俺のしゃっくり異世界無双
実はハーレムも無双もここには言葉しか出てきてない
ので、それ目的の人は読まない方が得策ではある
「ひっく!」
今日何度目かのしゃっくりが出た。
この一日定期的にしゃっくり周期が来ていた。今は下校中だからいいけど、授業中にしゃっくりが来た時は本当に恥ずかしかった。
授業後に友人から、おまえしゃっくりめっちゃ聞こえてたぞ、と言われて羞恥心が天元突破したことは記憶に新しい。
「っんく」
そしてしゃっくりが出た。
しゃっくりは九十九回だか百回だか行くと死ぬらしい。
本当かは知らない。俺は信じていないが。
「っぐぇ」
またしゃっくりが出た。
しゃっくりというのは横隔膜__肺とかを守ってくれているやつがなんかいろいろなったらなるらしい。
(どっかのテレビで見たがほとんど忘れてしまった。)
ということは、今日の俺の横隔膜は大暴れでもしているのだろうか。
定期的にくるしゃっくりに胸を痛めながらも、俺は大きく息を吸い込んで呼吸をやめた。
うなれ、俺の横隔膜!
「んくっ」
小学生時代、しゃっくりが止まらないクラスメイトがいた。それを見かねた担任が、息をとめたら治ると言っていたのを俺は聞いていた。そして、それを信じて現在高校一年生まで実践してきているのだが、効果が現れたと実感したことはない。
やり方が違うのかもしれない。なぜならあの時、クラスメイトは息をとめるとちゃんとしゃっくりは止まったのだから。
しゃっくりを止めるのにはやはり驚かせるのが一番だと思うのだ。俺は。
今日の昼にしゃっくりが止まらないと友人に言うと、いきなり「わっ」と声を上げられた。そうするといつの間にかしゃっくりは止まっていたのだ。
ひとりではできない芸当だが。
「ひっく」
これで何回目だろうか。もう死ぬんじゃねえだろうか。
風邪や花粉症よりは楽なのは確かだが、いちいちしゃっくりのために肩を揺らせてやるのはすごく癪に障る。というか疲れる。
「はぁ……ひっく」
ため息とともにしゃっくりした途端目の前が暗転した。
貧血でめまいでも起こしたかと思ったが、普通に歩いてるだけでこうなるとか俺そんなに貧弱だっただろうか。
くそっ。これもあれもそれやこれやも全部しゃっくりのせいだ。そうしておこう。
……そして、意識も途絶えた。
……
……
……
なんてこったパンナコッタ!
……??
あれ、俺、????
俺は混乱状態に陥っていた。
意識が浮上して元気よく心の中で叫んだものの、目の前に広がるのは異様な景色だった。
こういう時、「真っ白な天井が見えた。病院だろうか」とか言えたら良かったんだけど、病院だろうかなんぞ言えないものが視界に広がっているから、そんなこと思えなかった。
『オキタ? オキタ? ナナツェリ、オキタ?』
おきた?
ななつぇ……なんだって?
コロコロと高めの声を上げながら楽しそうに話すのは、透明な羽を持った妖精さんだった。
全体的に紫色な小さな生き物。人型の。あと耳が少しとんがっている。
目の前がファンタジーだった。
しゃっくりで意識がトぶと妖精さんが見えるんだな。
所謂イマジナリーフレンドの親戚か何かだろうか。
『オキタ! オキタ! ナナツェリ、オキタ!』
隣で“飛んでいる”、全体的に黄色な妖精さんが手を叩いて喜んだ。
そう。妖精さんは俺の視界に二人いる。そして、妖精さんは俺の目の前を飛んでいるのだ。
寝転んだ体勢の俺を覗き込んでいるといった感じだろうか。
なんとなくその妖精さんに手を伸ばしてみる。
……? ……腕が短い。なんだこの短さは。
俺はもっと長くてかっこいい腕(自称)をしていた気がするんだが。
『ナナツェリ、ハジメマシテ! ハンドレット ヘ ヨウコソ!』
黄色な妖精さんが、くるくると飛びながらそう言った。
「は?」
思わず漏れた言葉は、想像より軽い声と共に発せられた。
なんで俺はこんなに高い声になっているんだ。
黄色な妖精さんの言った言葉についても考えたいのに、やることが一気に来すぎて対応と、俺の頭が追いつかない。
ちょっとまて、とりあえず________
________とりあえず、妖精さん達から聞き出した情報によると。
俺は異世界転生したらしい。
え、俺、死んだの?
……死んだらしい。しゃっくりを100回したから。
しゃっくり!!!
しゃっくりごときに負けるなんて、以前の俺の体は弱すぎる!
こうなったら、しゃっくりに負けないよう、鍛えて鍛えて鍛えてやる。
そうやって燃えた先にあったのは、
俺は絶対しゃっくりに勝つことが出来ないという絶望と、
かっこよくも可愛い女の子たちと男の娘、
そしてしゃっくりをすることによって最強になれる、しゃっくり無双だった。
…………俺たちのしゃっくりは留まるところを知らない…………!