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シンデレラstory恋愛教科書  作者: 甘井 美環
10/10

第10話 教科書の存在


あれからというものしばらく仕事が来ない。


来ないというか、

元の自分に戻ってしまったようだ。


そもそも、あんなことがあったことがおかしな訳で、

これが現実なんだ、と自分に言い聞かせていた。





「理沙!!」

リビングに居るお母さんの声だ。



「は~~ぃ!」

私はすぐさま階段をかけ降りた。





「おか~さん!そんな大きな声出さなくっても聞こえるよ」



「あら、そう?」

「どうせまた寝てるのかと思ったから」



「そんないつも寝てないって…」



そう、私はあの撮影の後

夢から覚めたかのような現実的でかつ平凡な日常に

寝ること以外思いつかなかった。




恭子とは最近会っていない。




彼女は撮影のバイトで忙しいらしい。





(あ~~ぁ、こんな事ならあの本、恭子に渡すんじゃなかったかなぁ)




時折そんなことを考えるが、

恭子自身はあの本には手を付けていない様子だった。


彼女の頑張りは、彼女の実力のようで

私はその彼女から恩恵をう受けていただけだったことに気づいた。





チロ~~ン



恭子からのメールの音だ。




『今日、これからあの店で会えない?』


この一行だけだった。



さほど断る理由もない私は、

『いいよ、7時でいい?』そう返信した。



『OK!』

恭子からは直ぐに返事が帰ってきた。




恭子と会うのはひと月ぶりだ。



でも、なんだろう?





誰もいない店内で2杯めのコーヒーを注文した。



時計を見ると7時半を回っている。

(おそいうなぁ)




そう思った時、

恭子が店に駆け込んで来た!



「ゴメン、ゴメン!」



「恭子、おっそい!」



そう言う私の手を引っ張って見せのドアの方へ向かった


「なに、なに、、、」

「お会計しなくっちゃ、、」


「痛いよ、恭子、、」




外へ出ると店の前には、真っ黒な高級車がドアを開けたまま停まっていた。





(こんどはなんだ?)





恭子に引きずられるように、その黒塗りの高級車に乗せられてしまった。



車の中は革製品の匂いのするシートと真っ黒なガラス。

前の席には、いかにも怪しそうなサングラスの男が載っている。


その男の合図で車は静かに走りだした。


エンジン音は聞こえない。




戸惑う私にその男が話しかけてきた。



「理沙さん、ですね?」


「は、はい」



「学生さんですね?」



「はい、高校生ですが…」





「単刀直入に言います」

「あなたがお持ちのあの本を渡して頂けませんか?」



(この男、あの本のこと知ってる)

(恭子が言ったんだ)



ふと隣を見ると、慌てて首を横に振る恭子姿があった。




しかも、あの本は恭子が持っている。




小声で恭子に

「あの本って、恭子が持ってるんだよね?」



恭子がまた首を横に振った。


(えっ?)


「誰かにあげちゃったの?」


さっきより少し大きな声になった。


「あんたのベッドの下に隠してあるの!」


(えっ?)

「そうなの?」




「何をコソコソ話しているんですか?」

サングラスの男が割って入ってきた。




「理沙さん、あなたが持っていることは知っています」


「渡せといってもそれは無理ですので、協力して下さい」


男は先程以上に低い声になった。




車が静かに止まると、ドアがゆっくりと開いた。




そこは、自分の家の前だった。





「さあ、急いで取ってきて下さい」

「時間がありません…」




男の言い方に切迫感があったので、急いで玄関に向かった。





「ただいまー」



「あら、早かったのね」

リビングから母の声がする



一気に二階に駆け上がると、ベッドのマットを上げた。

(あった)



それを鷲掴みにして、階段をかけおり、

「おかさん、また出かけるね」



「遅くなるの?」母



「うん、また連絡入れるね」

そういう私を母はいつも信じてくれているから、こんな時はとても助かる。






玄関を出ると、また黒塗りの高級車のドアが開いた。






そこに飛び乗るとまた車は音もなく走りだした。

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