2話 『不可抗力です』
side:乙見来羽
4月
中学生になって一週間が過ぎた。
入学式に私達の誕生日と、イベントをクリアしていく日々がすぎると本格的な中学生生活が始まった。
同じクラスになった私達。なのに学校では特に会話をしない。ハルが学校でイチャつくのを禁止にしたから。登下校も別々。
寂しい。
寂しすぎて涙がでちゃう、だって女の子だもん。ウゥゥッ!
今や目下の楽しみの『ハグの時間』も週1となれば全然慰めにもならないし物足りない。なので今日も帰宅してすぐに癒しを求めてハルの部屋に突撃。すると電話中のハルとご対面。その場でおとなしく待っていると電話を終え受話器を置いたハルが私に一言、
「今度友達の家に遊びに行くことになったよ!」
それはもう素敵な微笑みを見せてくれました。ついでに後光も一緒に見えました。大天使ハル降臨。その笑顔ご馳走さまです!
……けれども私の心は完全に充たされない。クラスの男子と楽しそうに会話するハルを、あんなに嬉しそうに笑うハルを見てると悲しくなってしまう。
わかっている。これはただの独占欲。ハルを独り占めしたい私のワガママ。
だから
だから私は耐えねばならない。
友達が出来てウキウキしているハルの笑顔を守るために。
ハルの幸せを守るために。
だけど私は忘れていた。
私達は普通の人間ではないことを……
「本当、男ってガキよね!」
お昼休みの教室で、一部の男子が集まってとあるアニメの話で盛り上がっている会話を聞いた私の隣の女子がそう呟いた。その男子達の中にはハルも混ざっていた。
男子達の会話の内容はあるアニメの魔法の戦闘シーンがカッコいいとかなんとか。
中二病のような魔法詠唱を唱えながらポーズを決める恥知らずな男子A。
俺も俺もと同じ事をする低能な男子B。
「お前もやってみろよ」と言われて、照れながら「こ、こうかな?」とたどたどしい動きで真似ながら小さな声で照れながらセリフを呟く超可愛いハル。初々しくて癒やされますわ!
すると、なんということでしょう。
かかげたハルの右手にすごい量の魔力が凝縮されていくではありませんか。
……
……え、
……魔力?
おいおい……ちょっと待って!
その魔力どうするの!?
そんな膨大に集めた魔力が放出されたらこの教室吹っ飛ぶよ!最悪クラスメイトの死人の山が……
そして頬を染めがら最後の決めポーズをとろうとするハル!
(ヤバい!このままでは教室に地獄絵図が完成してしまう!)
私は両手に中和魔法を錬成し、
急いで駆け寄り咄嗟にハルの右腕に抱きついた!
中和魔法が発動しハルの魔力が霧散消滅する。
間に合った。これで悲鳴混じりの阿鼻叫喚は免れた・・・
「ふうっ、危なかったねハル」
「……来羽?」
眉間をぴくぴくさせる顔面蒼白なハル。そして・・・
「キャアーーーーーー大胆ーーーーーー!!!」
「何でいきなり腕を組んでるのお前ら!?」
「リア充か!?リア充なの!?氏んでしまえ!!!」
「知らないの?あの二人、小学校のころから有名なバカップル……」
「ちくしょー!!くやしくなんかないからな!!!」
「え!乙見さんって竜宮と……そんなぁ……」
「竜宮の裏切り者!!!極刑ダ!!!」
「あれ?目から鼻血が……溢れてるだと?」
クラス中に黄色い阿鼻叫喚が吹き荒れた。