プロローグ 後編 『いきなり最終決戦、そして・・・』
アフランシア大陸では人類滅亡の危機に陥っていた。
人類と竜族との戦争である。
数では勝る人類だが竜族の圧倒的破壊能力の前では敗北の道しかなかった。
数多の人や自然、国々と文化が竜族によって蹂躙され滅ぼされた。
だが10年後、
人類はついに反撃の狼煙をあげた。
秀でた魔法の才能を更に磨き上げ修練を成した者達、
魔法学の実験により凄まじい力を得た者達、
唯一竜族に対抗できる彼ら『魔法戦士』による少数精鋭の『竜撃隊』の結成である。
人類の力と叡智を結集した竜撃隊の活躍は人々の心に絶望から希望を生み出し、悲哀を歓喜に塗り替え、憎悪の対象である竜族には死と殲滅を与えた。
人類は徐々に竜族の進行から逃れはじめていた。
竜撃隊結成から7年後、彼等は数多の竜族を滅ぼし、ついに竜族の王『パレスドラゴン』との最終決戦に挑んだ。
side:クライハート
悔いを残さない人生を。
人生の先輩達からよく言われた言葉。
死ぬ時に後悔を残さない生き方なんて無理に決まってるよね。
だって私の人生は後悔の連続だったから。
もしあの時もっと速く仲間の元に駆けつけてたら……
私がもっと強かったなら……
もっと上手く仲間たちとやれていたら……
もっと彼に、アイツに素直になれてたなら……
ほらね。
短い時間のなかでこれだけの後悔が瞬時に浮かんでしまう。
後悔だらけの人生だったな。
そんな想いがふと浮かんでしまった。
自分の命が今まさに風前の灯だという瞬間に。
竜族の王『パレスドラゴン』が放った超高熱のブレスは防御魔法のバリアを突き破り、そして辺り一帯を溶岩の海へと変えていった。
「痛っ!みんな……そんな……生き残ったのって私達だけ……なの……」
かつてないブレス攻撃をうけた私の足下にはまだ荒れた大地が残っていた。防御バリアで覆っていた範囲だけだけど・・・
「クッ、クライハート!無事か!?」
私の隣には満身創痍の、ハルシオンだけがいた。
「あんまり無事だとは言えないね、ハルシオンも……そのケガ……」
彼の左腕や両足は黒く焼け爛れていたが、どうにか立ち上がっていた。
「大丈夫だ。もう一度くらいなら『竜装化』が出来るが……」
竜装化。
魔法学の実験や研究により敵対する竜族の力を得て竜化する変身能力は竜族と同等以上の戦闘能力まで手に入れる。代償として大量の魔力を消費してしまうが。
「竜装化してどうするの!?アイツに、パレスドラゴンに近づくことさえ難しいのに!」
「だがヤツの翼は俺達の・・・みんなの攻撃で失った。ダメージもかなりあるはずだ。ヤツが飛んで逃走できない今ここで終わらせなければ……」
周囲を見渡す。数時間前までは竜撃隊全13人でパレスドラゴンに戦いを挑んだ。
果敢に接近し踏み殺された者や噛み殺された者もいた。皆が命懸けでパレスドラゴンに挑んだ。
皆でアイツの翼に大ダメージ与え、本体にもかなりの致命傷を与えたかと思ってた。
だけどアイツは、あのパレスドラゴンはたった一撃の広範囲ブレスで私達以外のみんなを……焼き殺した。
違う、彼等だけではない!
このパレスドラゴンにまで辿り着けなかった勇敢で誇り高い仲間達もたくさんいた。
みんなが死んだのだ。
人類を守るため、家族を守るため、愛する人を守るため、そして・・・
大切な人の仇をとるために。
たくさんの人が死んだのだ。
「……そうだね。みんなの死が無駄になっちゃうね」
「俺が突進してヤツを倒す!クライハートは援護を頼む」
「はぁ!?なに馬鹿なこと言ってんの!今のハルシオンじゃアイツの迎撃で殺られちゃうだけだよ!」
「しかし……」
「だから・・・だから私も行くよ。私がハルシオンに防御魔法バリアを貼るから少しは耐えられると思うよ」
「駄目だ!お前には生きて……」
「ここで終わらすんだよね」
「……」
「死んでいった仲間のために、人類のために・・・ねっ!」
「……わかった、一緒に行こう」
残り少ない魔力を使って竜装化するハルシオン。体から歪な音が鳴り響きそして人間から魔装竜に変身する。
私は魔装竜ハルシオンの首に飛び乗る。
「行こう、ハルシオン」
雄叫びをあげ、翼を羽ばたかせ、魔装竜ハルシオンは空を翔け竜族の王パレスドラゴンへと向かう。
パレスドラゴンが私達に幾つもの高威力の光線魔法を放った。高速で飛びながら光線魔法をかいくぐるが数が多くて全てを避けきれない。ハルシオンは幾つか被弾しそうになるが私の防御魔法バリアで防ぐ、が、ダメージを完全には無効化できない。
傷を負い、ダメージを受けてもスピードを緩めないハルシオンは更に速度を上げ、パレスドラゴンに突撃した。
パレスドラゴンの強固な鱗と魔法バリアに覆われたハルシオンの衝突は、互いの皮膚が裂け血飛沫が舞い上がりそして……
パレスドラゴンを中心に光が広がり……
(これで人類は救われるね。でもやっぱり……)
光の波は私達を覆い尽くして……
(やっぱり最期にハルシオンに、告白しとけばよかったかな)
ヤッパリ後悔しかない人生だった。
私達は爆発して消えた。
そして
目が覚めると
体が小さくなっていた!?
え、変な薬は飲まされていないよ!?