始まりの梟と白銀の梟
ソレは降り積もった淡雪のような情景だった
触れてしまうと極彩色に染まってしまう
無垢な結晶
もうずいぶん長い間
庭にある小さな窓からソレを見ていた
危うい結晶が何色に染まるのか
幾度風を待つのだろう
ソレの心に落とされた点は波打ち
やがて波紋は広がってざわめく風を連れてくる
蝕まれ腐蝕し汚泥を垂れ流し
毒を吐く口元を隠して
氷晶の瞳は何を映すのか
空にとけてゆくソレはまるで深海を泳ぐ海月のようだ
幻の様な風が横切り影は遠くなる
羽を広げた衝撃に膝をつく
片翼の身では追うことすら叶わない
諦めていた生を空の続きを思考を
衝動の歓喜に震える
窓の向こうの微かな残像
今も夢に見る
あの日この身におきた奇跡を
静寂が支配する庭には
緑青の欠片が鈍く輝くのみ