冒険者ギルドに行こう
扉をくぐった先には開けた平原があった。
思わず後ろを振り返ってしまうと、既にそこには扉はなかった。
俺は寂しさを覚えつつも、辺りを見渡す。
全く何もない辺鄙な所からスタートさせるとも思えないので、この近くに何かあるはず。
「しまったな。何処に出て、まず何処に行けばいいのか聞けばよかった」
ミスったと思いながら見回すも周りには何もない。
俺は悩んだ結果、思い切り大ジャンプした。
高く高く飛び跳ねて、くるりと回ると、チラリと街が見えた。
しめた、やっぱり近くに街がある。
着地すると、街が見えた方角目掛けて俺は勇んで歩き出す。
さあ、行くぞ。
異世界への第一歩だ。
辿り着いた街は、四方を壁で囲われていて、簡単に外部から侵入が出来ないような作りになっていた。
モンスターもいるだろうし、警戒しているのだろうか?
或いはこの辺りは他国と戦争でもしていて、ここは結構物騒だったりするのだろうか?
入口には兵がいて、入門のチェックをしている。
おいおい、大丈夫か?
俺身分証とか持ってねーぞ。
恐る恐る門番の前にやって来た俺は、門番の顔色をうかがう。
「お前は、旅人か?」
よしよし、言葉は分かるぞ。
老師は異世界に行った時のことをちゃんと考えてくれていて、言葉と文字を俺に教えてくれていたのだ。
「はい。そうです」
やはり無難な旅人がいいだろう。
因みに今の俺の服装だが、ファンタジー世界で旅人が着るような丈夫な服を身に着けている。
老子に言われて普段から着ている服装だ。
「ふむ。では、身分を証明できる物は?」
はい来た身分証!
どうする?
いきなりピンチだがこの難関どう乗り切る?
「あー、あの、実はここに来る前にファオに会いまして」
「何!? ファオに」
「はい、それのショックで、記憶が無くて、持ち物も碌に無くなっていて、着の身着のままの状態でして」
「そうか。ファオに。それは災難だったな」
「あははは」
そう言えば、ファオって何なのか老子にちゃんと聞かなかったぞ。
なんなんだファオって。
「実は俺の甥っ子も、ファオに遭遇したらしくてなぁ。いやー、なんとか逃げ延びたそうだが、お前も無事でよかったなぁ」
「ど、どうも」
なんなんだよー、ファオって。
聞ける雰囲気じゃないし、今聞いたら不自然極まりないし。
いいや、今度誰かに聞こう。
「話は分かった。まあいい。で、何日滞在の予定だい?」
滞在日?
全然決めてないけど。
「ここに冒険者ギルドってありますか? 出来れば登録をしたいんですけど」
そもそ冒険者って職業があるのか分からないけど、老子が俺の好みにマッチした異世界に転生させてくれたんだって言うんなら、やっぱり冒険者はあるんじゃないかと思うんだけど、どうだろ?
「ああ、あるぞ。そうか、冒険者志望か」
「はい。なりないなと」
「ギルドはこのまま正面をずっと行った所にある。頑張れよ。ようこそ、アストロの街に」
門番さんはそう言うと俺を通してくれた。
そうか、ここの街の名前はアストロというのか。
俺は、言われた通り、ずんずんと進んで行った。
それっぽい建物はすぐに見つかった。
修業の合間を縫って、老子にこの世界の言語と文字を教えてもらっていたので、ちゃんと読めるぞ。
老子、感謝。
ギルドの中に入ると、意外に清潔感のある空間が広がっていた。
しかし、酒の匂いがする。
見てみると、酒場があるようだ。
昼間っから飲んでる連中は冒険者だろうか?
如何にも荒れくれって感じだけど。
正面には受付があり、あそこで事務手続きをするのだと分かる。
俺は受付に向かってお姉さんに声をかけた。
「あの」
「はい、冒険者ギルドにようこそ。初めての方ですか?」
流石接客業。
初めての顔が解るらしい。
「はい。冒険者になりたいんですけど」
「登録の方ですね。何か、身分証をお持ちですか?」
う、やっぱり聞かれるのか。
「・・・いえ、持ってません。なくてはいけませんか?」
「いえ、そんなことはないですよ。流れの方とか結構いますからね」
受付のお姉さんはにこやかに答える。
よかった。
いきなり詰むかと思った。
「それでは、こちらにご記入下さい」
お姉さんはそう言うと紙を一枚差し出した。
ほう、紙があるのか。
ファンタジーによっては羊皮紙なんてこともあり得るかと思ったが、この世界では紙が普及しているんだな。
えっと、まずは名前か。
名前、俺は平民だし、勢馬だけでいいか。
ちゃんと習った異世界語を書き込んでいく。
老子、ありがとうございます。
えっと、持っている能力は何か、か。
どうしようかな『成長限界突破』ってかなりチートスキルだよな。
そのまま書いていいものだろうか?
死ぬ前の俺だったら目立ちたいから、堂々と書いたんだろうが、ちょっと大人になった俺はそんな悪目立ちなんてしたくないからな。
ここは、正直に書かないほうが良さそうだ。
とすると、なんと書けばいいだろうか?
全くなしっていうと、書類審査で冒険者になれませんとか言われる可能性がある。
んー、あ、そうだ。
俺、毒耐性持ってたじゃん、それを書こう。
それと、次は使える魔法か。
えー、風と水と雷、っと。
他にも志望動機とか自己PRとか書いてあったので適当に書いた。
「えっと、住所はこの街に来たばかりでないんですけど、いいですか?」
「そうですか。泊まる宿などは決まっていますか?」
「いえ、それもまだ決めていません」
う、せめて宿を決めてから来るべきだったか・・・。
「では、決まったらもう一度申告をお願いします。アストロを拠点に活動していくつもりですか?」
「はい。しばらくは」
「では、ギルドと提携しているお安い宿をご紹介しますね」
「ほんとですか。ありがとうございます」
助かった。
次元収納袋に入っているアイテムを売ろうと思っていたけど、どれくらいの値段が付くか分からないし、安い宿を紹介してくれるって言うなら有難い。
「書けました。これでいいですか?」
「はいはい。お預かりします。わっ、毒無効のスキルですか。レアですね。それに使える属性が三つも。優秀ですねー」
「はは、いや、それ程でも」
よかった、ちゃんと俺の文字は通じるみたいだ。
やっぱり毒無効も結構なレアスキルだったみたいだ。
それに三つ魔法を使えるのも老子が言っていたように結構優秀な部類に入るらしい。
「では、セイマさん。これから貴方には三つの試験を受けてもらいます」
読んでくださりありがとうございました。
星評価よろしくお願いします。




