5話 『卒業』
side:乙見来羽
ー3月下旬
八分咲の桜がいい感じで小学校の敷地を華やかに飾る。
今日この日をもって私達は小学校を卒業する。
卒業式が行われている体育館ではフィナーレを飾る校歌斉唱の真っ最中。
母校を去る哀しみの涙を流す大半の女生徒達。卒業生との思い出を振り返り感動の涙を流す教師陣。子供の新たな門出にむせび泣く保護者達。
まぁそんな事は置いといて
意外と楽しかったな小学校生活。私にとっての小学校の想い出は全てがハルで支配しているけど。
ハルと同じ班になって古都の街を一緒にを歩いた修学旅行は本当にいい想い出だった。(ハルをハブったクラスの男子達には鉄拳制裁+精神的苦痛を与えた)
運動会ではハルと組んで出場した二人三脚で見事1着になって嬉しかった。(競争率の高かったハルとのペアを勝ち取るため女子達との仁義なき戦いに見事勝利した)
学芸会の劇ではハルと私のダブル主演でみんなから大好評だった。(裏で暗躍した結果クラスメイト達と担任を黙らせダブル主演の座を勝ち取った)
まさに私とハルのための小学生生活だったな。
ありがとう小学校。感謝してるよ小学校。忘れないよ小学校。愛しているよハル!
この想い出を胸に刻み私は中学生になります。……中学生、フッ、私とハルのラブストーリーの第二幕がもうすぐ上がるぜ。エヘヘへへ。
さようなら!え~と、なんとか小学校!
side:竜宮春樹
気苦労の多かった小学校生活もやっと終わる。
特に6年生の一年間は辛かった。
クラスの男子からハブられた修学旅行の班決めで担任から「誰か竜宮君を引き取ってくれる班はいませんか!?」と言われた時は泣きそうになった。しかもその後に来羽の班に誘われたのだけど、女子だらけの班に男子がひとりは可哀想だからもう一度班決めをやり直そうと言った担任に来羽が一言、
「いえ、おかまいなく。ハルが私達の班に入るのは最初から決めてたので」
ニッコリ微笑みながら担任を、クラスのみんなを黙らせた。
……針のむしろだらけの修学旅行だった。
運動会では知らないうちに二人三脚の競技に選ばれた。パートナーはやっぱり来羽。必要以上に僕にベタベタして真面目に練習はしないし、周りの女子はそんな僕らを睨んだり泣きながらハンカチを噛んでいた。
……針のむしろしかない運動会だった。
来羽が率先して仕切った学芸会ではなぜかクラスのみんなは素直に従っていた。ちなみに劇は『ロミオとジュリエット』。脚本、監督、主演の来羽が独断で僕をロミオ役に。クラスメイトの視線が冷やかに僕達を見つめていた。
……終始針のむしろが続いた辛い劇だった。
来羽はなぜ平気なんだろう?辛くはないんだろうか?僕みたいにあからさまにハブられてはいないけど、それでも女子の間でもかなり浮いているだろう。
このまま中学でも僕にかまい続ける来羽、そしてみんなからハブられてしまう……そんなのは見たくない。僕みたいになってほしくない。
来羽が僕にかまう理由……やっぱり2年前の事故と、頼りない僕のせいかも知れない。
変わらなくては。
来羽に心配をかけないしっかりとした僕に、友達ができるぐらい頼り甲斐のある僕に。
僕達は変わらなくては!