第一章 ジャンクコロニー
轟音と共にゴミ山が吹き飛んだ。
起きた現象を形容するとそんな感じである。
金属の床が露呈し爆心地の真ん中には三人の男女が倒れていた。
「う、うーん。あ、晶!零治!」
目を覚ました金髪のジャージの少女がその左右にいた剣道着姿の眼鏡の黒髪の少女とパジャマ姿の黒髪の少年を揺すり起こそうとする。
行為を続けながらも辺りを見渡した。
(なに、ここ。なんで、なんで空がないの!?)
見上げると天の先に見えるのは九割灰色の光景。が雲ではなく、大地のようで、視界一面に写っていて少女は不安にかられていた。
「う、うーん。なに卯月・・・いやなにこれ」
先に目を覚ましたのは晶と呼ばれていた剣道着の少女だった。
晶は自らを起こした金髪の少女、卯月を見据えたが、その向こうに見えた景色を硬直した。
起きた途端ゴミ山の真ん中だから当然ではある。
最後に目を覚ました少年、零治はなにかを発言する前に卯月同様上を見上げ、そして大きく口を開いた。
「う、うおおおおお!?スペースコロニーきたーーーーー!!!」
「は?」
「え?」
突然立ち上がり、両手を上げて叫び喜ぶ零治。傍らの少女二人は困惑していたが、卯月は再度見上げて喜びの声を上げた。
「た、確かにアニメでよくみるシリンダー型スペースコロニーの内部に似ているような、嘘、宇宙!?SF!?やたーーーー!」
「え、なに喜んでんの!?ボクたち知らないところにいるんだよ!?どこだよここ!!おうちかえして!?」
晶の嘆きは届かず、三人はひとまず辺りを探索することにした。
爆心地から離れ、ゴミ山を登り歩く。
目に見えるのは見覚えのない壊れた金属部品たち。
果ては行けども行けども見えない。
「もうやだぁ・・・ここどこぉ・・・」
ついには泣き出した晶。卯月もおろおろし始めた。
「スマホもなくなってるしなぁ。いや俺ちょっと寒いんだけど」
「パジャマだもんねぇ、零治。」
「足場選ばないと切りそうでほんと怖いんだけど」
晶と卯月は意識を失う直前の夜道を歩いていた格好なので、靴も履いていたのだが、零治は素足だった。
「寝てたらこんなとこにいるし」
ブツブツと文句を言いながら下に気をつけながら先頭を進む。
「というかこれ帰れないよね!?異世界とか未来世界とかそんなんだよね!?」
「むしろ帰れると思ったの?」
晶の悲壮な叫びと卯月の宥めを聞きながら零治は今後のことを考えていた。
異世界にいる、というのは零治も知る幾多の物語にもよくある設定ではある。大概チートなスキルやチートなアイテムを神やらなんやらの上位種から貰うのが定番ではあるが・・・
(そんなものもらった記憶はないしな。そんなものに期待するより生きることを考えなきゃな)
零治は前向きだった。
「問題は言語、金、衣食住。まずはこの辺りから解決しないとなぁ、はぁ」
現状を考えると問題だらけではあるが
「せめて転生であって欲しかった!この世界の常識すらないんだけど!」
「あ、ちょっと晶が前向きになりつつある。」
いくつかの山を越えた頃、三人は疲弊し疲れ果てていた。
「れいじー、あの建物で少し休ませてもらいましょーよー」
卯月が指差す先には正方形の建物があり、その周りにはゴミがなかった。一見ただの金属の塊のようだがドアと窓がついており建物と認識することができた。
「あー、そうだな。ひとまず言葉が通じることを祈って行ってみるか」
「逝くことになるかもしれないけどね」
晶の言葉に不安が浮かびながらも三人は建物に近づいていく。
ドアの前に三人が立つと勢いよく開き、銃を構えた男女が飛び出してきた。
「うわっ!」
「きゃあ!」
が次の瞬間にはいつの間にかその二人の前に低い姿勢で飛び出した晶が前を向いていた二人の死角からその銃を背手刀打ちで下から弾き飛ばした。
(すげえ!もしかしてこれが晶のチート能力!?やっぱり貰ってたのか!)
と思わず零治も笑みが浮かべたが・・・
「なにしてんの晶!?ここは友好的にいかないといけないのになんで手を出したの!?」
「正当防衛正当防衛」
「晶が強いの知ってるけど!いつもの動きだってわかるけど!銃を持つ人相手にやるなぁぁぁ!」
晶の襟を掴んで揺する卯月の発言からして、零治の予想は外れたようだ。
「こ、子供じゃないか!?」
「あれ、追手じゃない?ご、ごめんなさい。早とちりしてしまったわ」
金髪の男女は三人の姿を確認すると慌てて謝り始めた。
零治たちも言葉が通じると知ると安堵の笑みを浮かべる。
晶に関してはまた泣き出した。
「よかったぁ!人だぁ!」
「今晶が手を出したんだからね!?」
「いやそれに関しては私達が先に銃を向けたのだし・・・それよりあなたたちこんなところにどうしているの?」
「そうだ、人がジャンクコロニーになんでいるんだ。」
二人曰くこのコロニーはリサイクル工場のような場所で『この宙域』の破損した艦船や艦載機といったゴミ扱いのものを集める集積場と化した内部。そして外壁部にリサイクルする機構を備えたコロニーという。
自動化されており、時折管理する『国』の役人が来るくらいで住んでいる人間はいないんだそうな。
二人もこの建物で生活している訳ではなく、ここのジャンクから質の良さそうなパーツを闇市のようなものに流して生計をしているとのことだった。
実際に生活しているのはその闇市に輸送している艦船という。
「あ、名乗ってなかったね。俺はハクトだ。こっちは姉のシルフ。」
「よろしくねー」
「あ、こちらこそ。俺は天野 零治です。んで」
「皐月 卯月でーす」
「神谷 晶です」
自己紹介する一同だったが名前を聞いた途端、ハクトとシルフは顔を見合わせ怪訝な顔をする
「ファミリーネームがあるってことは特級階級?けど」
「レイジ、ウツキ、アキラ。そんなファミリーネーム覚えがないな」
ふとそう言われて気づいた零治は名乗り直した。
「あ!じゃあレイジです。俺の名前」
「ウツキ!」
「アキラ!」
零治に続いて名乗り直した二人。
零治としては厄介事の匂いがしたからなのだが、ハクトとシルフは容易くそれを受け入れてくれた。
「じゃああなたたちの事情を聞きたいわね。中へどうぞ。」
シルフを先頭に建物の中へ進む一同であった。
はい、作者の歪です。ネタが浮かぶ限り書いていきますよぉ!