2話 『神様からのご褒美』
side:乙見来羽
前世の記憶をおもいだした日、当時の私は10歳だった。
乙見来羽の記憶……というのも変だけど前世をおもいだす前の私にとって竜宮春樹君は幼なじみで初恋の相手だった。
生まれた病院、誕生日も一緒。
家はお隣同士でお互いの親も仲が良い。
幼稚園は手を繋いで登園する仲。確かその頃には定番の『大きくなったら結婚しようね』という幼なじみのお約束ルートも通過している。
え、ナニコレ?
なにこの甘酸っぱい想い出は!
あのハルシオンと婚約だなんて!
思い出しただけで顔がニヤけちゃう。
当時(前世)の私が知っても絶対に信じないだろう。
そう、私、乙見来羽であるクライハートと、竜宮春樹君であるハルシオンは正直険悪な関係だったから。
美人で気立てがよく魔法の天才で実力者でみんなからの人気者だった私と、目つきが悪くて付き合いも悪い、無神経で無愛想で無鉄砲なハルシオンとはお互いを嫌っていた。よく口喧嘩もした。実際殴りあいもした(主に私が一方的に)。
なのにいつからだったろう。
ハルシオンを気にするようになったのは。
ハルシオンを目で追いかけるようになったのは。
ハルシオンを特別だと想うようになったのは。
言葉使いは悪いが実は心根が優しく情が深いと気づいた時か。
避難民の子供達に見せた優しく暖かい笑顔に魅せられた時か。
先陣をきって竜族に挑む勇敢な姿に見惚れた時か。
あ、ヤバイ。思い出しただけで顔が熱くなる。
エヘヘへへ。
まぁ結局この想いを伝えることは出来なかったのだけどね。
二人とも戦死しちゃったし。
……あの後アフランシア大陸は平和を取り戻したのだろうか?
私達の命を犠牲にしてまで取り戻したかった平和は訪れたのだろうか?
気になる。
気になるけど今はそれより!
彼、ハルシオン……竜宮春樹君の事が気になる!
顔はかなりハルシオンの面影を残しているけど眼の輝きが全然違う。あの時、心配そうに私の顔を見ては泣きじゃくる竜宮春樹君は天使のようだった。……ジト目のハルシオンとは可愛いさが段違いだ。
でも不器用で一生懸命な性格は二人に共通……引き継がれているみたい。
うん、やっぱり彼は間違いなくハルシオンの生まれ変わりだ!
そしてここ!ここが大事!
なぜこの日本で私達が転生したのか!?
私達以外にも転生した仲間はいるのか!?
奇跡のような邂逅は偶然なのか必然なのか!?
何者かの意志がが働いたのか!?
それにはどんな意味があるのか!?
いろいろな疑問が浮かび上がるが・・・
でもそんなの関係無い!
だって私とハルシオン……竜宮春樹君は出逢えたのだから!
奇跡のような……いや、奇跡の再会をはたしたのだから!
もうこれは運命だ!
神様からのご褒美に違いない!
前世で頑張った私達へのご褒美!ならもう受け取るしかないじゃないか!
思えば前世の私はスッゴい美少女でかなりモテたけど、恋愛沙汰には疎くて全く縁がなかったな。まぁアフランシア大陸が、時代がそれどころではなかったからね。
だけどここは平和な日本!
前世では出来なかった恋愛を!デートを!お付き合いを!
そして!ハルシオン……竜宮春樹君と一緒に……けっ、結婚を!
エヘッ、エヘヘへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ(ただいまいろいろ々妄想中)へへへへへへへへへへへへへへへ~~~~~
よし!このご褒美受け取ったぜ神様!
私、クライハートもとい乙見来羽は!
このチャンスを逃すことなく!最愛の竜宮春樹君と!正々堂々と!イチャイチャバカップルになって!結婚することを!
誓いまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーす!!!
もう二度と後悔をしないために。
今度こそ二人が幸せになるために。
こうして私の猛烈アピール作戦が始まった。