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シンデレラstory恋愛教科書  作者: 甘井 美環
9/10

第9話 共演・スカウト



スタジオでは既に撮影のセットが整っていた。




恭子は先生と何やら打ち合わせをしている。


スタッフの一人の声が響いた




「浜本さん入りまーす!」





「ちょっと!きょ、恭子?あゆが来るなんて聞いてないよ!」


驚きのあまり、眉が上がっている私を見ながら

「実は私も今先生に聞いたところなの、びっくりでしょ~」

笑いながら言う。



「びっくりでしょって、のんきすぎない?」

「もー…」

恭子はいつもこんな調子だ。



「今日の撮影って何?広告じゃないの?」


「うん、それが、an-nonの特集での撮影みたい」

平然と言う恭子に


「an-nonの特集!?しかも」

「私なんかが?あゆと一緒!?」

私は顔が火照るのと同時に心拍数が上がるのを感じた。




「なんでも、浜本さんのご指名らしいよ」

スタッフの一人が横から答えた。




彼女がこちらへ向かってきた。


「こんにちは」


(あ。あゆさん…)


「ビックリしたでしょ?」

あのテレビで見る笑顔のあゆだった。



「もう、びっくりどころじゃないです!」

私はとっさに答えた。



「実はね、先日あの先生に撮って頂いたときに」

「掘り出し物見つけたって言うから、そのショットを見せてもらったの」


「そしたら、びっくり、写ってるのが理沙ちゃん、あなたじゃない」

「さっそくあの本の効果ねって思ったのよ」


「うまく言ってよかったねっ」と微笑んだ。




「いいえ、違うんです」

機材の準備をする恭子を指さしながら


「あの本は彼女にあげたんです」




「・・・」




「あら、そうだったの?」

彼女の表情が心なしか曇ったのを感じた。


「じゃぁ、実力なのね…それはそれで凄いわね」

「彼女は本のお陰?」と続けた



「いいえ、彼女もまだ本は開けていないみたいなの」


「彼女は写真のコンテストに入賞して、いまの先生のアシスタントについたんです」

私は、これまでの経緯を手短に話した。




「へ~それで、普通の高校生が二人共こんな現場に来てるんだ」

「あなた達、スゴイ強運持っているのね」

あの天下の歌姫が真面目な顔で驚いている。




「強運だなんて…」私は答えに詰まった。




「でも、あゆさんにお会いしてからですよ、こんな事がトントン拍子に来たのは」

そう説明すると、


「少なからず本の恩恵はあるってことね」


「えっ?」



「手放した後あなたは大丈夫?」

意味深な問いかけだ。



「え?」




「変なこと起こらなかった?」


そう言われると、以前言われたことを思い出した。

(そうだ、他人に知られると不幸が襲ってくると…)



「不幸なことよりも、良いことばかり次から次へ…」



「そっか」

少し不安そうな彼女の言葉が気になった。






「理沙ちゃん!スタンバって!」



ステージのスタッフから声がかかった。




「またあとで話しましょ」

「頑張ってねッ」

さっきまでの暗い表情ではなく、

テレビで見る明るいあゆの笑顔に見送られた。






「あ、はいっ!」






撮影は順調に進んで2時間あまりで終了した。




夢の様な時間だった。




あゆとの撮影だなんて何年もやっているモデルさんでさえありえない。

ましてや、無名の私が有名女性誌の特集で…






「はいっ!お疲れ様!」




終了の声が響くと同時に

「スゴイ!理沙!」恭子が駆け寄ってきた。



「やだーなによ恭子」

あまりの勢いで来る恭子にそういった。



「あんた…」恭子がそう言いかけた時、







「お話中すみません」

名刺を差し出すスーツ姿の男性が二人の間に割って入ってきた。



「理沙さんですね?」

キョトンとしている私を真っ直ぐに見ながら男性が続けた


「以前広告のを拝見してから気になっていましたが」


「今回の撮影を聞きつけて、もしかしたらと思い追いかけてきました」




名刺には犬田プロダクションと書いてある



「もう、どちらかにお決まりになっていますか?」



「理沙すげー」恭子が横で驚きの声をあげた




「え、いいえ」



「ご検討ください」

そういうとスーツ姿の男性はその場を立ち去っていった







「どれどれ?」

まだ何が起こったのか解らないまま、

呆然と立ち尽くす私の手から恭子名刺を取り上げた




「ねえねえ、理沙! スゴイよこの事務所ってあの大手だよ!」

「スカウトじゃん!」

恭子が大騒ぎするので、先生が近寄ってきた



「どうした?恭子?」

先生が覗き込む



「あのね、先生、これ」恭子がさっきの名刺を差し出した。



「あぁ、影山くんか」

ニコニコしながら言う




「先生ご存知なんですか?」




「ご存知も何も、知る人ぞ知る

アイドルメーカーと言われる犬田プロのスカウトマン件マネージャーだよ」

先生は自慢気だ


「理沙ちゃん、捕まっちゃったね」

先生の言葉に



「捕まった?」

意味がよくわからなかった



「そう、彼に捕まると君はもう普通の高校生ではいられなくなるよ」



理沙は聞き返した。

「どういうことですか?」




「忙しくなって自分の時間がなくなるってこと」

「つまり、アイドル街道まっしぐらってこと」


「自分で決める時間をもらったんだろ?」


「ゆっくり考えるといい」




先生はまんざらではなさそうだ

「私の目もまだまだいけるって事で、私は嬉しいけどね」





「恭子…どうしよう…」

どんどんウマい話になっていく不安を顔に出さずにはいられなかった



「大丈夫!一緒に考えてあげるからっ!」

恭子はこんな時一番頼りになる




「先生、片付け終わってるのでお先に失礼してもいいですか?」

恭子がこちらを向いて片目をつぶってみせた。




「あぁ、いいよ」

先生の声がスタジオに響き渡った


「それより里沙ちゃんを頼むぞ!」




「任してっ!」

恭子の声のほうが数倍通った


「おつかれさまでーす」







これが私の不幸の始まりだなんて、

この時は誰も気づかなかった。

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