疑惑
「凄いです。逸材ですよセイマさんは!」
セーラは両手を広げて、驚きを表現したが、その先にいる人物、ギルドマスターであるジョーゼスは冷静だった。
セーラは冒険者と長く付き合っている為にズブの素人ではないが、戦いの専門家と言うわけではない。
適正な判断が下せるとも思えないのだ。
「ギルマス。俺の話を聞いて欲しい」
「うむ、聞こうか。アズル」
ジョーゼスは顎を引く。
「今すぐにセイマをS級にすべきだ」
「何?」
「アズルさん!?」
てっきり合格とだけ言うのかと思っていた。
セーラもそれには賛成だ。
しかし、まさかいきなりS級にするべきだとは。
「ちょっと本気ですかアズルさん。S級ですよS級。世界に十一人しかいない、人外の集まりと言うあのS級ですよ? いくらなんでもそれは無茶です!」
「ああ、無茶なのも前例がないのも十分に分かっている。だがな、あいつはそれ程の化け物なんだよ。俺はあいつ程のプレッシャーを感じたことがないぜ。ああ、カルラと一緒に戦った時ですらあれ程の圧は感じなかった」
「S級冒険者、神速のカルラさんですか・・・」
「あいつの動きにはついていけなかったが、目で追うくらいはできたんだ。だが、セイマの動きは全く追うことが出来なかった。一瞬だった。気が付いた時には首元に木刀が突き付けられていた。分かるか? これでも剣には自信があったんだ。そのアズル様がまるで反応すら出来なかったんだ。そんな化け物に、今更薬草採取なんてさせてる場合じゃねーだろ」
一気に気持ちを吐き出して、アズルは息を吐く。
「落ち着け」
「ああ」
ジョーゼスに言われて、アズルは手元の茶に手を伸ばす。
「その彼はそれ程なのか?」
「ああ、飄々とした奴なんだが、あいつの手を見てぎょっとしたね。一体何年剣を振り続ければあんなに分厚い手になるのかね。おいセーラ、あいつは本当に人間か? 長寿の亜人の類じゃねーのか? とても見た目通りの年齢とは思えないんだが」
「あ、はい。人間ですよ。十九歳って書いてあります」
「・・・十九。本当なのか? あの剣は十年やそこいらで極められるものじゃねーと思うんだが。それ程の才能? いや、言っちゃあなんだが、あれは凡人の剣だった。それがあんなに昇華させるには膨大な時間が必要なはずだ。あいつは本当に人間なのか?」
「そ、その筈です。エルフのように耳が尖っていたわけじゃないですし」
セーラに問い詰めると、たどたどしく答えが返って来た。
だが、まったく納得できるものではなかった。
「ふむ。魔法試験はどうだったかな?」
ジョーゼスがセーラに尋ねると、気を取り直して咳払いした後にセーラは口を開ける。
「そっちも上々でしたよ。使える属性は三つ。風と水と雷です。的に水魔法を当てて、その的を突き破って後ろの壁にひびを入れる程の威力でしたから」
「ふむ。剣は人外。魔法も優秀か」
「どうもあやしいな」
アズルは首を横に振る。
「なにがだね?」
「あいつは目立つのが嫌なのか、俺との試験も最初は手を抜いてやがった。魔法もそうじゃないとは言い切れない」
アズルがそう言うと、ジョーゼスはセーラを見る。
「セーラ。どうなのかね?」
「え、えっとぉ」
「セーラ、重要なんだ。しっかり思い出してくれ」
アズルに肩を掴まれ、びっくりしながらセーラは頭を天井に向けて先程のことを思い出す。
「そういえば、やたらと周りと比べてどうかを気にしていました。まあ、受験生は周りが気になるものですから、それも仕方がないなと思っていたんですけど」
「周りと自分のレベルの差を知りたかったんじゃないのか?」
「後付けですけど、そう言われるとそう思っちゃいます」
「つまり、こういうことかね。そのセイマ君は魔法においても本当の実力を見せていない?」
「その可能性があります」
「何故そんなことをするのかね?」
「アズルさんが言ったように目立ちたくないんじゃないでしょうか。冒険者の中には厄介なことに巻き込まれたくないから昇格をしない人間も中にはいますし、セイマさんもそういう類の人なのかも」
「うーむ」
ジョーゼスは一枚の答案用紙を手に取る。
先程の勢馬のテスト用紙だ。
「さっき、採点が終わってね」
「どうでしたか?」
「薬草学などの知識はある。それと、モンスターの知識も持ち合わせている。こっちの方はこちらも把握していないような行動まで事細かに書き込まれている。本当にこんな行動を取るのか分からんがね。かと思えば、子供でも知っているような一般常識がバツだ」
「どういうことなんでしょう?」
セーラは首を傾げてみせた。
確かにどうも勢馬は地に足がついていないというか、挙動に妙なところがある。
ここに来る前はよっぽどの田舎にいたのだろうか?
「まるで生まれてからずっとダンジョンで生活をしていたような人物だね。まあ、冒険者志望ならば望ましいと言えば望ましいが」
「それはないな。あいつの剣術は基礎からしっかりと出来上がっている。ちゃんとした師匠がいるはずなんだ」
「ふむ。あるいは名のある剣客なのかもしれないな」
「・・・十九の小僧をあそこまで仕立て上げる。そいつはとんでもない化け物だぜ」
ジョーゼスはゆっくりと立ち上がった。
「まあ、会ってみよう。そのセイマ君に」
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