餅つき二〇二一
月の兎の比喩なんかではない、この地球の、餅つきの物語だ。
猿蟹合戦とYOUTUBERの企画でしか見たことのない臼。そういえば杵って猿蟹合戦に出てきたか? いや、そんな、猿蟹合戦に杵が出てきて猿に攻撃したらただの暴力だろう。ただの暴力ほど美しいものはないが、そんなもの幼児には必要ない。いやでも本当に幼児向けアニメは暴力を称賛していないのか? 少なくともお前の年齢で真剣に考えることではなかろうよな。
臼に入った炊き立てのもち米。へえ、水分量ってこんなもんなんだ、ありがとうクラシル!
……まあ、確かにお父さんが忘年会のビンゴ大会で当ててきたホームベーカリーでもできるけど、男のロマンだろ、臼と杵での餅つきってのはサ。来年も使うから、そんな顔で睨まないでよ。お前にもつかせてやるからさ。……わかったよ……二度と「お前」なんて言わないよ……。
正直餅が熱すぎる。温度の話だ。あの半裸のおっさんたちは手の皮膚が牛革とかでできてんのか? 実のところ、そのビジョンだけがいまここに必要で、俺の容姿なんて必要ないなと思ったので、そのままその半裸のおっさんたちが餅つきを続けたことにしておいてもらってもいいか? 返事は要らない。
できた餅って打ち粉を用意し忘れててめっちゃ困ったが、でもそこまで俺を非難することってなくないか? なにをイラついているんだ? 俺がやってるだけなのにサ。確かにチョット手伝ってもらったけどサ。ちょっとじゃん。
やがてみなさまのお墨付きの打ち粉が到着。カレーの品ぞろえもいいんだよな。
きなこ、あんこ、豆などは用意してたので、最初こそ不慣れだったけど、少しずつ形のよいものもできるように。六個目くらいからよい出来のものが完成するようになりました。満足。
最終的には、もう少しで三十二歳になるからまたいい人を見つけて結婚できるものか、迷いに迷ったけど、やっぱりもう限界ということで離婚届にサインをさせられました。これもなんの比喩でもない。本当になにが悪かったのかさっぱりわからないナ。