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シンデレラstory恋愛教科書  作者: 甘井 美環
1/10

第1話 本物

あなたの教科書

それはあなたにしか読めない、

あなたのための道標。


表紙を開くと、

何故か一枚しかないページ。


人生に迷ったときにだけ記されています。

使いすぎに注意と書いててある。


幸せになったら譲って下さい…




とにかくさえない私。

アイツとはもう12年ものつき合いだ。

特別、意識したこともないし、親しい訳でもない。


ただ小学生の時からクラスがずっと一緒なだけだと思っていた。



高2の私達は部活の帰りに必ず寄る店があった。

今日も恭子と黄色のボックス席に陣取っている。


「里沙?今日は何食べる?」


動いたあとは、ことさらお腹が空いている。


「ごめん、今日はやめとく」

お腹がいっぱいなのか、胸がいっぱいなのか、

いつもとは違う感覚があった。


「どうした?具合でも悪い?」

心配して恭子が聞いてくれる。


「ゴメン、そうじゃないけど…」

どう伝えたらいいのか分からなかった。


「まさか、あんた恋わずらい?」


「なにそれ?」


「好きな人でもできたのかって聞いたの?」


黙って頷いた。


「なーんだ、誰よー」


「わからない。でも、たぶん、そう…かも…」

自分では分かっていたかもしれない。

でも、認めるのが怖かった。


「わかったーまさかアイツ?」


「ちょっと待ってて、トイレに行ってくるね」

「あとで、じっくり聞かせてもらうわよー」


恭子が席を立つと、

向かい側に女性が座っていた。


目があったので軽く会釈をした


ハァ?ため息が出た。

「綺麗な人…」

「あんな風になりたいなぁ」



「おまたせー」

恭子がトイレから戻ってきた。


「里沙が食べないんじゃぁ、そろそろ帰ろっか」


「うん」

見ると、向かいの席の女性はいつの間にかいなくなっていた


席を立って恭子のあとからレジへ向かう時、

さっき女性のいたテーブルに目をやると一冊の古びた本が置きざりにされていた。


大切なものかもしれないと、

その本を鷲掴みにして出口へ走った。


扉の外にはまだあの人の後ろ姿が見えた。

間に合うかも!


「里沙!どうしたの!待ってよ」

恭子が叫んでいたが、それどころではないような気がしていた。



次の横断歩道で信号が赤になり、ようやく彼女に追いつけた。


ハァハア


「あ、あの?」

「これ…忘れ物です」


その人は振り返り様に

「やっぱりついて来ちゃうのよね」と


「えっ?私?、そんなつもりじゃありません」


「あら、ごめんなさい」

「あなたの事じゃないのよ」


「あの、これ」

私は構わずその本を差し出した。


「あ、その本、あなたにあげるわ」

そう言われても、

こんなボロボロな本など、誰も欲しくはないだろう。


彼女は続けた

「私にはもう必要ないの」

「欲しいものは全て手に入れたし…」


彼女の着ている服や指輪、バックも

そういえば、雑誌で見るようなブランド品ばかりだ。


「そうよね、いきなり言われても判らないわよね」

「いいわ、これも縁よね、教えてあげる」

そう言うと、私の腕を引っ張った。



「ここに座って」

目の前のベンチに座らされた。


「あなたはキレイになりたいわよね?」

(なんだ?新手の押し売りかなぁ)


「もちろんです!」

(返事をしてしまったー)


「この本は夢を叶えてくれるのよ」

(やっぱそうだ)


「ハァー?」


何を言うかと思えば…

「いきなり信じろと言う方が無理よね…」

「じゃぁ、試してみようか!」


そう言って彼女は本の表紙をめくって見せた。


何も書いていない…


「あら、そうよね」

(なにがそうなんだ?)


「あなた、この本を持ってみて」

今度は私の手にその本を握らせた。


さっきまでは白紙だったページに何か書いてある!


"本を頂け。さすれば幸せになる"

そう書いてある。


「何の手品ですか?」


サングラスを外しながら、

「いま何て書いてあるのかは私には読めないけど、

この本に書いてある通りにすると思いが叶うの。

何故かは私もよく分からないけど、

とにかく信じてみること」


そう言う彼女の顔を見ると驚いた。


"あゆ"だ!あの、浜本あゆ本人だった!

私の驚きをよそに

「でも頼りすぎないでね」

「私が手放すのは、幸せすぎて辛くなったから…」


「あなたも望みが叶ったらすぐに手放しなさい」

「必ずこの人と思える人にあげるのよ」

「いつまでも持っていてはダメ」


「いい、必ず幸せになったら手渡しで譲るのよ」


「でないとまた自分に戻ってきてしまうから」

そう言いながら立ち上がった彼女は


信号が青になると、

交差点の人混みに消えていった。



あゆ…

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