、く、くそぉ、くそぉおお・・・」
俺は呆れてため息をつく。
「もうそこまで嫌がりながら頼まなくてもいいって。誠意なんて伝わらないよ。ここで別れよう。なっ?」
「姫様、奴もああ言っています・・・」
「アルトス!」
「くっ! ど、どうか、護衛になった欲しい。この通りだ!!」
アルトスは半場やけくそ気味にそう言うと頭を下げた。
・・・とは言っても、どうする?
正直、こいつとこれから衝突するのは目に見えている。
不快な旅になるのも分かり切ってる。
それなのに、依頼を受けるか?
だが、アルトスはムカつくが、ステラは別に気分の悪いことを言ってくるわけじゃないし、助けてやりたいという気持ちが沸かないでもないんだよな。
いや、だからってなあ?
とは言え、正直、アルトスがこの先どうなっても良心の呵責など起こらないが、もしステラが死んだらどうだ?
目覚めが悪くなるんじゃないか?
それはなんか嫌だな。
俺は首を横に振った後頷いた。
「分かったよ。その依頼を受ける」
「ほんと!」
ステラは喜んで手を叩いた。
アルトスは嫌そうな顔をしたが、ステラがいる手前、何も言わずに渋い顔をしている。
「正し、俺を人間だからってあまり蔑まないでくれよ。ちゃんとした旅の同行者だと認めてくれ。それが条件だ」
「勿論よ」
「そっちのお付きに言ってるんだ」
「分かっているわね、アルトス?」
「・・・・・・・・・くっ、承知しました」
不承不承という感じでアルトスは答えた。
「あー、一度近くの街に戻っていい? 受けていたクエストの報告をしなくちゃいけないんだ」
「なっ、貴様。姫様の護衛よりもそんなものを優先しようというのか!?」
アルトスが早速俺に食って掛かる。
もうめんどくさいな。
「嫌ならいいんだぞ。ここで解散でも」
「貴様!」
「勿論よ。急なことだし。私も街に寄って、旅支度を整えなければならないもの。そうでしょアルトス」
「それはそうですが・・・」
「街に寄らなければならないのに、何故反対するの?」
「私は、姫様よりも他を優先するのが許せないだけです」
ステラは腰に手を当てて大きくため息。
俺もため息つきたい。
「しょうがないじゃない。私達の依頼は急だったんだから。セイマにはセイマの都合があるわよ」
「何を措いても姫様を優先させるべきなのです」
「それは、貴方はそうかもしれないけど。はあ、もういいわ」
話しても無駄だと思ったのか、ステラはそれ以上は言葉をかけなかった。
ステラには同情するけど、俺は一人で歩き始めていた。
さっさと帰ってギルドに報告がしたい。
それにしても、面倒な依頼を受けちゃったな。
読んでくださりありがとうございました
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